こんにちは!サーバーワークスで生成AIの活用推進を担当している針生と申します。
今日は、「メタプロンプト」を活用したプロンプトエンジニアリングについて書きたいと思います。AIとの対話をもっと効果的にしたいと思っている方に向けて、実践的なテクニックをご紹介します。
メタプロンプトって何?
メタプロンプトとは、「プロンプトを作るためのプロンプト」のことです。つまり、AIに「こういうプロンプトを作って」とお願いするための指示文のことを指します。料理で例えるなら、レシピを作ってもらうためのリクエストのようなものですね。
なぜメタプロンプトを使うべきか?
AIツールを使っていて、こんな経験はありませんか?
- 思った通りの回答が得られない
- 毎回同じような指示を繰り返すのが面倒
- もっと効率的にAIを活用したい
これらの悩みを解決してくれるのが、メタプロンプトです。 一度良いプロンプトのテンプレートを作ってしまえば、様々な場面で応用できるようになります。
実際にメタプロンプトを使ってみよう!
それでは、具体的な活用方法を見ていきましょう。 まずは、よくあるビジネスシーンでの活用例をご紹介します。
例:議事録作成用プロンプトを生成する
以下の要件を満たす議事録作成用のプロンプトを作成してください。 - 会議の要点を箇条書きでまとめる - 決定事項と次のアクションを明確に記載する - 参加者の発言を要約する - 読みやすい構成にする
このメタプロンプトをChatGPTなどに投げると、議事録作成に特化した詳細なプロンプトが生成されます。 一度作成したプロンプトは、今後の会議でずっと使い回せるので、とても効率的です。
メタプロンプトを使いこなすコツ
メタプロンプトをより効果的に使うためのコツをお伝えします。
- 具体的な要件を明確にする: 曖昧な指示では、曖昧なプロンプトしか生成されません。「良い感じのプロンプトを作って」ではなく、要件を箇条書きにして、具体的に指定することが大切です。
- 反復的に改善する: 一度で完璧なプロンプトができることは稀です。生成されたプロンプトを実際に使ってみて、改善点があればメタプロンプトを調整していきましょう。
よくある落とし穴と対策
メタプロンプトを使い始めたばかりの方が陥りやすい落とし穴もあります。
複雑にしすぎる: あれもこれもと要件を詰め込みすぎると、かえって使いづらいプロンプトになってしまいます。まずはシンプルに始めて、必要に応じて要素を追加していくのがおすすめです。
汎用性を意識しすぎる: すべての場面で使える万能プロンプトを作ろうとすると、どの場面でも中途半端な結果になりがちです。用途を絞って、その分野に特化したプロンプトを作る方が効果的です。
実践的な活用シーン
ここでは、実際に私が行っているメタプロンプトの活用方法をご紹介します。
Amazon Q Developerでのコードレビュー用プロンプトの作成
Amazon Q Developerでコードレビューをするために、以下のステップを実行します。
※Amazon Q Developerには /review というコマンドがデフォルトで利用できますが、今回は自分が作成したオリジナルのレビューコマンドを登録します。
https://docs.aws.amazon.com/amazonq/latest/qdeveloper-ug/code-reviews.html
1. Geminiでメタプロンプトを実行
サーバーワークスでは、Google Workspaceを導入しており、全社員がGeminiを利用できる環境にあります。まずは、Gemini 2.5 Proに以下のメタプロンプトを投げます。
AIコーディングエディタでコードレビューを行うためのプロンプトを作成してください。 ## 以下の観点を必ず含めてください - パフォーマンスの改善点 - セキュリティ上の懸念事項 - コードの可読性 - ベストプラクティスとの差異 - エラーハンドリングの適切性

2. 生成されたプロンプトを確認
Geminiからは以下のようなプロンプトが生成されました。
# 命令 あなたは経験豊富なシニアソフトウェアエンジニアです。私の書いたコードをレビューしてください。 以下のレビュー観点に基づき、問題点と、それを解決するための具体的な改善案を、コード例を交えながら詳細に解説してください。 # レビュー対象コード [ここにレビューしてほしいコードを貼り付けてください] # レビュー観点 ## 1. パフォーマンスの改善点 - アルゴリズムの計算量は適切か?より効率的なアプローチはないか? - 不必要なループ、冗長な処理、非効率なデータ構造が使われていないか? - メモリ使用量やCPU負荷の観点で、ボトルネックになりうる箇所はないか? - I/O処理(データベースアクセス、APIリクエストなど)は効率的に行われているか? ## 2. セキュリティ上の懸念事項 - SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング(XSS)、その他の一般的な脆弱性が存在しないか? - ユーザーからの入力値は、適切に検証およびサニタイズされているか? - APIキーやパスワードなどの機密情報が、コード中にハードコーディングされていないか? - アクセス制御は適切に実装されているか? ## 3. コードの可読性 - 変数名や関数名は、その役割や意図が明確にわかるように命名されているか? - コメントは必要十分か?複雑なロジックには適切な説明があるか? - コードのインデントやスタイルは一貫しているか? - 関数やクラスが長すぎないか?責務が単一になるように適切に分割されているか? - マジックナンバー(説明のない数値や文字列)は使われていないか?定数として定義すべきではないか? ## 4. ベストプラクティスとの差異 - 使用しているプログラミング言語やフレームワークの標準的なコーディング規約に従っているか? - 非推奨(deprecated)の機能やライブラリを使用していないか? - DRY (Don't Repeat Yourself) の原則は守られているか?コードの重複はないか? - 適用すべきデザインパターンはあるか? ## 5. エラーハンドリングの適切性 - 起こりうるエラーや例外は、網羅的に捕捉されているか? - `try-catch` などのエラー処理ブロックの範囲は適切か? - エラー発生時に、原因調査に役立つ情報(エラー内容、発生箇所など)がログに出力されるか? - ファイルハンドルやDBコネクションなどのリソースは、処理の成功・失敗に関わらず確実に解放されるか? - ユーザーに返すエラーメッセージは、セキュリティリスクがなく、分かりやすいか? # 出力形式 上記の各観点ごとにセクションを分け、問題点を指摘し、具体的な修正案をコード例と共に提示してください。
3. Amazon Q Developerのプロンプトライブラリに登録
生成されたプロンプトを必要に応じて調整した後、Amazon Q Developerのプロンプトライブラリ機能を利用してプロンプトを登録します。これにより、簡単にプロンプトを呼び出して利用する事ができます。
※Amazon Q Developerのプロンプトライブラリについてのドキュメントは以下を参照 docs.aws.amazon.com
まとめ
今回は、プロンプトエンジニアリングにおけるメタプロンプトの活用方法についてご紹介しました。 メタプロンプトは、AIツールとの対話が効率的になる有効なテクニックです。 一度良いプロンプトのテンプレートを作ってしまえば、その後の作業効率が大幅に向上します。
開発業務に限らず、様々な場面で利用できるテクニックなので、ぜひ日々の業務で試してみてください。
針生 泰有(執筆記事の一覧)
サーバーワークスで生成AIの活用推進を担当