AWS CDK Conference Japan 2025 登壇報告 - Grant オブジェクトの話をしてきました

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掲題の通りです。2025/07/12 に開催された、「AWS CDK Conference Japan 2025」に登壇者として参加してきました。

提出した CfP (Call for Papers) はこちらです(下記)。

fortee.jp

aws-cdk-lib に入っている "Grant" という、少しマイナーな、しかし多くのユーザーが grantXXX 系メソッドを通して暗黙的に使っているクラスについて紹介する内容です。

資料はすでに公開済みです。

speakerdeck.com

登壇内容とCfP提出の背景

Grant オブジェクトは、grantXXX メソッド、ならびに grantXXX メソッドの「誰に」の目的語に当たる IGrantable 型インタフェースと強い関連があります。そこで、多くのユーザーに馴染み深いであろう grantXXX メソッドのデザインのおさらいから GrantIGrantable の存在に触れ、そこから Grant オブジェクトがどのように使われているのか、IaC 開発者は意識する必要があるのか(あるならどんな場合か?)を紹介しました。

スライドの最初に結論を述べている通りで、普通に IaC テンプレを開発する分には Grant オブジェクトを意識する必要性は薄いと思います。内部実装の都合で使われている型であって、大多数のユーザーはあえてこれに勉強時間を割り当てる必要性はない、という認識です。

私自身はというと、本家の Bucket クラスに新たな grantReplicationPermission メソッドを追加する際に初めて Grant を意識し、必要に駆られて調べた、という感じでした。その契機となったプルリクエストはこちらです。

feat(s3): add grantReplicationPermission for IAM Role permissions #34138

この登壇の CfP を書くきっかけになったのは自分自身の体験です。

クラス自体は前から知っていたのですが、正直なんなのかわからずモヤモヤしつつも遠巻きに見ていた存在でした。で、実際にコントリビューションして一通り調べてみた感想が「これ、大多数の一般ユーザーは知らなくていいやつだな」でした。

grantXXX メソッドの戻り値の仕様として Grant 型の使用はほぼ統一されていますので、リファレンスからこのクラスを認知している方はいるだろうと思いましたし、戻り値仕様に書かれている割にはこれを使った実装例や記事が出回っていない状況に私と同じようなモヤモヤを抱いている方もいらっしゃるだろう、と思いました。そんな方々に「内部実装に寄った用事がない限り意識しなくていいよ。特定の必要性を満たすまではあえて勉強コストを払わなくてOK。でも必要が出てきたら私の発表を思い出して、見返してみてね」とお伝えすることを本登壇のゴールとしました。

もう少し不真面目な動機を述べさせていただくと、ベスプラ的な話は他の方々がかなりカバーしている雰囲気だったので、同じ場所を攻めてもなぁ、という意識がありました。明日の実務にちゃんと役立つベスプラは他の登壇者のみなさんに任せて、私は私で趣味全開のニッチに走らせてもらうことにしました。しかし、ただニッチに走っただけでは訳のわからないイロモノという評価で終わってしまうので、そこに多少の実践的なエッセンスを掛け算することで、結果的に聴衆にプラスのなにかをお届けできればよいだろう、という考えで CfP の構成を検討していました。

私自身も、傍目にどう役立つのかもわからないようなニッチ領域にぶっこんで行くノリが好きな人間なので、この発表自体も楽しかったです。

感想

人前に立つのは久しぶりでしたが、思ったよりはリラックスして話せたと思います。心地よい緊張でした。5分尺で、喋る内容もある程度わかっている内容だったのが大きかったかもしれません。

喋りと尺が心配すぎて直前の休憩時間もリハをしておりましたが、言葉に詰まってしまう箇所が複数あったのでかなり不安でした。まあ、直前にリハするようでは明らかに準備不足ですので、褒められたものではありませんね。よい子のみなさまは決して真似しないでください。せっかくカンファレンスに来たんだから、当日は他者の発表とコミュニケーションに集中した方が良いです。

最低限きちんとご迷惑掛けない範囲には収まったようで、本当にほっとしました。開始直前、手元のスマホ操作にもたつきストップウォッチが起動しなかったので、実はめちゃくちゃ焦っておりました。手元の発表者ツールの画面はあまり見ないので、本番中の時間管理で想定外があったのが反省点です。こういうのは PC やスマホよりも物理デバイスの方が頼りになるなと思いました。加えて言うと、スライドの準備段階から時間管理の問題は失敗している感があるので、課題はそのへんも含めたトータルでの構成と時間管理かなという気がします。

懇親会では何人かの方にプレゼンをお褒めいただいきました。フィードバックしてくださったことに、この場でも改めて御礼申し上げます。めっちゃ嬉しいです。ありがとうございます。最初に持ち帰ってほしい結論を述べるスタイルにしたのは割と好評のようでした。「窮すれば通ず」とでも言いましょうか。尺が足りない & 伝わりづらいニッチなネタ、という意識がありましたので、そうした制約条件が結果的に良い方向に的を絞ることに繋がったのかもしれません。

良い機会をいただきました。あれだけ盛りだくさんな企画を遂行するのは本当に大変だったと思いますし、いち参加者の私には想像も及ばないような裏方の苦労もおありだったことと思います。運営のみなさま、素晴らしいイベントをありがとうございました。