「採用はしたい、でも教育が追いつかない!」を解決する、生成 AI トレーナー Bot 開発の裏側

記事タイトルとURLをコピーする

はじめに

こんにちは、高橋 (ポインコ兄) です。
今回は、生成 AI トレーナー Bot についてのお話です。

「手厚い研修を実施して、入社したエンジニアをしっかり育てたい」
「けれど、現場は人手不足で教育工数が割けない…」
「それでも、会社の成長のために採用は積極的に進めたい!」

多くの企業が抱えるこのジレンマ。当社も例外ではありませんでした。
今回は、この課題を解決するために私たちが開発したソリューション、「生成 AI トレーナー Bot」 についてご紹介します。


トレーナーの負担を削減する「生成 AI トレーナー Bot」

当社では、エンジニア研修におけるトレーナーの負担を劇的に削減するため、「生成 AI トレーナー Bot」を自社開発しました。

これは単なる自動応答 Bot ではありません。トレーナーが担っていた「顧客役」を AI が補助し、人間による最終確認 (Human-in-the-loop) を挟むことで、品質を落とさずに工数を削減する仕組みです。

生成 AI トレーナー Bot 紹介動画

当社 Youtube チャンネルに紹介動画もありますので、興味があればこちらもご覧ください。 youtu.be

開発の背景:採用拡大が生んだ「教育のボトルネック」

当社のエンジニア研修について

当社は、AWS 専業のクラウドインテグレーターです。 入社したエンジニアには、AWS の技術スキルはもちろん、顧客対応やプロジェクトマネジメントもしっかり習得してもらうため、(キャリア入社であれば) 4ヶ月という長期間の研修を実施しています。 www.serverworks.co.jp

この研修の肝となるのが、実践形式の「模擬案件」です。

  • トレーニー (入社したエンジニア): エンジニア役
  • トレーナー (先輩社員): 「顧客」および「営業担当」役

このロールプレイングを通じて、要件定義から構築、納品までを疑似体験します。

直面した課題

会社の成長に伴い、私たちは旺盛な採用活動をおこなっています。しかし、トレーニーの数が増えれば、当然トレーナー (顧客役) の負担も増えます。

  • 「入社したエンジニアの数は増えたが、対応するトレーナーの時間が足りない」
  • 「顧客役としての返信作成に時間を取られ、本来の業務に支障が出る」

このように、トレーナーの工数不足が採用・育成のボトルネック となりつつありました。

解決策:生成 AI トレーナー Bot による業務改革

そこで計画されたのが、生成 AI を活用した業務改善です。 私たちが目指したのは、すべてを AI に任せるのではなく、「AI が下書きし、人間が承認する」という協働フローです。

AI 活用フロー

  1. 質問の理解: 入社したエンジニアがプロジェクト管理ツール「Backlog」に質問を投稿すると、Bot がその内容を理解します。
  2. 回答案の生成: AI が顧客 (または営業) の立場になりきり、回答案を自動生成して Slack に通知します。
  3. ワンクリック応答:
    • OK な場合: トレーナーは内容を確認し、ボタン1つで Backlog へ即返答する。
    • 修正が必要な場合: Slack 上で内容を編集してから送信。

利用イメージ:実際の動きを見てみよう

では、実際にどのように動くのか、画面イメージと共に見ていきましょう。

1. トレーニーからのヒアリング・問い合わせ (Backlog)

トレーニー (入社したエンジニア) は、顧客へのヒアリングや構築に関する問い合わせを Backlog 上でおこないます。

2. AI による回答案の提示 (Slack)

トレーナーの Slack には、AI が生成した「顧客としての返信案」が通知されます。 トレーナーはこれを見て、「このまま送る」か「編集して送る」かを判断します。

3. 返信の反映 (Backlog)

トレーナーが承認した内容は、自動的に Backlog のコメントとして反映されます。顧客役のトレーナーが直接入力したかのように振る舞います。

もちろん、顧客 (AI) が Backlog 上で回答したかどうかのステータス確認も可能です。

対応可能なシナリオ

この Bot は、単なる質疑応答だけでなく、以下のような複雑なやり取りもサポートします。

  • 顧客としての逆質問: 構築に関して、顧客視点でエンジニアへ質問を投げかける。
  • 設計書の確認: エンジニアが作成したヒアリングシートや設計書の内容チェック。
  • 構築リソースの確認: 実際に構築された AWS リソースが要件通りかどうかの確認。

導入効果

およそ 40% の負荷軽減!

この仕組みを導入したことで、顧客役を担当するスタッフ(トレーナー)の対応負荷が約 40% 軽減されたというデータが出ています。

特徴:あくまで主役は「人」、AI は「最強の補助」

このツールの最大の特徴は、「編集ができる」という点です。

プロとしての品質を担保

AWS のプロとしてエンジニアを育てる以上、適当な回答はできません。 AI の生成した回答案に過不足がある場合、トレーナーは Slack 上で自由に内容を調整できます。

トレーナーが目を通し、承認しない限りエンジニアには返事が届きません。あくまで AI は「補助」として使い、教育の質は人間が担保します。

文脈を理解する AI

案件チャンネルを通した過去の会話を AI が学習・保持しています。 そのため、「前に指摘しましたよね?」「さっきの話の続きですが」といった、文脈を踏まえた自然なコミュニケーションが可能です。

運用・導入もスムーズに

「AI の導入は設定やメンテナンスが大変そう…」と思われるかもしれませんが、このツールは現場の負担にならないよう設計されています。

管理ツールで簡単メンテナンス

AI のメンテナンスやトレーニーの追加に、複雑なコマンド操作は不要です。 Slack 上に専用の管理ツール (GUI) を用意しており、以下の操作が簡単におこなえます。

  • エンジニアを担当するトレーナーのアサイン
  • Backlog プロジェクトとの連携
  • 専用 Slack チャンネルの作成・編集・削除

例えば、新たにエンジニアが入社した際の「トレーニー追加」も、フォームから入力するだけで完了します。

Bot の準備は「評価基準」を用意するだけ

Bot を動かすために、膨大な学習データを一から作る必要はありません。 必要なのは、既存の「トレーニング評価基準 (ルーブリックなど)」の参照データです。

AI はこの評価基準を読み込み、それに合致しているかを判断します。もし基準を満たしていない場合は、「顧客」として追加の質問をおこなったり、鋭い指摘をおこなったりします。

今後の展望:AWS 研修以外への展開

現在は AWS 構築トレーニング (模擬案件) で利用していますが、この仕組みは他の領域にも応用可能です。

  • 社内業務アプリのトレーニング: 操作方法やトラブルシューティングの学習。
  • AWS 以外の技術研修: プログラミングやインフラ全般の OJT。
  • 一般的な導入研修: ビジネスマナーや社内ルールの Q&A。

今後は、社内トレーニングでの利用範囲拡大や、より幅広い適応領域の検討を進めていきます。

あとがき

人手不足の中でも手厚い教育を実現するための「生成 AI トレーナー Bot」。 AI に丸投げするのではなく、「AI と人が協調する」ことで、教育の質を落とさずに効率化を実現しました。 兄も「これなら僕でもトレーナーができそうや!」と言っていました。

このような生成 AI を利用したトレーニングボットの構築や導入にご興味のある方は、ぜひサーバーワークスまでご相談ください。

それではまた、ごきげんよう。