熊本地震で学生が作成したサービス「mizuderu」を振り返る。JAWS FESTA東海道 2016参加レポート

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みなさんこんにちは、セールスチームの赤塚です。

今回は10月22日(土)名古屋工業大学で行われたJAWS FESTA 東海道 2016への参加レポートをいたします。
写真はほぼ全て撮影班の金春さんからご提供いただいています。ありがとうございます!

まずはJAWS FESTA 東海道チームの皆様お疲れ様でした!
私はイベントの裏方のほか、コミュニティトラックで行われたパネルディスカッションのモデレーターを担当させていただき、熊本地震の際に崇城大学の先生と学生が中心になって作成したWebサービス「mizuderu」の開発ヒストリーを振り返りつつ参加者のみなさんとディスカッションしました。
イベントページ:http://jft2016.jaws-ug.jp/timetable/mizuderu

セッションの概要
地元で開発を行った方々の代表として、崇城大学 情報学部の和泉先生・同大学2年の菊川さん・JAWS-UG熊本で活動されている山ノ内さんの3名にお越しいただき、さらに関西と関東からボランティア参加していた池上さん・大栗さんのお二人を交え、お互いの経験や当時の課題などを会場の参加者と共有しました。
また、韓国からユーザーグループのメンバー4名が参加されていたため、先日発生した韓国での地震のエピソードも伺いました。
さらに、一旦役目を終えて停止していたmizuderuが、10月21日に発生した鳥取地震のためにサービスを始めたとのお知らせもありました。

mizuderuとはmizuderu-1024x555このサービスは、2016年4月16日に発生した熊本での地震の際に、崇城大学 情報学部の和泉先生と学生たちが中心になって被災地で水が出る・出ない・供給可能・漏水地点などの情報を地図上に登録・表示するサービスを作成して公開したもので、主に以下の目的があります。
・被災地で混乱していた水が出ている場所・出ていない場所の情報を見える化する。
・水が提供可能な場所を表示して必要な方が利用できるようにする。
・登録された情報は刻々と状況が変わるため、新しい情報から確認できるようにする。
・漏水している場所を写真付きで地図上にプロットし、水道管の修理計画に役立てる。
こちらはもともと福岡県のプログラマーが作成していたものをmizuderuに統合した機能です


パネラー陣
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  • 和泉 信生さん 崇城大学 情報学部
    mizuderuのフラッシュアイデアを発案、主にプロジェクトマネージメントを行いつつ全体を指揮。
  • 山ノ内祥訓さん JAWS-UG熊本
    AWS側の技術支援やコミュニティ連携の中心として貢献
  • 菊川 稀玲さん 崇城大学情報学部情報学科2年
    和泉先生のフラッシュアイデアを2時間で実装し、mizuderuプロジェクトに貢献
  • 池上 緑さん(どりぃ) JAWS-UG関西女子会
    関西女子会のメンバーからSNS拡散のためにタグ戦略の支援を受けた情報発信と、地元のPHPコミュニティやゲーム勉強会・golang勉強会の運営スタッフの方々との連携に貢献
  • 大栗 宗さん JAWS-UG横浜(当時は休眠中だった)
    負荷分散やCDN対応の他、AWSを活用したインフラへセキュリティや可用性のベストプラクティスの適用に貢献
  • 赤塚 JAWS-UG山形
    JAWS-UG側の裏方として参加

和泉先生からプロジェクトの全体像について紹介

和泉先生と親交のある方々が次々と召集されるなか、JAWS-UG熊本の山ノ内さんに声がかかり、山ノ内さんの声に呼応した全国のメンバー(九州・関西・中部・関東・東北・北海道)からボランティアの手が上がりました。

アイデアの発案者であり、全体のプロマネ担当だった和泉先生
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さらに、AWSのユーザーグループだけでなく福岡や関西のたくさんのエンジニアがボランティアに参加し、崇城大学情報学部情報学科2年の菊川さんが2時間で作成した初期バージョンから、NHKでの放送のスパイクにも耐えられるバージョン4にまで発展したとのことです。
私もテレビのテロップなどでmizuderuが流れていたり、開発風景が放映されるのを東北から見ていました。

初期バージョンを迅速に構築した菊川さん
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ボランティアが行ったこと

山ノ内さんから具体的な仕様の紹介
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  • 仮想プライベートネットワーク(VPC)の追加
  • データベースサービス(RDS)のIOの改善
  • CDNサービス(CloudFront)の追加
  • オートスケーリングへの対応
  • その他AWSに関するセキュリティやパフォーマンスに必要なベストプラクティスの適用
  • 関西のPHPユーザー会を中心としたリファクタリングと機能追加
  • SNSでの拡散


プロジェクトチームの全体コンテキスト
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全国からエンジニアがボランティアに手を上げた
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大変だったこと

  • 連絡手段がFacebookやSlackなど複数あったため、コピペで情報をマージする時期があった
  • 開発タスクの共有GoogleスプレッドシートやBacklogで行われていたが、最終的にGitHubのissuesなるまで混乱していた。
  • GitHubのブランチが多くなりすぎたため、マージに苦労した
  • 開発メンバーの方々自身も様々な場所から作業していた
    熊本の方々もみなさん一箇所で作業していたわけではなく、自宅や避難先などからの作業だったとのことで、停電で電源が十分になく、思うように開発が続けられない方もいたそうです。

韓国ユーザーグループとの情報交流
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今回韓国から参加してくださっていたユーザーグループからは、今年発生した韓国での地震の際に公共の情報サイトがダウンしてしまった出来事や、なぜか韓国語の発音が「地震」と同じ芸能人のツイッターアカウントのタイムラインの動きから地震を検知する仕組みを作って公共の速報より役に立ったなど、ユニークなエピソードを紹介してくださいました。

鳥取地震への対応
10月21日の午後に発生した鳥取での地震でも多くの被害が発生しているとのことで、mizuderuのシステムを復活させています。
給水地点の情報だけでなく、漏水している場所を写真付きで一枚の地図にプロットできますので、水道管の修理計画にぜひ役立てていただきたいです。
http://mizuderu.info
ハッシュタグ:#mizuderu #鳥取地震

まとめ
今回地元のパネラーと関西・関東の他、様々な地域からボランティアで参加していた方々が初めて顔を合わせて当時を振り返り、これからについて話し合う機会になりました。
また、韓国のユーザーグループの方がこのセッションの内容を持ち帰って紹介してくださるとのことで、これからより効率的なアイデアが生まれるかもしれません。
自然災害に対して私たちのできることはごく少ないかもしれませんが、私たちが信じるテクノロジーを通じて少しでも社会の役に立てれば幸いです。

改めて被害に遭われた地域の1日も早い復興をお祈り申し上げます。
ありがとうございました。