マネージドサービス部 佐竹です。
本日は久しぶりにコスト最適化と、そして AWS Trusted Advisor と Cost Optimization Hub に関連するお話です。
はじめに
まずはこれまでの経緯や歴史を振り返ってみましょう。
AWS Trusted Advisor
AWS Trusted Advisor は古くから(2013年から)存在する機能で、AWS のベストプラクティスに則っているのか確認ができるサポートツールとして、現在でも利用が可能です*1。
AWS Trusted Advisor にも「コスト最適化」に関する推奨があり、例えば RDS の未使用(アイドル)DB インスタンスの有無などの確認は、我々も Trusted Advisor を有効活用してきました。
また以前に、以下のブログ記事でご紹介したように、2020年11月から「Organizational view」を用いることで、組織に所属する全アカウントの Trusted Advisor の推奨をまとめてレポートとして出力することが可能となっています。
AWS Cost Optimization Hub
2023年11月26日に、AWS Cost Optimization Hub が発表されました。
AWS Cost Optimization Hub は AWS Organization と統合されており、組織全体のコスト最適化をまとめて閲覧できる機能です。また AWS Compute Optimizer を組織で有効化することで、Cost Optimization Hub にその推奨を連携することもできます。
AWS Compute Optimizer は各ワークロードに最適なコンピューティングリソース、具体的には EC2 インスタンスや EBS ボリュームの最適なサイズを推奨してくれるサービスで、コスト最適化にも、またサステナビリティの観点でも有用なサービスです。AWS Compute Optimizer に関するエンジニアブログは、私がこれまで様々書いてきましたので、「こちら」から合わせて是非ご覧ください。
そして私は実際にこの Cost Optimization Hub を社内検証環境のコスト最適化で利用し、以下の通りブログ記事にまとめました。
2025年5月末からの関連アップデートのご紹介
May 30, 2025、日本時間では5月31日頃、以下の通り AWS 公式ドキュメントが更新されました。
15 new AWS Cost Optimization Hub checks add to Trusted Advisor
(和訳) AWS コスト最適化ハブの 15 個の新しいチェックが Trusted Advisor に追加されましたhttps://docs.aws.amazon.com/awssupport/latest/user/History.html
このタイミングで、AWS Trusted Advisor に AWS Cost Optimization Hub のチェックが追加されたことがわかります。

この時追加されたチェックは、上画像の通りです*2。
本更新からわかることが1つあります。それは Check ID が c1z7kmr
から開始されるものは、Cost Optimization Hub が生成するもの、ということです。
さて、さらに2025年6月5日に以下のブログが投稿されています。
本ブログ「Optimize Your AWS Spend with New Cost Savings Features in AWS Trusted Advisor(翻訳: AWS Trusted Advisor の新しいコスト削減機能で AWS の支払いを最適化)」では、以下のことが記載されています。
ようは「Cost Optimization Hub のチェック項目が Trusted Advisor のコスト最適化のチェック項目に統合されたことで、より実用的で役立つインサイトが提供されるようになりました」ということです。
実際に、Check ID が c1z7kmr
から始まるチェック項目を、先ほどのブログ内にて検索してみますと、以下の通りになります。

ただし重要なのは、引き続き本機能を利用するためには、「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」をどちらも有効化する必要があるということです。
また、これらのサービスをオプトイン済のユーザ様各位は、既に Cost Optimization Hub の推奨に置き換えられている状況となります。
統合されることによるメリット
これまで Cost Optimization Hub と Trusted Advisor のコスト最適化の推奨は、別々のロジックで動作してきましたが、5月末のアップデートでより優れたロジックである Cost Optimization Hub を正とすることとなりました。
確かに、我々もコスト最適化を行うにあたり、別々のロジックで動作しているという背景から、Cost Optimization Hub と Trusted Advisor のコスト最適化の推奨をそれぞれ取得し、どちらも有効活用してきました。しかし、正直これは手間のかかるものでした。
このアップデートにより、コスト最適化のチェック項目のソース(情報源)は、AWS Cost Optimization Hub に統合されることとなりました。特に重複・関連するコスト最適化項目において、別々のロジックではなくなりたった1つの情報源となったわけです。
めでたしめでたし。
ここまでが長い経緯の説明です。
AWS Trusted Advisor の古いコスト最適化のチェック10項目が2025年9月9日に廃止
やっと本題です。
2025年6月13日に [Action Required] AWS Trusted Advisor Cost Optimization Check Deprecation on September 9, 2025
とする通知を受信しているユーザ様も多いでしょう。メール本文には以下の通り記載があります。
You are receiving this message because our records show you are a Support customer that uses Trusted Advisor checks to monitor your AWS environment.
On September 9, 2025, Trusted Advisor will remove ten (10) Trusted Advisor checks. Newer, more accurate checks are currently available that replace these checks.
The following is the list of legacy Trusted Advisor checks to be removed on September 9, 2025:
(翻訳)
このメッセージは、Trusted Advisor チェックを使用して AW S環境を監視されているサポート契約のお客様にお送りしております。
2025年9月9日をもちまして、Trusted Advisor は10個のチェックを削除いたします。これらのチェックに代わる、より新しく精度の高いチェックが現在利用可能です。
以下は、2025年9月9日に削除される従来のTrusted Advisorチェックのリストです。
- Low Utilization Amazon EC2 Instances
Qch7DwouX1
- Underutilized Amazon EBS Volumes
DAvU99Dc4C
- Amazon EBS over-provisioned volumes
COr6dfpM03
- Amazon RDS Idle DB Instances
Ti39halfu8
- AWS Lambda over-provisioned functions for memory size
COr6dfpM05
- Savings Plan
vZ2c2W1srf
- Amazon Relational Database Service (RDS) Reserved Instance optimization
1qazXsw23e
- Amazon Redshift Reserved Node Optimization
1qw23er45t
- Amazon ElastiCache Reserved Node Optimization
h3L1otH3re
- Amazon OpenSearch Service Reserved Instance Optimization
7ujm6yhn5t
このリスト、どこかで見覚えがないでしょうか?

これは、先程上画像でもご紹介した、AWS Cost Optimization Hub に置き換えられる前の古い Trusted Advisor Check Name の一覧と一致します。

もっと具体的にフォーカスしますと、この上画像の通りの一覧です。
「コスト最適化のチェック項目のソース(情報源)は、AWS Cost Optimization Hub に統合されることとなった」ということで、AWS Trusted Advisor の古いコスト最適化のチェックは不要になったのです。そのため、不要な機能は廃止されることとなりました。
ただし(先ほど記載した内容の繰り返しになりますが)、この機能を利用するためには、「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」をどちらも有効化する必要があるのです。
つまり引き続き AWS Trusted Advisor でコスト最適化の項目を見たいユーザ様の場合には、「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」をどちらも有効化する必要があります。2025年9月9日に廃止されますので、それまでに対応頂くと良いでしょう。
念のため、機能の有効化の影響として発生するコストに関してですが、「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」は基本的に全て無料で利用可能であり、有効化(オプトイン)による追加のコストは発生しません。
さらに一歩踏み込んで記載しますと、「AWS Compute Optimizer」には「Enhanced infrastructure metrics」という paid feature (有料機能)があります。
これは「追加費用で分析期間を最大93日間まで延長し、必要に応じて精度を向上させる」という機能なのですが、これは必須ではありません。あくまでオプションです。
よって、引き続き無料でコスト最適化のチェックを受け取ることができるのですが、「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」の有効化が必要となっています。
機能の有効化に関して
AWS Compute Optimizer の有効化に関するブログは「AWS Compute Optimizer で EC2 Instance を最適化する」をご参照ください。
また、Cost Optimization Hub の有効化は、組織全体で有効化されたい場合は「マネジメントアカウント(管理アカウント)」にログイン後、「Billing and Cost Management > Cost Optimization Hub」を表示してください。

上記画面において Enable Cost Optimization Hub for this account and all member accounts
のラジオボタンが選択されていることを確認の後、「Enable」を押下ください。
組織を横断してコスト最適化項目を閲覧したい方への補足
AWS Trusted Advisor のコスト最適化のチェック項目は AWS Cost Optimization Hub と統合されたのですが、AWS Trusted Advisor のコスト最適化のチェック項目は、変わらず「ログインしているアカウントに対して」を確認するものです。
このため、「組織を横断してコスト最適化項目を閲覧したい場合」には、Cost Optimization Hub をご覧になるのが早道です。先のブログでご紹介した通り、UI も優れているため分析もしやすいでしょう。もちろん引き続き AWS Trusted Advisor の Organizational view を用いることもできますが、まずは Cost Optimization Hub を確認されることを推奨します。
まとめ
本ブログでは、AWS Trusted Advisor の古い(レガシーの)コスト最適化のチェック「10項目」が2025年9月9日に廃止される件についてその背景と共に記載しました。
2025年5月末より、AWS Trusted Advisor のコスト最適化のチェック項目は、Cost Optimization Hub と統合されています。
コスト最適化のチェック項目のソース(情報源)は、AWS Cost Optimization Hub に統合されることとなったため、置き換えによって不要となった AWS Trusted Advisor の古いコスト最適化項目は廃止されることとなりました。
既に「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」の有効化を完了しているユーザ様では、本通知に関して特に対応は不要です。
未だ「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」の有効化を完了されていないユーザ様で、引き続き AWS Trusted Advisor でコスト最適化のチェックを閲覧されたい場合は、2025年9月9日までにこれらのサービスを有効化(オプトイン)ください。
「AWS Cost Optimization Hub」と「AWS Compute Optimizer」は追加コストなしに利用可能であり、有効化(オプトイン)による追加のコストは発生しません。
以上で本ブログは終わりとなります。
では、また次のブログでお会いしましょう。
イベントに登壇します
2025年6月24日(火)に開催される WafCharm Night vol.2 にサーバーワークス佐竹が登壇します。
10分の LT 枠で「セキュリティの民主化は何故必要なのか:AWS WAF 運用の 10 の苦悩から学ぶ」の題で発表します。オフラインのみの開催ですが、よろしければお越しください。
*1:https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/aws-trusted-advisor-update-trial-new-features/
*2:https://docs.aws.amazon.com/awssupport/latest/user/aws-trusted-advisor-change-log.html より抜粋
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを業務利用してきています。主な表彰歴 2021-2022 AWS Ambassadors/2020-2025 Japan AWS Top Engineers/2020-2025 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減やマルチアカウント管理と運用を得意としています。