はじめに
本ブログでは、re:Invent 2025 にて発表された Graviton 5 について紹介するとともに、
Graviton 5 への移行を検討する際に押さえておきたいステップや、活用可能な機能・考え方について整理します。
これまで AWS は Graviton、Graviton2、Graviton3 と世代を重ねる中で、
価格性能・電力効率・クラウドネイティブ最適化を一貫して進化させてきました。
Graviton 5 もまた、その延長線上に位置づけられるプロセッサとして発表されています。
re:Invent 2025 の発表では、
Adobe、Airbnb、Atlassian、Epic Games、Formula 1、Pinterest、SAP、Siemens、Snowflake、Synopsys など、
Fortune 上位 1,000 社の EC2 顧客のうち 98% が、すでに Graviton の価格性能比のメリットを享受している
ことが紹介されていました。
AWS の利用が拡大している時代であり、コスト削減策において、RI/SPで一定の最適化を進めた組織でも、次の打ち手として 改めて Graviton 5 の利用や移行を検討する価値がある タイミングと言えるでしょう。
本記事を読むことで、
- 自組織の Graviton 利用状況と削減余地を GSD を使って定量的に把握する方法
- どこから Graviton 移行に着手すべきかの優先順位付けの考え方
を理解できます。
Gravitonの利用状況と節約額の把握
そもそも、Graviton使用されている方も多いと思いますが、どれくらい使用しているのか、またどれくらいの削減余地があるのか、現状を把握できていますでしょうか。
また、 - Graviton を既に使っている組織でも、「最大化できている」という確信が持てない - 多くの組織は 潜在的な Graviton の削減余地の “一部” しか獲得できていない - 移行判断に必要な比較(世代/価格/性能の考慮)を、スプレッドシートで重労働としてやってしまいがち という課題をお持ちではないでしょうか?
AWS Graviton Savings Dashboardを使用することで、上記のような課題を解決するための現状分析・効果測定を容易に行うことができます。

Graviton Savings Dashboardについて
Graviton Savings Dashboard(以下GSD)は組織内の現状の利用状況と移行余地の情報を統合して提供するダッシュボードとして、AWSから提供されています。 GSD は Cloud Intelligence Dashboards Framework の中にあり、Amazon QuickSightで容易にセットアップが可能です。
AWSが提供しているデモはこちらから確認することができます。
re:Inventのセッションでは、GSD が提供する価値を 3つの視点に整理していました。
1) Realized savings
すでに獲得できている削減(現状の価値)
2) Potential opportunities
さらに削減できる可能性(将来の価値)
3) Detailed breakdown
“どこから手を付けるべきか” を決めるための分解情報(優先順位)
カバーされているサービス
GSD は複数サービスを横断して可視化します。
- Amazon EC2
- Amazon RDS
- Amazon ElastiCache
- Amazon OpenSearch
ダッシュボードではそれぞれのサービスごとに状況が確認できるようにタブが分かれています。
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Summaryダッシュボードについて
Summary シートは、Graviton Savings Dashboard の 入口(Executive / FinOps 向けビュー) です。 対象4サービスの現状・削減余地が書かれています。
前月の使用状況から、Base Savings(インスタンスタイプ変更だけで削減できる費用)、Performance Savings(ダウンサイジングなどによって削減できる費用)を足し合わせた、Potential Graviton Savingsが表示されています。

出力内容は以下の様にControlタブからフィルタをさせることが可能です。

本ブログでは、GSDのうち、EC2ダッシュボードについて内容を説明します。
EC2ダッシュボードについて
以下5つのセクションに分かれています。
①Current Amazon EC2 Graviton Usage and Savings ➡「先月時点での Graviton 利用状況と、すでに得られているコスト効果を俯瞰するダッシュボード」
②Amazon EC2 Graviton Opportunity ➡「まだ Graviton 化していない EC2 ワークロードを、どこまで・どの難易度で・どれくらいの金額で最適化できるかを見積もるダッシュボード」
③Potential Graviton Savings Details ➡「Graviton Opportunity セクションで算出された“削減余地”を、インスタンス単位まで分解した“実行リスト”」
④Potential Savings Across Graviton Generations ➡「同じワークロードを、Graviton の“どの世代”に合わせるのが最も合理的かを比較するための表」
⑤Call to Action/Additional Resources ➡「ネクストアクション・補足情報」
① Current Amazon EC2 Graviton Usage and Savings
前月のEC2の利用状況について、以下情報を提供しているダッシュボードです。

Realized Graviton Savings
- すでに Graviton を使っている EC2 ワークロードによって、前月に実現した実績ベースの削減額
- 仮定・シミュレーションではなく、確定した値として記載されているもの を表しています。
※ここで示される Realized savings は「推計」ではなく、実績データに基づく“前月の削減額”です。 一方で、後半の Amazon EC2 Graviton Opportunity 以降は「移行したらどうなるか」を示す 試算(仮定あり) の値になります。

上記では、$20.60KがGravitonによって削減されており、Test1(アカウント名)が最も多くのGravitonを使用している($322.35K)ことが読み取れます。
Current Graviton Coverage
- EC2 全体の インスタンス時間のうち、どれだけが Graviton で消費されているか を表しています。

Amortized Spend by Processor Type(プロセッサ別コスト)
- RI / Savings Plan を考慮した実効コスト(Amortized Cost) をプロセッサ別にみるとどうか を表しています。

料金ベースでみると、Intelコアが大部分を占めていることが分かります。
Usage by Processor Type(プロセッサ別使用量)
- Normalized Instance Hours(NIH) ベース純粋な利用量 をプロセッサ別にみるとどうか を表しています。
※本ダッシュボードでは、利用量の比較に Normalized Instance Hours(NIH) を用います。 NIH はインスタンスサイズ差をならした換算指標で、単純な“起動時間(Instance Hours)”そのものではなく、ワークロード規模を公平に比較するためのものです。

料金はIntelコアが大部分を占めているのにもかかわらず、インスタンス時間で言うと、Gravitonの割合が増えました。 Gravitonのコスト効率の良さをうかがえます。
Current Graviton Coverage
- 半年の期間で、月ごとのGraviton使用量(NIH)の割合がどの程度か を表しています。

10月にIntelの使用率がぐっと増えています。オンプレミスからのAWS移行などが行われたのか、など、全体の傾向を探ることができます。
Realized Graviton Savings
- 半年の期間で、どの程度のGravitonによるコスト削減ができているのか を表しています。

月ごとの償却コストとして、 ・Gravitonを使っていない場合のインスタンスコスト(青棒) ・実際にGravitonを使用した際のインスタンスコスト(オレンジ棒) ・Gravitonによって削減されたコスト(青-オレンジ=実際にGravitonで削減されたコスト) を確認することができます。
Graviton Savings ($) by Instance Types
- Graviton による“実現済み削減額(Realized Savings)”を、インスタンスタイプ別の内訳として時系列で見せるグラフ を表しています。

どのファミリーが削減に貢献しているのかが良くわかり、特定の月だけ削減をしたわけではなく、定常的にGravitonによる削減がなされていることを確認できます。
Graviton Savings ($) by Linked Account
- 前月における Graviton による実現済みコスト削減額を、AWS のリンクドアカウント単位で分解したもの を表しています。

Test1アカウントはGraviton移行が進んでおり、Test2と3アカウントは一部しか進んでいないことが分かります。
Realized Graviton Savings Details
- Gravitonによって削減された金額の内訳をインスタンスごとに表した表 を表しています。

先ほどのGravitonによる削減額の内訳を表している表になります。 なぜあの金額が出ているのか、内訳を記載しています。
②Amazon EC2 Graviton Opportunity
このセクションでは、まだ Graviton 化していない EC2 ワークロードを、どこまで・どの難易度で・どれくらいの金額で最適化できるかを表示しているダッシュボードです。 より、Gravitonでのコスト削減を実現するために、どのような手段を使用すればいいのかを表しているものです。
Potential Additional Graviton Coverage
- 前月の結果のうち、現在 Graviton ではないインスタンス(インスタンス時間ベース)のうち、Graviton に移行可能と判定された割合 を表しています。

まだ、73.2%のインスタンスが、Graviton移行が可能なのに、移行ができていない状態を表しています。
Potential Graviton Base Savings
- サイズ・台数そのままでGraviton移行した場合のコスト削減額 を表しています。

Estimated Additional Savings Due to Performance
- Gravitonの性能向上により、削減されるインスタンス時間(この図では10%・上部のスライダーで調整可能)を削減した際のコスト削減額 を表しています。

AWSは、Gravitonでは、最大で40%の性能向上によるインスタンス時間の削減が見込めると述べています。
Total Potential Graviton Savings
- 上記のPotential Graviton Base Savings+Estimated Additional Savings Due to Performanceを足し合わせた最大のコスト削減額 を表しています。

コスト削減においては、この数値をもとにミッション設定するのがよろしいかと思います。
Amortized Cost Breakdown
- 直近 6 か月間における EC2 ワークロードの償却後コスト(Amortized Cost)を、Graviton 移行前後でどの程度コストが変わるのか を表しています。

グラフは以下の様に分かれています。 ・Current Instance Amortized Cost(オレンジ棒) →現在の EC2 構成で支払っている実際の償却後コスト。
・Potential Graviton Instance Amortized Cost(緑棒) →インスタンスを Graviton に置き換えた場合の ベースラインの想定コスト(性能改善は考慮せず、単純なインスタンスタイプ移行のみ)。
・Projected Graviton Amortized Cost with Savings Due to Performance(青棒) →Graviton の性能向上による NIH 削減効果(10%・ダッシュボードのスライダーで調整可能) を加味した場合の想定コスト。
これを見ると、単純な移行コストだけでも20~30%コストが削減されるのが見て取れると思います。
Normalized Instance Hrs Breakdown
- 直近 6 か月間における EC2 の利用量(インスタンス時間)についてGraviton 移行前後で比較したグラフ を表したものです。

単価が安いだけでなく、同じ処理をより少ない計算資源で実行できる点がメリット
Total Potential Savings Breakdown
- 削減可能性額の内訳 を表したものです。

Graviton化することにより下がるコストと計算量の増加により削減されるコストを表しております。
移行難易度について
これよりも以下のグラフでは、移行難易度についての分類がなされており、それをどうAWSが判定しているのかの説明が書かれています。
Typically Easy(通常は容易)
→Graviton への移行が比較的シンプルで、技術的・契約的な制約が少ないケース
ここにカテゴリされたインスタンスは、Graviton移行が行えるものとして検討を進められます。
Requires Additional Planning(追加計画が必要)
→技術的には移行可能だが、契約・課金モデルの調整が必要なケース
既存の非 Graviton 向け RI / Savings Planが発生しているものを表しています。 Graviton移行中に、並列でRI/SPの支払いが発生してしまう恐れがあるためです。
Excluded from Savings Calculations(算出対象外)
→ダッシュボード上では、そもそも Graviton 削減額の計算に含めていない対象
SpotInstanveやWindowsインスタンス(Graviton非対応)、対応するGravitonマッピングが存在しないインスタンスがこのカテゴリにマッピングされます。
Potential Graviton Savings By Implementation Effort
- 「Graviton へ移行した場合に見込めるコスト削減額」**を、移行の実装難易度(Implementation Effort)別に分解 を表したものです。

このあたりは、AWS利用方法によって大きく異なってくるものですが、コスト削減の指標として参考にしてもいいのではないでしょうか?
Potential Graviton Coverage By Implementation Effort
- 直近 6 か月間における EC2 の利用量(Normalized Instance Hours)を、Graviton 移行の実装難易度別に割合で分解 を表したものです。

Potential Graviton Savings by Linked Accounts And Implementation Effort
- リンクドアカウント(AWS アカウント)ごとに、Graviton 移行によって見込まれる“潜在的な削減額”を、実装難易度別に分解して可視化 を表したものです。

Potential Graviton Savings by Current Instance Types
- 現在利用している EC2 インスタンスタイプ(x86 系など)ごとに、Graviton(Default next-gen)へ移行した場合に見込まれる“潜在的な削減額”を、月次推移で表したものです。

どのファミリーをGraviton化するかを決めるための優先度マップです。
Potential Graviton Savings by Purchase Option
- 現在の購入オプション(課金形態)別に、Graviton(Default next-gen)へ移行した場合に見込まれる“潜在的な削減額”を、月次で比較したものです。

RISPを購入済みだと、ReservedやSavingsPlansの割合が高くなり、よりすぐに着手可能なOn-Demandの割合を把握することができるようになります。
Potential Graviton Savings by Purchase Option and Operating System
- OS(Linux / RHEL / SUSE)ごとに、購入オプション別(On-Demand / Savings Plan / RI)でGraviton(Default next-gen)へ移行した場合の“潜在的な削減額”を比較したものです。

どの OS のどの課金形態から Graviton 化するか、FinOps × OS × 調達戦略の優先順位付け、Linux 以外を“今やるか/後でやるか”の線引き
③Potential Graviton Savings Details
- 「Potential Graviton Savings Details(Graviton への移行によって“将来得られる可能性のある削減効果”を、インスタンス単位で詳細に示した一覧)」です。

④Potential Savings Across Graviton Generations
- 「Potential Savings Across Graviton Generations(Graviton世代別の潜在的削減額詳細)」 を 明細レベル(インスタンス単位) で示したものです。

“どの世代のGravitonに移行すると、どれくらいコストが下がる(または上がる)か” を比較・判断するための表です。
終わりに
このブログでは、Graviton Savings Dashboardについて紹介をしました。
Graviton 5 の登場により、「x86 → Graviton」だけでなく 「どの Graviton 世代を選ぶべきか」という意思決定が重要になっています。
また、Graviton移行については、Graviton Porting Advisorのような補助ツールも存在します。 是非Graviton移行を考えるきっけけになったら幸いです。