【Amazon Connect】電話番号と電話回線の関係について

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先日、Amazon Connect を説明する機会があったのですが、その中で、電話番号と電話回線の関係についてなかなか理解しにくいところがあるなと感じましたので、オンプレミスのコールセンターはどうしているのかの点も含めてまとめてみました。

想定する読者

  • オンプレミスのコールセンターから Amazon Connect への移行を考えている方
  • Amazon Connect を利用しているが、オンプレミス利用者と回線周りの話に隔たりを感じる方

Amazon Connect の仕様

先に Amazon Connect としての仕様を下記のとおりです。

  • 電話番号は Amazon Connect インスタンスに対して紐付けられます。
    • AWS アカウントへの紐付けではありません。
  • 電話番号は、インスタンス内のコンタクトフローに対して、1 対 1 で紐付けられます。
    • 1つの電話番号に対して複数のフローを紐付けることは出来ません。
  • 同時通話最大数は、インスタンス毎に設定されています。
    • 電話番号の数と相関はありません。

なお、Amazon Connect のサービス基盤として、物理的な電話回線は存在しますが、共有リソースとなるため、利用者が意識して利用することはありません。

オンプレミスでの運用例

コールセンターを自社で行うのか、事業として行うのか、またその規模によって電話回線のいろいろな構成パターンがあるため、簡単にまとめます。

一般のご家庭レベル

電話周りをお仕事にしていない方のイメージは下図のような感じかと思います。
1本の電話回線に 1つの電話番号が紐付いており 1通話しか出来ない。
携帯電話もそうですね。(デュアルSIM で 2回線とかありますが、あれば物理的に 2回線。)

オンプレミス環境での回線構成 (その1) - 1回線 1番号
オンプレミス環境での回線構成 (その1) - 1回線 1番号

小規模なオフィスで 1番号 1従業員 で良いなら

5人いたとして、1回線 1番号 1通話 な回線を 5本用意することで実現は可能です。
とはいえ、代表電話の場合、鳴ったら走って受けに行くのか、取り次ぎたい場合とか考えると不便そうですね。

オンプレミス環境での回線構成 (その2) - 複数回線の場合
オンプレミス環境での回線構成 (その2) - 複数回線の場合

代表組を使う

キャリア(電話回線を提供する)側のサービスとして代表取扱サービス(代表組)というものがあります。
代表組することで、回線をグループ化することが出来、指定された親番号に着信した電話はグループ化された回線が埋まるまで利用することが出来ます。
とはいえ、コールセンターを考えると、まだまだ不便そうです。

オンプレミス環境での回線構成 (その3) - 代表組をした場合
オンプレミス環境での回線構成 (その3) - 代表組をした場合

tm.softbank.jp

複数通話できる回線を使う

これまでは、1回線 1番号 1通話な回線でしたが、企業向けな 1回線で複数通話が可能な回線もあります。
下図は PRI形式の回線を利用した場合の図となりますが、1回線で 23通話可能な回線となっています。
なお、このような回線を利用するには基本 PBX が必要となってきます。 ただ、回線を契約するだけでは電話番号は 1番号のみなので、まだまだ不便そうです。

オンプレミス環境での回線構成 (その4) - PRI 回線を利用した場合
オンプレミス環境での回線構成 (その4) - PRI 回線を利用した場合

電話番号を追加する

物理的な電話回線には契約番号的に 1つの番号が紐付いていますが、それ以外に電話番号を追加することが可能です。
必要となる用途分の電話番号を追加することで、それぞれ着信を受けることが出来るようになります。
23通話可能な回線に 100番号追加することも可能ですが、全て合わせて 23通話が上限となります。 10席程度のコールセンターであれば、このような回線構成で運用可能かと思われます。

オンプレミス環境での回線構成 (その5) - PRI 回線に番号を追加した場合
オンプレミス環境での回線構成 (その5) - PRI 回線に番号を追加した場合

コールセンターを請け負うような場合

自社の規模が大きかったり、コールセンターを請け負うような場合には、数百から数千の通話が発生することも想定されます。
そのような場合は、複数通話が可能な回線(PRI回線等)を複数に束ねます。

オンプレミス環境での回線構成 (その6) - PRI 回線を複数にした場合
オンプレミス環境での回線構成 (その6) - PRI 回線を複数にした場合

電話回線も IP 化されている

これまで説明してきた電話回線は、アナログ回線、デジタル回線と呼ばれ、独自の電話の規格によって提供されているものですが、キャリア側の基盤は概ね IP化が完了しており、利用者側の設備が利用可能であれば IP ネットワークとして接続することが可能です。 この場合は、接続間のネットワーク帯域によって、通話可能な数が決まります。

オンプレミス環境での回線構成 (その7) - IPネットワークを利用した場合
オンプレミス環境での回線構成 (その7) - IPネットワークを利用した場合

改めて Amazon Connect の仕様

オンプレミスでの例を踏まえて、Amazon Connect 側を改めて確認してみたいと思います。

Amazon Connect はクラウドサービスとなり、電話番号や回線に関する部分は AWS が管理しており、利用者側での管理は必要ありません。(= 利用者側ではどうにも出来ない。)
また、利用者でリソースを共有することとなるため、Service Quotas という制限値が設けられています。

docs.aws.amazon.com

キャパシティ面で気を付けておくべき Service Quotas として以下 3つを上げておきます。

  1. Concurrent active calls per instance (インスタンス毎の同時通話最大数)
    インスタンス毎に通話できる最大値が定められています。
    下図の場合、2つのインスタンスに対して、それぞれ 10 通話まで可能な設定になっています。

    Concurrent active calls per instance
    Concurrent active calls per instance

  2. Phone numbers per instance (インスタンス毎の電話番号)
    インスタンス毎に紐付けられる電話番号の最大値が定められています。
    下図の場合、一方は 10番号、他方は 5番号までリクエストが可能となっています。

    Phone numbers per instance
    Phone numbers per instance

  3. Users per instance (インスタンス毎の最大ユーザー数)
    電話番号や回線数に直接関係しませんが、作成可能なエージェント/オペレーター数にも値があります。
    下図の場合、2つのインスタンスに対して、それぞれ 500ユーザーまで作成可能な設定になっています。

    Users per instance
    Users per instance

上記をまとめて図にすると以下のような感じです。

Amazon Connect での構成イメージ
Amazon Connect での構成イメージ

なお、日本の電話番号は、Multi-Carrier Available となっていることから、複数のキャリアの電話番号から AWS が割り当てを行います。

Amazon Connect Telecoms Country Coverage Guide

Amazon Connect Telecoms Country Coverage Guide (Last updated 2025/03/10)
Amazon Connect Telecoms Country Coverage Guide (Last updated 2025/03/10)

補足事項

Service Quotas に関しては、画像内のボタンにもあるとおり、引き上げのリクエストをすることが可能です。 しかしながら、利用状況によって AWS にて判断されますので、必ずしもリクエストが承認されるわけではない点についてご注意いただければと思います。

また、Service Quotas の値については、利用状況により AWS 側で調整されることもありますため、定期的に確認することをお勧めいたします。

おわりに

オンプレミスでは電話番号や電話回線の管理が必要となります。
一方、Amazon Connect ではクラウドサービスのため管理不要となる代わりに、Service Quotas による制限値が設けられるところが大きな違いとなります。

オンプレミスとクラウドでの電話番号や電話回線の扱いの違いについて参考にしていただけますと幸いです。