はじめに
サーバーワークスの宮本です。本記事では弊社内の有志で開催したスクラムガイドの読書会について紹介します。
スクラムガイドとは
スクラムガイドは、Jeff Sutherland 氏と Ken Schwaber 氏が 30 年以上かけて開発・進化・保守しているスクラムを⽂書化したものです。原著は英語ですが、様々な言語に翻訳されており、日本語版もあります。初版は 2010 年に公開されましたが、その後改訂を重ね、最新版は 2020 年となっています。
https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf
目次は以下の通りで、スクラムを構成する要素について簡潔に書かれています。
- スクラムガイドの⽬的
- スクラムの定義
- スクラムの理論
- 透明性
- 検査
- 適応
- スクラムの価値基準
- スクラムチーム
- 開発者
- プロダクトオーナー
- スクラムマスター
- スクラムイベント
- スプリント
- スプリントプランニング
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- スプリントレトロスペクティブ
- スクラムの作成物
- プロダクトバックログ
- 確約(コミットメント):プロダクトゴール
- スプリントバックログ
- 確約(コミットメント):スプリントゴール
- インクリメント
- 確約(コミットメント):完成の定義
- プロダクトバックログ
開催の背景
弊社ではいくつかのプロジェクトをスクラムで進行中です。実績は重ねてきてはいるものの、まだまだ経験豊富な人は少なく、試行錯誤を重ねながら進めています。私自身も3年程度の経験がありますが、1つのプロジェクトのみの経験で、正しくスクラムを体現できているか?自分たちがやっているスクラムと本来のスクラムとの差分は何なのか?といった課題を感じていました。
この課題感に対応するため、社内で読書会を開催してみてはどうか、と思い立ち部内で募集をかけてみました。

思った以上に反応があり、同じような課題感を持っている方がいることを確認できました。スクラム未経験者から、認定スクラムマスター保持者まで様々なタイプの方が集まりました。
開催形式
以下の形式で開催しました。
- 全4回(各回1時間) + 振り返り会
- 参加者9名を毎回3人ずつのグループに分ける
- 持ち回りでファシリテーターを担当
- 事前準備はなし、参加者の1人が音読し、その内容についてディスカッション、これを繰り返す
- 初心者向けスクラム理解度クイズ を読書会の前後に実施
グループ分けをして少人数で実施することで、実施日時の調整のしやすさや、ディスカッションでの発言機会の確保を目指しました。
参加者の感想
実施後、参加者からいただいた感想の一部をご紹介します。
平松
スクラムガイド自体は読んでいましたが、抽象的な記述や実際のケースを想像しづらい部分については、自己解釈の範疇にとどまってしまっていました。
今回は読書会という形式だったことにより、他のプロジェクトでスクラムを実践しているメンバーと実体験を共有しながら議論することができたため、スクラムへの理解を深めることができました。
特に、スクラムの3本柱である「透明性」「検査」「適応」について、これまでもスクラムイベントを通じて、タスクや成果物が誰からも見えやすいようにしたり、スプリント中の問題を検知し柔軟に対応することはありましたが、3本柱として意識はしていませんでした。
改めて、この3本柱が実現できているからこそ、スプリントイベントおよびスクラム自体が機能するということを学べたので、これまで以上に意識して実践し、より良いスクラムにしていけるのではと感じています。
森山
直近の案件でスクラム開発に従事してはいたのですが、実はスクラムガイドを読み通したのは、今回の読書会が初めてでした。
読書会を進めていく中で、スクラムの考え方への理解が少しずつ深まっていくのを実感できました。 また、メンバーそれぞれの考え方や、各自の案件での体験に基づいた意見交換ができたことも、非常に有意義な時間となりました。
スクラムガイドは一度読んで終わりではなく、定期的に読み直す必要があると感じています。今後も迷ったときにはガイドに立ち返り、学びを深めていきたいです。
最後に、このような素敵な読書会を企画してくださった宮本さんに感謝申し上げます。
香取
私自身スクラム開発の現場に参加したことがなく、読書会に参加する前はイメージがつきづらい部分が多くありましたが、スクラムガイドを読みながら実際の現場での具体例を聞くことができたので、リアルにイメージしながら理解を深めることができました。
実際の現場でもすぐに理想的なスクラムを実現できるわけではなく、日々試行錯誤をしながら改善に取り組んでいることを知り、スクラムは初めから完璧を目指すものではなく、継続的な改善のフレームワークであることを実感しました。
読書会を通じて、ウォーターフォールとの違いを明確に理解することができました。特に、各スプリントバックログの進捗管理など、開発者も主体性を持って活動しないとそもそもスクラムという体制自体が成り立たなくなるという点は大きな学びでした。
また、レトロスペクティブの目的や観点について、問題ベースで「何がうまくいったか、どのような問題が発生したか、そしてそれらの問題がどのように解決されたか」という観点で振り返ることの重要性を知り、今後の案件の振り返りにも活かせそうだと感じました。
折戸
スクラムガイドはプロジェクトのオンボーディングで概要レベルでインプットした程度で、実際にプロジェクトを進めながらなんとなく理解していたつもりでした。 改めて読書会で噛み砕いてみると、実務のプロジェクトとの差分を確認しながら理解することができたので学びが多かったです。 一方で、日本語約版ではピンとこないキーワード(ex. 委員会、踏み石)や周りくどい表現がいくつかあったので、NotebookLMを利用してなんとか理解することはできましたが、 他のスクラムプロジェクトも経験して別の視点で理解を深めていきたいとも思いました。
また、読書会の時間内ではスクラムの構造を頭の中に落とし込みきれなかったので、 全体の構造を図に起こしながらより解像度を上げれるような目的の輪読会形式もやってみたいと思いました。
個別のトピックとしては、完成の定義を意識してプロジェクトに臨めていないことが一番の学びでした。 プロダクトバックログ/スプリントバックログの個別タスクに「集中」するあまり、全体としての「確約」の意識が薄れているということを認識できたので、 スクラムチームとしての「透明性」のために定期的に「検査」をして「適応」させることが重要だと思いました。
遠藤
スクラム開発には従事していましたが、スクラムガイドについては目を通した程度でしっかりと読み通したことはありませんでした。
約一年間スクラム開発を経験して改めて読んでみると、経験と結びつけて考えることができたり、これからのスクラムチーム発展に活かせる内容がたくさんあった印象です。
また、読み進めていく中で独特なキーワード(透明性・インクリメント…etc)が多数登場するので、それらについてどんな意味合いが含まれているかを考察するのも読書会の中で楽しくできました。
他のメンバーにも是非おすすめしたい読書会だと思いました。今回企画いただいた宮本さんに感謝しています、ありがとうございました!
宮本
読書会を通じて、スクラムを構成する各要素は経験主義の三本柱である「透明性」「検査」「適応」のサイクルを回すためにあるということを理解することができました。
また、完成の定義は存在していても意識して検査を行わないと形骸化しがちなこと、PBI に担当者を置くと「まずは自分のタスクを済ませてから...」という動きになり、チーム全体の透明性が損なわれる可能性があることなど、実務に直結する気づきも多くありました。
スクラムガイドの文章量自体は少ないため、簡単に終わるイメージで考えていましたが、ディスカッションに意外と時間を要しました。これは良い意味で誤算で、ディスカッションでより理解が深まることや、普段一緒に業務をしていないメンバーとの交流を深めるという意味でも非常に有意義でした。
個人的にはこの読書会だけでは理解が十分ではなく、定期的に読み返して気づきを実践するサイクルを回していきたいです。
理解度クイズの結果
実施前後で各自実施した 初心者向けスクラム理解度クイズ(30点満点) の結果です。全体的に点数の向上が見られました。
| 実施前点数 | 実施後点数 |
|---|---|
| 22 | 26 |
| 20 | 26 |
| 11 | 21 |
| 15 | 21 |
| 29 | - |
| 16 | 22 |
| 18 | 22 |
| - | - |
| 19 | 20 |
※ - は未実施
まとめ
読書会という形式で、異なるプロジェクトの経験を持つメンバーと一緒に読み進めたことで、一人で読んでいては気がつかなかった解釈や実体験に基づく視点を得ることができ、有意義な時間でした。
スクラムは継続的な改善のフレームワークであるように、スクラムガイドも一度読んで終わりではなく、定期的に立ち返るべきものだと改めて感じています。今回の読書会をきっかけに、社内でスクラムについて理解する文化を少しずつ育てていけたらと思います。
同じような課題感をお持ちの方はぜひ試してみてください。