
re:Inventでは、AWSの周辺エコノミーを支えているサードパーティの展示会「EXPO」を、隅々まで探索してきました。
やはり昨今はAIを活用したサービスが多かった印象です。少し前まで「人間のアシストをするコパイロット的な役割」でAIを活用していたフェーズだったのが、今や「AIをベースにしたAIネイティブなサービス」へと、時代が移っているのを如実に感じました。
本当に数が多いので、こちらではFinOps関連で気になったサービスを紹介していきます。
【Archera】RI/SPの『年縛り』リスクを消滅させるコスト削減の"保険"サービス
Archeraは、「クラウドの割引購入(RIやSavings Plans)に『保険』をかけることで、購入リスクをゼロにし、柔軟に安く使えるようにするサービス」 で、最大の特徴は、通常1年〜3年の長期契約が必要な割引プランを、最短30日単位で利用可能にする独自の仕組みを持っている点です。

課題: AWSやAzureで大幅な割引(RIやSavings Plans)を受けるには、「1年」または「3年」の使用を約束(コミット)する必要があります。しかし、「途中でサーバーが不要になったらどうしよう?」というリスクがあります。
解決策: 「30日間」のような短い期間でも、長期契約並みの割引率を適用できるプランを提供します。
仕組み: もし使用量が減ってコミットメントが余ってしまっても、Archeraがそのリスクをカバー(保険で保護)してくれるため、ユーザーはペナルティや無駄な支払いを恐れずに割引枠を購入できます。
AWS、Azure、Google Cloudのコストや使用状況を分析するほか、AIを使って将来の使用量を予測し、最適な割引購入プラン(RI/SPの購入計画)を自動で立案してくれます。大企業向けのAWSエンタープライズ契約(EDP/PPA)において、約束した使用金額に届かなかった場合(ショートフォール)の不足分を補償する保険サービスも提供しているようです。削減額の一部を徴収する成果報酬型ではなく、プラットフォーム自体は無料で使えて、30日単位のRI等を購入する際に少額の保険料が上乗せされる仕組みでした。
【ProsperOps】RI/SPの売買・交換をAIで全自動化
通常、AWSのコスト削減には「1年」や「3年」のRI/SPが必要ですが、これを人間が管理するのではなく、ProsperOpsがAIで自動管理します。

- 割引プランの完全自動管理
- リアルタイム売買: クラウドの使用状況を常に監視し、必要な分だけRI(リザーブドインスタンス)やSavings Plansを購入し、不要になったら自動的に売却または交換します。
- 柔軟性の確保: 「3年契約」のようなガチガチの縛りを避け、変動する使用量に合わせて柔軟にカバー率(割引適用率)を最大化します。
- 成果報酬型の料金モデル
- 初期費用なし、ツールの利用料は固定ではなく、ProsperOpsを導入して「実際に削減できた金額」の一部(Savings Share) を手数料として支払うモデルです。(削減できた金額の5〜20%程度)
- つまり、「安くならなければ支払いはゼロ」 という、ユーザーにとってリスクの低い料金体系になっています。
RI/SPを扱う点で「Archera」と似ているように思いますが、アプローチはまったく異なっていて、こちらは一度設定すれば後はAIが処理してくれる分散投資型です。AWSだけでなくAzureやGoogle Cloudなども含めたマルチクラウド環境で、RIの売り買いや計算が複雑すぎて、人間では追いつかない規模のケースに向いているサービスと言えます。
【Amnic】自然言語でコスト分析
Amnic は、クラウドコスト管理を効率化するための FinOpsプラットフォームで、「Amnic AI」という独自AIエージェントを活用している点が大きな特徴です。自然言語(チャット形式)で指示を出すだけで、コスト分析やレポート作成、異常検知の調査などをAIが代行してくれます。

- 主な機能
- X-Ray: 約30秒でクラウドコストの健全性を診断。
- Insights & Reporting: 財務、エンジニア、経営層など、見る人に合わせたレポートや洞察を数秒で自動生成。
- Governance (ガバナンス): コスト急増(異常)の検知、予算管理、タグ付けルールの強制など。
- Cost Optimization (コスト最適化): リソースの無駄を省くための具体的な推奨事項を提示。
従来のツールは、綺麗なグラフが表示されたダッシュボードを人間が読み解く必要がありましたが、「先月のEC2コストが上がった原因は?」「CFO向けのレポートを作って」といった具合に、自然言語でチャットで頼むだけで、AIが分析・作成・回答してくれます。 単なる可視化ツールではなく、AIが自律的に動いて、「異常検知からレポート作成まで、ルーチンワークは全てAIが自動でやり、人間は『意思決定』だけに集中できる」というのが、このサービスの特徴でした。
【Attribute】タグ付け不要でコスト配分を実現
クラウドコストの管理と最適化を行うための FinOpsツールです。最大の特徴は、AWSなどのクラウドリソースに対して 手動でタグ付け(Tagging)を行わなくても、タグなし(Tagless)でコストを正確に把握・配分できる 点にあります。

- タグ付け不要のコスト可視化:
- 通常、クラウドのコスト管理にはリソースごとの細かい「タグ付け」作業が必要ですが、Attributeはランタイムデータ(稼働状況)を分析することで、自動的にワークロードごとのコストを特定します。
- ユニットエコノミクス(単位あたりの収益性)の分析:
- 単なる「今月の請求額」だけでなく、「顧客ごと」「機能ごと」のコストを算出できます。これにより、どの顧客や機能が利益を出しているか(または赤字か)といったビジネス判断に必要なインサイトが得られます。
- 共有リソースのコスト配分:
- Kubernetesなどのコンテナ環境やデータベースなど、複数のチームや顧客で共有しているリソース(マルチテナント環境)についても、誰がどれくらい使ったかに基づいてコストを自動配分できます。
- クエリレベルのコスト追跡:
- 個々のクエリやAPIコール単位でのコストまで可視化することが可能です。
タグ付けなし(Tagless)で正確なコスト把握・配分を実現できる主な理由は、独自の「eBPFセンサー」技術を活用して、アプリケーションの実際の動き(ランタイムデータ)を直接監視・解析しているからで、従来の「タグ付け」がリソースに貼られた静的なラベルに依存するのに対し、Attributeはシステムが動いているその瞬間のデータの流れを追跡 します。
eBPFはOSのカーネル上で実行され、システム内部の通信パケットや処理リクエストを詳細に観測することで、誰が(どのアプリケーションやコンテナが)、いつ、どのリソースにアクセスしたかという情報を、タグに頼らず自動的に収集するそうです。完全にタグ付けから解放されるのであれば興味深いところです。
【CloudZero】エンジニアをクラウドコスト管理から解放
CloudZero (クラウドゼロ) は、エンジニアリング主導でクラウドコストを管理・最適化するための FinOpsというのが特徴で、従来のファイナンス部門向けのツールとは異なり、「エンジニアが開発の意思決定としてコストを扱えるようにする」ことを重視しているのが他には無いユニークな発想と言えます。

- ユニットエコノミクス(単位あたりの収益性)の分析:
- 「顧客1人あたり」「機能1つあたり」「製品1つあたり」といったビジネスに直結する単位(ユニットコスト)でコストを正確に算出できるのが特徴。これにより、「この新機能は利益が出ているか?」「この顧客は赤字ではないか?」といった判断が可能になります。
- タグ付けに依存しないコスト配分:
- AWSなどのタグが不完全でも、コードベースのアプローチ(Infrastructure as Codeのような定義)でコストを柔軟かつ正確に整理・配分できます。タグ付けの不備に悩まされることなく、すぐに分析を始められます。
- エンジニアへの権限委譲:
- エンジニアが自分の書いたコードやアーキテクチャがコストにどう影響するかをリアルタイムで理解できるように設計されています。異常検知機能により、コストが急増した際に即座にエンジニアに通知し、無駄な出費を未然に防ぎます。
- あらゆるコストを一元管理 (AnyCost API):
- AWS, Azure, GCPといった主要クラウドだけでなく、Snowflake, Datadog, MongoDB, KubernetesなどのSaaSやプラットフォームのコストも統合して、一つの画面で管理できます。
こちらのサービスも、タグ付け不要のコスト配分を謳っていました。
Attributeが実測ベースだったのに対し、こちらは、コードベースでの仮想タグ付け機構を取っているようです。具体的には「アカウントIDが 123... なら『Aチーム』」「リソース名に prod が含まれていたら『本番環境』」といったルールをコードで定義します。IaC のようにコスト定義をコード管理する、という何ともエンジニアらしい発想だなと思いました。
【Xosphere】スポットインスタンスの自動活用
Spotインスタンスは格安(定価の最大90%OFF)で利用できますが、AWSの都合で突然強制終了される(2分前に通知)というリスクがあり、使いこなすのが難しいのが欠点です。Xosphereは、スポットインスタンスをオンデマンドインスタンスと同じくらい、安全かつ簡単に使えるようにして、サーバー代を最大80%安くする自動化ツールです。

- 仕組み
- Spotインスタンスが中断されそうになると、自動的に別のSpotインスタンスやオンデマンドインスタンスに瞬時に切り替えます。
- ユーザーからは「普通のサーバー(オンデマンド)」を使っているように見えますが、裏側では安いSpotインスタンスに次々と乗り換えることで、アプリケーションを停止させることなく激安価格を実現します。
- メンテナンスフリー
- 既存のAuto Scaling Group (ASG) にタグを付けるだけで動作を開始します。複雑な設定変更やコードの書き換えは不要
- 一度設定すれば、あとは勝手にコスト削減を続けてくれるため、エンジニアが日々監視する必要がありません
競合製品(Spot.ioなど)と似ていますが、より「シンプルさ」「導入の容易さ」に特化している印象です。
Xosphere と Spot.io はどちらも「AWSのスポットインスタンスを活用してコストを下げる」という目的は同じですが、Spot.ioは、AWS標準の「Auto Scaling Group (ASG)」を利用せず独自の「Elastigroup」という仕組みに移行する必要がありますが、XosphereはASGをそのまま利用するため、構成変更や移行作業がほぼ不要となり導入ハードルが低いのが特徴と言えます。
さいごに
似たようなサービスでも、アプローチが異なっているものを比較してみると面白い発見がありました。
FinOpsの領域は、AIの活用自体はまだ発展途上の印象ですので、今後AIによってどれだけ周辺サービスが進化していくのか注目していきたいところです。