こんにちは。エンタープライズクラウド部 磯谷です。
現地ラスベガスでre:Inventに参加した振返り記事です。
現地時間の12/2(月) 10:00~11:00に参加した以下のセッションについて言及しております。 AWS re:Invent 2024 - Replatforming for reinvention: Modernizing mainframes at Goldman Sachs (FSI312)
セッションの概要
世界有数の金融機関ゴールドマンサックス - Goldman Sachs 様が多く抱えているメインフレーム資産のモダナイズについてのセッション
前提
- Invest Oneというベンダー謹製のプラットフォームを利用しており、メインフレームの60%のリソースを割り当てている
- 自前のCOBOLオーケストレーションツールを構築して利用しており、メインフレームの40%のリソースを割り当てている
- 過去30年間に渡り、構築・カスタムしてきた現在は20名のエンジニアで保守している
課題
- ベンダーがメインフレームをサポートしなくなった
- インフラ費用がハイコスト
- メインフレーム以外とのアプリケーション統合が複雑
- メインフレームのスキル保持者を探すのが難しい
- ビジネス成長にあわせた水平スケールに限界
- COBOLからモダンアプリケーションへの変換が難しい
モダナイズアプローチについて
以下のようなモダナイズアプローチに対してそれぞれ検討し判断を下しています。
アプローチ | 検討サマリー | 検討結果 |
---|---|---|
COBOLのリライト | ターゲットとなる状態が定義されていない限り推奨しない。暫定的にパフォーマンスの高いソリューションが必要。 | しない |
メインフレームでのCOBOL最適化 | 既存システムが単一のCICS領域を実行する設計。同じコンピュート、メモリ、ディスクで実行される制約がある。 | しない |
メインフレーム以外での別プラットフォーム移行 | 自身の要求分析とベンダー更新の可能性で多大なろ応力がかかる。 | しない |
AWSでの実行エミュレータ | ミッションクリティカルのため、制限なくスケールしたい。オンプレではオーバーサイシングせざるを得ない。 | 採用 |
AWS移行後のメインフレームコンポーネントの扱い
AWS EC2上のエミュレータ上でそのまま稼働させるもの
- COBOLとJCL
- VSAMファイル
- データセット
エミュレートせずAWSサービスに置き換えるもの
- RDBMS(Db2)
- AutoScalingは新規採用
AWS移行後のコスト割合
- EBSが約60%
- RDSが約30%
- EC2が約10%
AWS移行後のIaCについて
- CDKで実装するが、災害対策を見据えてAWS上から独立したCI/CDパイプラインを構築する
所管
最新のクラウドのイベントに行ってメインフレームのセッションに参加してしまいました。過去にメインフレームエンジニアだったことから、やはりメインフレームが役目を終える瞬間を見届けたいという気持ちが私の根底にあります。
事例の中で興味深かったのが「COBOLのリファクタリングを選択せずEC2上でのエミュレートを選択した」という点です。 確かに、COBOLリファクタリングにかかるエンジニアリングとそれ以外の労力を考えればエミュレートが一番現実的だと感じました。そうすることで移行検証のテストにだけ集中できるからです。 移行ツールがAmazon Q Developerを含めて充実してきていますが、実際の現場ではエンジニアリング領域以外での労力が大きいのでエミュレート選択もよいアプローチと感じました。
あとはAWS利用料金もEBSが大半、というのはメインフレーム特有かもしれません。 メインフレームのファイルに該当するデータセットやVSAMファイルも結局はEBS上で扱われることになるので納得です。
巨大な金融企業での事例なので、メインフレームの移行に悩まれているお客様には生きた素材としてかなり有意義なセッションでした。
※ちなみに翌日の基調講演でAmazon Q Developer: Transformが発表されましたがIBMのz/OSだけが対象でした。
メインフレームにご興味があればこちらもどうぞ。
磯谷 洋輔(いそや ようすけ)(執筆記事の一覧)
エンタープライズクラウド部 ソリューションアーキテクト1課
AWSをがんばってます。2024Japan AWS All Certifications Engineer