はじめに
こんにちは。SA課の阿部です。
配属されてからは、オンプレのファイルサーバーをAWSに移行する案件を中心に携わっています。
今回、初めてAmazon FSx for NetApp ONTAPの設計・構築を担当することになり、 「まずはFSx for NetApp ONTAPってなんだ?」について自分なりに調べてみました
そこで、調べた内容を初心者目線でざっくり整理して、同じようにクラウド移行に関わる人の参考になればと思い、この記事にまとめました。
そもそもNetApp ONTAPとは
まず前提として、「Amazon FSx for NetApp ONTAP」は、NetApp社のストレージOSであるONTAPをAWSでそのままマネージドに使えるサービスです。
では、そのONTAPとは何か?というと…
- NetApp社が提供するエンタープライズ向けのストレージOS
- オンプレミスのストレージアプライアンス(FASシリーズなど)で長年使われてきた実績あり
- NFSやSMB、iSCSIなど、複数のプロトコルに対応
- スナップショット、レプリケーション、重複排除、圧縮などの高機能を備えている
という特徴があります。
より詳しい内容は、以下のNetApp公式ブログを参照してください。
Amazon FSx for NetApp ONTAPの全体像
ONTAPの全体像を掴むためには、以下の要素を理解すればOKです。
- ファイルシステム
- SVM
- ボリューム(プライマリストレージ、容量プールストレージ)

「ファイルシステム」がAWS環境全体のリソースとして存在し、その中で独立した「SVM」がファイルサーバーの役割を果たし、「ボリューム」が実際にデータを格納する場所、といったイメージとなります。
一つずつ見ていきましょう。
ファイルシステム
ONTAP全体のストレージ領域を管理する親玉です。 オンプレのONTAPクラスタに相当するものです。
SVM
「Storage Virtual Machine」の略で、1つ以上のボリュームを持って構成されるファイルサーバーのようなものです。
ファイルシステムという基盤の上に、複数のSVMを構成することが可能で、各SVM毎に独立したサーバーとして扱うことができます。
ボリューム
ONTAPにおけるデータが格納されているコンテナのようなものです。
ボリュームには、主に以下の2種類のストレージ階層があります。
プライマリストレージ(SSD層)
頻繁にアクセスされるデータが保管される場所です。 ONTAP構築時に設定するIOPSやスループットは、このプライマリストレージのパフォーマンスを指しています。 ストレージ容量はあとから拡張ができますが、縮小することはできないので、慎重にサイジングする必要があります。
容量プールストレージ(オブジェクトストレージ層:キャパシティプールストレージともいう)
低頻度アクセスデータが保管される場所です。 こちらはサイズの拡大・縮小ともに可能です。
特徴
FSx for NetApp ONTAPは、その柔軟性と高機能性により、様々なニーズに対応できる多くの特徴を備えています。 ここでは、3つの特徴について解説します。
幅広い接続性
多様なクライアントからのアクセスをサポートするために、複数のプロトコルに対応しています。 オンプレミス環境で長年利用されてきたNFSやSMBに加え、iSCSIプロトコルもサポートしており、 Windows、Linux、macOSなどの主要なOSからのファイル共有や、データベースサーバーなどのブロックストレージとしての利用もできます。
豊富な運用管理手段
GUIベースのNetApp System Managerによる直感的な操作はもちろん、CLIやREST APIによる管理も可能です。 また、スナップショットによる任意の時点への高速な復旧、データ重複排除や圧縮によるストレージ効率の向上、異なるAZへのデータレプリケーションによる高可用性など、エンタープライズ環境で求められる高度なデータ管理機能を利用できます。
ストレージの階層化
FSx for NetApp ONTAPでは、パフォーマンス特性の異なる2つのストレージ階層(プライマリストレージと容量プールストレージ)を活用できます。 階層化ポリシーを設定することで、頻繁にアクセスされるデータは高性能なSSDで構成されるプライマリストレージに、アクセス頻度の低いデータは安価なオブジェクトストレージで構成される容量プールストレージに自動的に最適配置されます。 これにより、高いコスト効率とパフォーマンスを両立しています。

他ストレージサービスとの比較
項目 | FSx for ONTAP | FSx for Win F/S | EFS | S3 |
---|---|---|---|---|
プロトコル | NFS,SMB,iSCSI | SMB | NFS | REST API |
性能 | 高速、高スループット | SMB用途に最適化 | 可変、共有リソース | オブジェクト単位 |
データ削減 | あり(圧縮・重複排除) | なし | なし | なし |
スナップショット | ONTAP標準搭載 | Windows VSS | EFS Backupが別途必要 | バージョニングで代替 |
管理機能 | ボリューム管理、レプリケーション、QoS | Windowsネイティブ共有 | 単一ファイルシステム | オブジェクト単位 |
コスト感 | 中〜高(構成に依存) | 中 | 高(従量課金+バースト) | 低(※) |
※S3はもっとも安価なオプションだが、ファイルストレージとしての機能(NFS/SMB等)は持たないため、用途が限定される。
料金について
FSx for NetApp ONTAPは多機能であるがゆえ、課金要素も複雑です。
大まかに3つの料金区分に分けて考えると良いと思います。
プロビジョンド料金項目
料金項目 | 単価(マルチAZ) | 単価(シングルAZ) | 備考 |
---|---|---|---|
SSDストレージ容量 | $0.3/GB月 | $0.15/GB月 | 高性能な標準ストレージ |
スループットキャパシティ | $1.511/Mbps月 | $0.906/Mbps月 | 最低8Mbpsから選択 |
SSD IOPS[オプション] | $0.0408/IOPS月 | $0.0204/IOPS月 | 高IO性能を必要とする場合に追加指定可能 |
従量料金項目
料金項目 | 単価(マルチAZ) | 単価(シングルAZ) | 備考 |
---|---|---|---|
容量プールストレージ使用容量 | $0.0476/GB月 | $0.0238/GB月 | 容量単価は安価 |
読み込みリクエスト | $0.0004/1,000リクエスト | $0.0004/1,000リクエスト | 頻繁な読み込みには注意 |
書き込みリクエスト | $0.0047/1,000リクエスト | $0.0047/1,000リクエスト | 書き込み中心のワークロードに注意 |
共通料金項目(オプション)
料金項目 | 単価 | 備考 |
---|---|---|
バックアップストレージ | $0.050/GB月 | 自動スナップショットやAWS Backupで発生 |
※最新価格はホームページを参照

おわりに
いかがでしたか?
今回はFSx for NetApp ONTAPの概要についてざっくりまとめてみました。
ONTAPについて何もしらなかったという人でも、なんとなく概要は掴めたのではないでしょうか。
次回は、FSx for NetApp ONTAPを更に深堀りしてご紹介したいと思います。
この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。
阿部伊織(執筆記事の一覧)
インフラエンジニアからクラウドエンジニアへ転職。