はじめに
Amazon AppStream2.0は仮想デスクトップサービスですが、Amazon WorkSpaceとは異なりユーザーが作成した書類などのデータを保存するユーザーボリュームは提供されない非永続環境です。毎回クリーンな環境が提供され安全ではありますが、デスクトップアプリを利用するにあたり、まったくデータを保存せず利用するということは少ないでしょう。
この記事では、AppStreamにおいてユーザーが作成したデータを永続化したい時の選択肢について示します。
データの保存箇所について
結論として、ユーザーが作成したデータを保存する方法は、以下の4つがあります。
- ホームフォルダー
- Google Drive
- OneDrive
- ファイルサーバー
それぞれ向き不向きがありますので、要件に応じて選択する必要があります。
ホームフォルダー
ホームフォルダーはS3とファイルを同期する方式です。バケットの作成や同期処理などはAppStreamが管理してくれるので、最も手軽に利用できる方式です。
ですが、ファイルの同期に時間がかかるため、大きなファイルや頻繁にファイルを変更する作業には向いていません。手軽な反面、軽い作業以外には向かない方式です。わかりづらい表現ではありますが、計算集約型アプリケーションに関連するファイルとディレクトリに詳細の記載があります。
Google Drive / OneDrive
Google DriveとOneDriveについては、企業向けのGoogle Workspace/Microsoft 365に含まれているクラウドストレージを連携して利用できる方式です。
こちらもホームフォルダーと同じく、AppStreamから設定することが可能です。
ファイルサーバー
ファイルサーバーの利用は、自由度が高くカバーできる利用範囲も広い方法です。FSx for Windowsなどを利用してAWS内にファイルサーバーを構築し、ユーザーの環境にマウントさせます。よくあるファイルサーバーですね。
AppStreamはドメインにも参加できるので、FSx for Windowsもドメインに参加させて、部門別の共有領域をマウントさせるなどの設定も柔軟に行うことが可能です。
柔軟な反面、ドメインコントローラーの構築やアクティブディレクトリーに関する知識が必要になってくるので、導入のハードルは高めとなっています。
その他の方法
書類や画像といったファイルを保存しながら作業する用途には向きませんが、AppStreamにはファイルを保存する機能としては他にもオプションがあるので、以下の3つを紹介します。
- ファイルのダウンロード
- クライアントの領域を共有する
- アプリケーション設定の永続化
ファイルのダウンロードについて
AppStream内のファイルをダウンロードする機能です。必要に応じて都度ファイルをダウンロードする必要があります。それを許容できるのであればデータの永続化方法の選択肢にはなるのではないでしょうか。
クライアントの領域を共有する
USBリダイレクト、ファイルシステムリダイレクトなどと呼ばれる機能です。USBドライブやローカルのフォルダーをAppStreamに接続しすることが可能です。ただし、インターネット経由でデータをやり取りすることになるので、レイテンシーやスループットの影響を受けやすいので注意が必要です。
いずれの機能もクライアントがWindowsのみとなっている点も注意です。
アプリケーション設定の永続化
ユーザーのデータを保存しているフォルダーである C:\Users\example_user
を永続化する機能です。ただし、デスクトップフォルダーやダウンロードフォルダーなどについては除外されていることに注意です。名前の通り設定を永続化するための機能です。
アプリケーションの設定ファイルは、C:\Users\example_user
以下に作成されるAppData
フォルダーやレジストリーに保存されるので、それらを永続化することによりアプリケーションの設定が永続化されることになります。ブラウザーのブックマークなどもこの領域に保存されていることが多いかと思います。
この領域はVHDとしてS3に保存され、AppStreamが開始されるとユーザーのインスタンスにマウントされるようになっています。
AppStreamのオプションとして有効にすると利用できるようになります。
最後に
利用用途にもよりますが、柔軟性や大容量・アクセス頻度が高いファイルにも対応できるファイルーサーバーを利用する必要が多いのでは無いでしょうか。要件に合わせて、それぞれの方法を選択してください。
石田順一(記事一覧)
カスタマーサクセス部