Amazon Connect に限らず、コールセンター運用にあたり外線転送時の仕組みと仕様を理解しておくことは重要です。
転送先に意図しない番号が表示されていた とか 受付可能オペレーターがいるのに着信しなくなった 等のトラブルを防ぐためにも外線転送時の注意点についてまとめてみました。
想定する読者
- コールセンターへの問い合わせに対して外線転送を利用および検討している方
転送の仕組み
外線転送のイメージ図です。
それぞれの番号の役割は以下の通りです。
- 090CDEFGHJK : 大元の発信者 (携帯番号)
- 03BCDEFGHJ : コールセンター (東京の固定電話番号)
- 06BCDEFGHJ : 転送先 (大阪の固定電話番号)
図中では、オペレーターが転送している感じになっていますが、PBX 内のコールフローで外線転送かける場合も基本は同じとお考えください。

ところで、何故電話番号にアルファベットを使っているのか
私が作成するブログでは、電話番号を現すのにアルファベットを使っています。電話 番号 なのに何故アルファベット使うのかについて、ちょっとだけ説明しておきます。
電話番号は正しくは 電気通信番号 と言い、総務省が管理し電気通信事業者に割り当てている識別番号になります。
固定電話番号では、0ABCDEFGHJ という番号体系となっているため、略して 0ABJ番号と言われることもあります。この場合、ABCDE の部分が電気通信事業者に指定され、FGHJ の部分は電気通信事業者が契約者(利用者)へ割り当てを行っています。
仮定として全て番号で表記しても良いのですが、下記の理由から番号そのものを使わず現しています。
- 特定の電気通信事業者を示すことになる可能性がある
- 実際に利用されている番号になる可能性がある
転送後の通信パス
転送完了後、コールセンター側(03BCDEFGHJ) は通話終了となり、発信者(090CDEFGHJK) と 転送先(06BCDEFGHJ) が直接通話することとなるため、下図の赤線のようになっていると思われがちですが、実際のところは、以下 2つの通信パスを PBX がブリッジして音声を届けている状態となります。
- 元々の通話 : 発信者 (090CDEFGHJK) - コールセンター (03BCDEFGHJ) 間 (青線)
- 転送発信呼 : コールセンター (03BCDEFGHJ) - 転送先 (06BCDEFGHJ) 間 (緑線)

オペレーターを介する場合、転送完了によって以下の処理が PBX によって同時に行われます。
- コールセンター と 転送先 の通話を終了する
- 発信者 と コールセンター の通話を終了する
- 発信者の保留を解除し、元々の通話 と 転送発信呼 を繋げる
転送後の課金について
前項のように通話パスは 2つに分かれているため、課金も以下のようになります。
- 元々の通話 : 発信者に課金
- 転送発信呼 : コールセンターに課金

転送呼の発信者番号通知について
転送先には大元の発信者の音声が届くことになりますが、転送先に着信する呼はコールセンターから発信された呼となります。そのため、転送先の着信呼で通知される発信者番号通知はコールセンターの番号となります。

補足: 日本では、発信に利用する電話回線で契約している電話番号以外は通知することが出来ません。(フリーダイヤル等で特定番号通知サービスを利用する場合、0120/0800/0570番号を表示させることは可能です。)
外線転送後の回線消費について
外線転送中は 元々の通話 と 転送発信呼 で 2つの通話が発生することとなります。
視点を変えてみる下図のようになります。

回線キャパシティ 6 に対し、3つの着信呼を全て外線転送している状況となります。 この場合、オンプレミスでは 以下のような挙動となります。
- 7本目の着信は、回線に空きがないため、キャリア側で Busy が返される。
- 6 呼中のいずれかが終了しない限り、オペレーターが受付可能でも新規に着信しない。
Amazon Connect では、物理回線単位ではなく Service Quotas によって各インスタンスの同時通話最大数が定められますが、ドキュメントにも記載があるとおり 外部転送呼はカウントされません。
問い合わせのカウント方法
次のコンタクトは、[インスタンスあたりのアクティブな同時呼び出しの数] にカウントされます。
- フローで処理される
- キューで待機中
- エージェントによって処理される
- 発信通話
以下の問い合わせはカウントされません。
- コールバックキューで待機しているコールバックは、利用可能なエージェントにコールバックが提供されるまでカウントされません。
- 外部転送
電話番号への転送 ブロック と CCP 経由 を利用した 2パターンで外線転送を確認してみました。
- 電話番号への転送 ブロック : ConcurrentCalls は 1 のまま推移 (16:16 - 16:26)
- 元々の通話分の 1 Call だけが計上され、外線転送分は計上されず
- CCP 経由 : CCP に着信 - CCP からクイック接続 - 三者通話 - CCP から切断し転送完了 - 転送呼切断 の過程において、一定して ConcurrentCalls は 1 のまま推移 (16:33 - 16:42)
- CCP からの転送発信呼は計上されず

注意事項
Amazon Connect で通知出来る番号はインスタンスに払い出された番号のみ
Amazon Connect はクラウドサービスのため、物理回線は共有されています。
そのため、通知可能な番号は各インスタンスに払い出された番号が対象となります。
アウトバウンド発信者 ID 番号 発信者 ID 番号として使用できるのは、取得した電話番号または Amazon Connect に移行した電話番号のみです。
まとめ
- 転送完了後の通話パスは 着信呼 と 発信呼 が PBX内でブリッジされている。
- 通話料金も、着信呼 と 発信呼 でそれぞれ発生する。
- 転送先に表示される発信者番号通知に、大元の発信者の番号は表示できない。
- オンプレミス環境では、外線転送のための発信呼で回線が 1つ消費される。
- Amazon Connect では、外線転送のための発信呼はインスタンスの同時通話数にカウントされない。
おわりに
外線転送の仕組みと仕様についてまとめてみました。
コールセンターで各種外部サービスを利用するために外線転送にて呼を転送することもあるかと思います。
意図しない挙動があった場合には、このような仕組みや仕様が原因となっていないか参考にしていただけますと幸いです。