AWS re:Invent 2021 で発表された S3 のアップデートまとめ コスト削減関係

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営業部 佐竹です。
本ブログは「AWS re:Invent 2021 で発表された S3 のアップデートまとめ」と題しまして、Amazon S3 のリリースをまとめました。

はじめに

先日、AWS re:Invent 2021 で発表された新しい EC2 インスタンスタイプのまとめ記事を以下の通り記載しました。

blog.serverworks.co.jp

この記事に引き続き、今回は Amazon S3 のアップデートをまとめた記事となります。

S3 のアップデートは数が多いため「コスト削減関係」と「セキュリティ関係」で2つの記事に分けてのご紹介となります。

それでは「コスト削減関係」のまとめをご紹介します。

コスト関係のアップデート

3つのストレージクラスで最大 31% の値引き

aws.amazon.com

3つのストレージクラスで値下げが発表されました。値下げされたのは以下の通りです。

  1. S3 Standard-Infrequent Access(S3標準 低頻度アクセス)
  2. S3 One Zone-Infrequent Access(S3 1 ゾーン 低頻度アクセス)
  3. Amazon S3 Glacier Flexible Retrieval(旧 S3 Glacier)

残念ながら S3 Standard (標準) は値下げされていません。

対象リージョンは低頻度アクセスが9つのリージョンで、Glacier は全リージョンです。各リージョンの値下げ率は以下の通りです。東京リージョンと大阪リージョンは 27% の値下げとなります。

S3 Standard-Infrequent Access

AWS Region 新価格 値下げ率
アジアパシフィック (シンガポール) $.0138 31%
アジアパシフィック (東京) $.0138 27%
アジアパシフィック (大阪) $.0138 27%
アジアパシフィック (シドニー) $.0138 27%
アジアパシフィック (ムンバイ) $.0138 27%
米国西部 (北カリフォルニア) $.0144 24%
アジアパシフィック (香港) $.0138 23%
アジアパシフィック (ソウル) $.0138 23%
南米 (サンパウロ) $.0221 15%

※AWS公式ブログの表を一部改変

S3 One Zone-Infrequent Access

AWS Region 新価格 値下げ率
アジアパシフィック (シンガポール) $0.0110 31%
アジアパシフィック (東京) $0.0110 27%
アジアパシフィック (大阪) $0.0110 27%
アジアパシフィック (シドニー) $0.0110 27%
アジアパシフィック (ムンバイ) $0.0110 27%
米国西部 (北カリフォルニア) $0.0115 24%
アジアパシフィック (香港) $0.0110 23%
アジアパシフィック (ソウル) $0.0110 23%
南米 (サンパウロ) $0.0177 15%

Amazon S3 Glacier Flexible Retrieval

全リージョンで 10% の値引きが行われました。一覧表は割愛します。

東京リージョン及び大阪リージョンでは、$0.005/GB が $0.0045/GB へと値下げされています。

Amazon S3 Glacier の名称変更と 10% の値引き、一括取り出しの無料化

aws.amazon.com

先に紹介した記事と一部重複した内容のアップデートですが、Amazon S3 Glacier ストレージクラスが Amazon S3 Glacier Flexible Retrieval という名称に変更され、10% の料金値下げに加えて一括取り出し(Bulk retrieval)が無料になりました。

今まで Glacier に保存したオブジェクトを S3 へと取り出す時には常にコストが発生していましたが、最も安価であったバルク取り出しが無料となったことでより使いやすさが増したと感じます。

新機能

Glacier の新しいストレージクラス Glacier Instant Retrieval 発表

aws.amazon.com

新しいストレージクラスとして Glacier Instant Retrieval が発表されました。このリリースを受け、既存の Glacier は Glacier Flexible Retrieval と名称が変更されています。これにより、選択可能なアーカイブストレージクラスは、Instant Retrieval、Flexible Retrieval、そして Deep Archive の3つになりました。

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S3 のマネジメントコンソール において、Glacier Instant Retrieval が3つの中で一番上に位置していることからもわかる通り、アーカイブストレージクラスの中で最も取り出しやすいのが特徴です。ようは、アーカイブされている深さが「浅い」というイメージです。

ストレージの利用料は、$0.005/GB となっており、これは値下げ前の Glacier と同料金です。

3つの Glacier の使い分けは凡そ以下の通りです。

  1. Instant Retrieval: 四半期に1回程度の取り出しに最適化。ミリ秒以内にデータを使用可能とする取り出しが可能。保存にかかるコストは $0.005/GB
  2. Flexible Retrieval: 1年に1-2回程度の取り出しに最適化。取り出しにかかる時間は1分から12時間で、5~12時間で完了する一括取り出しが無料となった。保存にかかるコストは $0.0045/GB
  3. Deep Archive: 利用することが1年に1度もないが保存しておく必要のあるデータに最適な最も低コストのストレージクラス。取り出しにかかる時間は12時間~48時間。保存にかかるコストは $0.002/GB

個人的には、取り出しが無料になった「Flexible Retrieval」が一押しです。

S3 Intelligent-Tiering に Archive Instant Access ティアが追加

aws.amazon.com

Glacier Instant Retrieval のリリースを受け、S3 Intelligent-Tiering にもアップデートが入りました。よって、S3 Intelligent-Tiering のティアは5階層になります。

Tier Name 有効化 補足
Frequent Access tier 自動 S3 標準と同等のストレージクラス
Infrequent Access tier 自動 30日間連続してアクセスされない場合にそのオブジェクトを本ティアへ移動する
Archive Instant Access tier 自動 今回追加された Glacier Instant Retrieval が利用されるティアで、90日間アクセスがない場合に本ティアへ移動する
Archive Access tier オプション 最低90日間から設定でき、最大730日間まで延長可能。90日間で有効化した場合は Instant Access tier をバイパスする。
Glacier Flexible Retrieval と同等
Deep Archive Access tier オプション 最低180日間から設定でき、最大730日間まで延長可能。
指定日数連続してアクセスされない場合にそのオブジェクトを本ティアへ移動する。S3 Glacier Deep Archive と同等

注目したいポイントは、自動で Archive Instant Access tier までが有効になったことで、これにより最大 68% のコスト削減効果が期待できます。これが自動に含まれた理由は Archive Instant Access tier の復元がミリ秒で可能だからでしょう。

S3 Intelligent-Tiering では取り出し料金は発生しませんので、Archive Instant Access tier を活用したい場合はそれを選択して使用するより、S3 Intelligent-Tiering 利用時のコスト削減効果として恩恵にあずかるというのが主な使い方になるのかもしれません。

補足ですが、アーカイブストレージクラスを効果的に利用するには、ある程度オブジェクトサイズが必要なため、小さいファイルが大量にあるような場合は集めて圧縮して保存する必要があります

これは S3 Intelligent-Tiering の対象となるオブジェクトの最小サイズが 128 KB であることからもわかります。オブジェクトのサイズが 128 KB 未満の場合、そのオブジェクトは監視されず、自動階層化の対象にはなりません。 128 KB より小さいオブジェクトは常に Frequent Access tier に維持されます。

まとめ

AWS re:Invent 2021 で発表された S3 のアップデートまとめとして、まずはコスト削減関係のアップデートを集めてご紹介させて頂きました。

コスト削減関係のまとめは以下の通りです。

  1. S3 Standard-Infrequent Access (S3標準 低頻度アクセス) が東京リージョンで 27% 値引き
  2. S3 One Zone-Infrequent Access (S3 1 ゾーン 低頻度アクセス) が東京リージョンで 27% 値引き
  3. S3 Glacier が S3 Glacier Flexible Retrieval への名称変更と全リージョンで 10% 値引き
  4. S3 Glacier Flexible Retrieval のバルク取り出し (Bulk retrieval) が無料に
  5. アーカイブストレージクラスに S3 Glacier Instant Retrieval の機能追加
  6. S3 Intelligent-Tiering に Archive Instant Access ティアが追加され、自動的な有効化の対象に

セキュリティ関係のアップデートは以下になります。是非、合わせてご覧ください。

blog.serverworks.co.jp

以上、よろしくお願いいたします。

佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ

マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。