みなさん、こんにちは。AWS CLI が好きなテクニカルサポート課の市野です。
先日まで、主に RDS for MySQL 5.7 系の EOS に際し、RDS 延長サポートのご案内をしておりましたが、公式ブログ、および、公式ドキュメントに更新があり、取り扱い方針が大きく変更となりましたので、あらためてブログ記事として投稿いたします。
私が執筆した以下のブログは内容が古くなっており、本記事の内容が最新であるため、本記事に転送しています。
- Amazon RDS for MySQL での MySQL 5.7 系の終了と延長サポートの取り扱いについて
- 【続報】Amazon RDS for MySQL での MySQL 5.7 系の終了と延長サポートの取り扱いについて
また、本エントリ執筆時(2023年12月26日)以降、AWS からの新たな公式発表があれば、すべて公式案内を優先いたします。
ご利用の DB インスタンスに求める可用性に応じて、適宜、公式ドキュメントや通知のご確認をいただけますと幸いでございます。
クリックで目次が表示されます。
先に結論:何が変わったか
2023年10月末の AWS 通知やドキュメントでの発表では、本年12月より順次、RDS 延長サポートにオプトインすることができる、となっていました。
それが、今回の方針変更により、利用者による明示的なオプトインではなく、AWS による一律かつ自動的な延長サポートの適用に変更となりました。
公式文書での発表
公式ドキュメント
公式ブログ
マイナーバージョンごとの RDS 標準サポート終了までのタイムライン
RDS for MySQL
最新の情報は、AWS 公式ドキュメントの記載を優先します。
また、本ブログでは、直近で影響を受ける MySQL 5.7 系に対象を絞って抜粋しております。
MySQL engine version | Community release date | RDS release date | RDS end of standard support date |
---|---|---|---|
5.7 | |||
5.7.44* | 25 October 2023 | 2 November 2023 | 29 February 2024 |
5.7.43 | 18 July 2023 | 9 August 2023 | 29 February 2024 |
5.7.42 | 18 April 2023 | 15 June 2023 | 16 January 2024 |
5.7.41 | 17 January 2023 | 7 February 2023 | 16 January 2024 |
5.7.40 | 11 October 2022 | 11 November 2022 | 16 January 2024 |
5.7.39 | 26 July 2022 | 29 September 2022 | 16 January 2024 |
5.7.38 | 26 April 2022 | 6 June 2022 | 16 January 2024 |
5.7.37 | 18 January 2022 | 11 March 2022 | 16 January 2024 |
RDS for PostgreSQL
最新の情報は、AWS 公式ドキュメントの記載を優先します。
また、本ブログでは、直近で影響を受ける PostgreSQL 11 系に対象を絞って抜粋しております。
なお、公式ドキュメント の注釈部分に「Dates with only a month and a year are approximate and are updated with an exact date when it's known.(当方での和訳:月と年のみの日付はおおよその日付であり、正確な日付が判明次第、更新されます。)」と記載の通り、マイナーバージョン 11.21 および 11.22 については、2024年2月とのみ記載されていることにご留意ください。
正式なサポート終了日付は、公式ドキュメントの更新を適宜ご確認ください。
PostgreSQL minor engine version | Community release date | RDS release date | RDS end of standard support date |
---|---|---|---|
11 | |||
11.22* | 09 November 2023 | 17 November 2023 | February 2024 |
11.21 | 10 August 2023 | 24 August 2023 | February 2024 |
11.20 | 11 May 2023 | 25 May 2023 | 16 January 2024 |
11.19 | 09 February 2023 | 07 March 2023 | 16 January 2024 |
11.18 | 10 November 2022 | 24 January 2023 | 16 January 2024 |
11.17 | 11 August 2022 | 18 November 2022 | 16 January 2024 |
11.16 | 12 May 2022 | 04 August 2022 | 16 January 2024 |
各 DB エンジンごとの RDS 延長サポートについて
各 DB エンジンごとの共通点
RDS for MySQL、RDS for PostgreSQL の DB エンジンの差によらず共通して言えることは、RDS 延長サポートは RDS 標準サポート終了時点での最新のマイナーバージョンのみが適用対象となる点となります。
RDS for MySQL であれば 5.7.44、RDS for PostgreSQL であれば 11.22 が RDS 延長サポートの適用対象となる点にご留意ください。
RDS for MySQL
MySQL major version | Community release date | RDS release date | Community end of life date | RDS end of standard support date | RDS start of Extended Support year 1 pricing date | RDS start of Extended Support year 3 pricing date | RDS end of Extended Support date |
---|---|---|---|---|---|---|---|
MySQL 5.7 | 21 October 2015 | 22 February 2016 | October 2023 | 29 February 2024 | 1 March 2024 | 1 March 2026 | 28 February 2027 |
RDS for PostgreSQL
公式ドキュメントの注釈部分に記載のある通り、本記事執筆時点では、RDS for PostgreSQL の RDS 延長サポートの適用タイミングは 2024年3月1日 ではあるものの、費用発生タイミングは、2024 年 4 月 1 日 となる予定です。
RDS Extended Support for PostgreSQL 11 starts on March 1, 2024, but will not be charged until April 1, 2024. Between March 1 and March 31, all PostgreSQL version 11 DB instances and clusters on RDS are covered under RDS Extended Support.
(当方による和訳)
PostgreSQL 11 の RDS 延長サポートは 2024 年 3 月 1 日に開始されますが、2024 年 4 月 1 日までは料金は発生しません。 3 月 1 日から 3 月 31 日までの間、RDS 上のすべての PostgreSQL バージョン 11 DB インスタンスとクラスターは RDS 延長サポートの対象になります。)」
PostgreSQL major version | Community release date | RDS release date | Community end of life date | RDS end of standard support date | RDS start of Extended Support year 1 pricing | RDS start of Extended Support year 3 pricing | RDS end of Extended Support date |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PostgreSQL 11 | 18 October 2018 | 13 March 2019 | 9 November 2023 | 29 February 2024 | 1 April 2024 | 1 April 2026 | 31 March 2027 |
なお、RDS for PostgreSQL のみ RDS 延長サポートの費用発生タイミングが異なる観点から、以下の re:Post 記事の公開もございます。
該当の re:Post 記事ではあくまで RDS 延長サポートの費用発生の回避の観点 で書かれているため、RDS for PostgreSQL のみマイナーバージョンアップグレードの適用期限が 2024年3月31日 まで猶予されていることを示唆するものではございませんのでご留意ください。
推奨されるアクション
今回の RDS 延長サポートの扱いの変更により、AWS による自動での延長サポートの適用と、自動での延長サポート適用バージョンへの自動アップグレードが行われることになります。
2024年1月16日、または 2024年2月29日 に RDS 標準サポートの終了を迎える各 DB エンジンマイナーバージョンをお使いだった場合、延長サポートの適用対象のマイナーバージョンでなかった場合、自動的に延長サポートの適用バージョン(RDS for MySQL であれば 5.7.44、RDS for PostgreSQL であれば 11.22 にアップグレードされることとなります。)
ドキュメントでの確認、および、AWS サポートへの問い合わせによる回答より、この自動アップグレードは「自動マイナーアップグレード」機能の有効化の有無によらず適用され、また、メンテナンスウインドウのタイミングによらず AWS の任意のタイミングに実行されます。
また、RDS 標準サポート終了から、RDS 延長サポート適用対象バージョンへのアップグレードが完了するまでの期間にずれが生じた場合、バグフィックスが受けられない期間が発生する点にもご注意が必要です。
そのため、AWS の任意のタイミングによるエンジンバージョンアップグレードによる意図しない再起動を回避する、あるいは、バグフィックスが受けられない期間の発生を回避するためには、RDS 標準サポート終了日以前のお客様のご都合の良いタイミングで、RDS 延長サポート適用対象バージョンに明示的にアップグレードいただくことが必要となります。
各エンジンバージョンごとの早見表
DB エンジン | マイナーバージョン | RDS標準サポート終了日 | 影響 |
---|---|---|---|
MySQL | 5.7.37、5.7.38、5.7.39、5.7.40、5.7.41、5.7.42 | 2024年1月16日 | 2024年1月17日以降、任意のタイミングで当該バージョンの稼働があった場合、自動的に 5.7.44 へのバージョンアップが発生する |
MySQL | 5.7.43 | 2024年2月29日 | 2024年3月1日以降、任意のタイミングで当該バージョンの稼働があった場合、自動的に 5.7.44 へのバージョンアップが発生する |
PostgreSQL | 11.16、11.17、11.18、11.19、11.20、 | 2024年1月16日 | 2024年1月17日以降、任意のタイミングで当該バージョンの稼働あった場合、自動的に 11.22 へのバージョンアップが発生する |
PostgreSQL | 11.21 | 2024年2月29日[1] | 2024年3月1日以降、任意のタイミングで当該バージョンの稼働があった場合、自動的に 11.22 へのバージョンアップが発生する |
よくあるご質問
Q. AWS による自動マイナーアップグレードのタイミングを事前に知ることができるか
AWS での任意のタイミングでの実施となり、事前の通知はないものとお考えください。
本ブログ記事本文にも記載いたしましたが、意図しない再起動の発生を回避するには、RDS 標準サポート終了日以前のお客様のご都合の良いタイミングで、RDS 延長サポート適用対象バージョンに明示的にアップグレードいただくことを推奨いたします。
Q. AWS による自動マイナーアップグレードの適用(RDS 延長サポートへの自動移行)を受け入れた場合の影響
RDS 標準サポート終了日時点で、DB インスタンスのマイナーバージョンが RDS 延長サポート適用バージョンであるか否かにより挙動が異なります。
DB インスタンスのマイナーバージョンが、RDS 延長サポートの適用バージョンでなかった場合、RDS 標準サポートの終了日以降、AWS の任意のタイミングで RDS 延長サポート適用バージョンへのアップグレードが行われます。
また、この自動での RDS 延長サポート適用については、メンテナンスウインドウ期間に行われない可能性もあり、お客様にとっては意図しない再起動が発生する可能性があるものとご認識ください。
Q. RDS 延長サポート適用による費用発生を回避するにはどうしたら良いか
RDS 延長サポートの発表当初より案内のあった通り、コミュニティ EOL エンジンのセキュリティと機能を維持するためのエンジニアリング作業において、AWS が重要な CVE パッチやバグ修正に開発者リソースを投資する必要があるため、時間あたり vCPU ごとに料金がかかります。
この RDS 延長サポートの費用発生を回避するには、「RDS 延長サポート適用バージョンで稼働する DB インスタンスをすべて停止する」あるいは、「RDS 標準サポートが適用されるメジャーバージョンへの移行」を行い、RDS 延長サポートの適用対象バージョンで稼働する DB インスタンスがお客様の AWS アカウント内で存在しない状況とする必要があります。
各 DB エンジンごとの RDS 延長サポートの費用についての説明は以下をご覧ください。
- Amazon RDS Extended Support costs(RDS for MySQL)
- Amazon RDS Extended Support costs(RDS for PostgreSQL)
まとめ
冒頭述べた通り、RDS 延長サポートの取り扱いについて、方針が大きく変更されました。
今回の RDS for MySQL 5.7系、あるいは RDS for PostgreSQL 11系の EOS のタイミングにおいて稼働中のシステムにおける次期メジャーバージョンへの移行時の影響が未確認のまま、自動的にメジャーバージョンアップされてしまうという状況の回避ができるものの、RDS 延長サポートの適用対象となる DB エンジンマイナーバージョンが設定されているため、対象のマイナーバージョンでなかった場合には、自動的な RDS 延長サポートの適用による意図しない再起動の発生やダウンタイムの発生は考えられる状況です。
そのため、当初から RDS 延長サポートの適用を受けるご予定だった場合でも、今一度稼働中の DB インスタンスが利用しているマイナーバージョンのご確認と、自動適用によるダウンタイムの発生が許容できるかのご確認は必要となります。
今回、初めて登場した RDS 延長サポートですが、何度かブログでの案内をしたように扱いが二転三転しました。
執筆時点での最新情報をまとめた記事となりますが、AWS の公式文書での案内が優先される点にご留意いただき、必要に応じて適宜最新情報をご確認いただけますと幸いでございます。
また、本件に関わらず、AWS からの情報配信は英語版ドキュメントが常に優先される点にもご留意ください。本記事中でも英語版ドキュメントの URL の記載を心がけましたが、お客様の環境において、AWS ドキュメントの言語設定を日本語としていた場合、かつ、日本語版ドキュメントが存在していた場合に、日本語版ドキュメントへの転送が発生しますのでご留意ください。
クリスマスも終わり年末モードまっしぐらですが、本記事が本 EOS の影響を受けるリソースをお持ちのお客様のお役に立てば幸いです。
ではまた。
- Release calendar for Amazon RDS for PostgreSQL minor versions では "February 2024" となっている点はご留意ください↩
市野 和明 (記事一覧)
マネージドサービス部・テクニカルサポート課
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