CI部 佐竹です。
本日は、RDS for Oracle の r5 に追加されたメモリ強化インスタンスクラスのアップデートについて記載します。
- Oracle におけるライセンスとコア数の関係
- RDS for Oracle r5 インスタンスクラスのアップデート
- 利用方法
- 利用料金について
- RDS for Oracle r5 スペック&料金一覧表
- BYOL モデルでのみ利用可能
- まとめ
Oracle におけるライセンスとコア数の関係
Oracle には Processor ライセンスというライセンス形態があります。これは搭載されているプロセッサ = CPU の数によって費用が変わるライセンスです。つまり、vCPU が2つのサーバで Oracle を動作させる場合と、vCPU が4つのサーバで動作させる場合で、必要なプロセッサライセンス数が異なります。
そして、AWS の EC2 インスタンスや RDS DB インスタンスでは、メモリは vCPU とセットで増えていきます。
モデル | コアカウント | vCPU | メモリ (GiB) |
---|---|---|---|
db.r5.large | 1 | 2 | 16 |
db.r5.xlarge | 2 | 4 | 32 |
db.r5.2xlarge | 4 | 8 | 64 |
db.r5.4xlarge | 8 | 16 | 128 |
db.r5.8xlarge | 16 | 32 | 256 |
db.r5.12xlarge | 24 | 48 | 384 |
db.r5.16xlarge | 32 | 64 | 512 |
db.r5.24xlarge | 48 | 96 | 768 |
例えば現在 db.r5.2xlarge を利用しており、メモリが 64 GiB です。RDS の利用者が増え、メモリが不足し、対応としてインスタンスクラスの変更を検討している状況だとしましょう。db.r5.4xlarge へ変更すると 128 GiB になりますが、問題はコアカウントの増加です。メモリを増やしたいだけなのに、プロセッサの数まで増えてしまいます。プロセッサの数が増えると、ライセンス数を増やす必要があります。
このように、既存のインスタンスクラスのセットはプロセッサライセンス形態とはうまくかみ合っていないと言えます(※ X1e
を利用するという手もありますが r5 にフォーカスした話として記載します)。
今回はそのような状況にお困りであった方に朗報となるアップデートです。インスタンスクラスの変更でメモリだけを増やせるようになりました。
RDS for Oracle r5 インスタンスクラスのアップデート
以下が AWS 公式 のリリース告知です。
このリリースを受け、以下のドキュメント(英語版)にも加筆がされています。
db.r5.4xlarge.tpc2.mem2x
という表記が増えています。以下にこの表記の意味するところを記載します。
- db.r5.4xlarge – これはインスタンスクラスの名称です
- tpc2 – threads per core を省略し、tpcと記載されます。2 という数字の意味は、multithreading が有効化されていることを示しています。この値が1の場合は、hyperthreading が無効化されています
- mem2x – これは、元のインスタンスクラスに対する追加の比 (レシオ)を示します。この例の場合、通常の db.r5.4xlarge instance に加えて、2倍のメモリが追加されていることがわかります
利用方法
RDS のマネジメントコンソールで選択が可能です。「DB instance class」の選択項目において、「Memory optimized classes (includes r and x classes)」を選択した後、追加された「Include additional memory configurations」を有効にすると tpc2.mem2x
等メモリ増強版のインスタンスクラスが選択可能となります。
なお、既存のRDSにおいてインスタンスクラスを変更する場合には再起動が発生する点にご留意ください。
利用料金について
利用料は以下に掲載されています。
「メモリを倍にする」と、時間あたりの利用料が「元のインスタンスクラスの倍となる」計算ロジックです。4倍ですと、利用料も4倍です。
RDS for Oracle r5 スペック&料金一覧表
わかりやすい一覧がなかったので、一覧表としてスペックと利用料まとめました。リージョンは東京リージョンの利用料金となります。なお、大阪リージョンも同額です。
モデル | コアカウント | vCPU | メモリ (GiB) | 料金/h |
---|---|---|---|---|
db.r5.large | 1 | 2 | 16 | 0.277USD |
db.r5.large.tpc1.mem2x | 1 | 2 | 32 | 0.554USD |
db.r5.xlarge | 2 | 4 | 32 | 0.554USD |
db.r5.xlarge.tpc2.mem2x | 2 | 4 | 64 | 1.108USD |
db.r5.xlarge.tpc2.mem4x | 2 | 4 | 128 | 2.216USD |
db.r5.2xlarge | 4 | 8 | 64 | 1.108USD |
db.r5.2xlarge.tpc1.mem2x | 4 | 8 | 128 | 2.216USD |
db.r5.2xlarge.tpc2.mem4x | 4 | 8 | 256 | 4.432USD |
db.r5.2xlarge.tpc2.mem8x | 4 | 8 | 512 | 8.864USD |
db.r5.4xlarge | 8 | 16 | 128 | 2.216USD |
db.r5.4xlarge.tpc2.mem2x | 8 | 16 | 256 | 4.432USD |
db.r5.4xlarge.tpc2.mem3x | 8 | 16 | 384 | 6.648USD |
db.r5.4xlarge.tpc2.mem4x | 8 | 16 | 512 | 8.864USD |
db.r5.6xlarge.tpc2.mem4x | 12 | 24 | 768 | 13.296USD |
db.r5.8xlarge | 16 | 32 | 256 | 4.432USD |
db.r5.8xlarge.tpc2.mem3x | 16 | 32 | 768 | 13.296USD |
db.r5.12xlarge | 24 | 48 | 384 | 6.648USD |
db.r5.12xlarge.tpc2.mem2x | 24 | 48 | 768 | 13.296USD |
db.r5.16xlarge | 32 | 64 | 512 | 8.864USD |
db.r5.24xlarge | 48 | 96 | 768 | 13.296USD |
ピックアップしてみてみると db.r5.6xlarge.tpc2.mem4x
と、db.r5.8xlarge.tpc2.mem3x
と、db.r5.12xlarge.tpc2.mem2x
は利用料が同額で、メモリの容量も同数です。しかし vCPU数/コア数は違います。「同額支払うのであればコア数は多いほうが良いのでは?」という話もありますが、前述した通り Oracle のライセンス形態はプロセッサライセンスです。 コア数が減っていたほうが、ライセンスの総額が下げられるため、コア数は据え置きとしておきたいニーズがあるわけです。
db.r5.6xlarge
先のリストで興味深いのは db.r5.6xlarge.tpc2.mem4x
です。db.r5.6xlarge はリストに存在しないのですが、本表記で初めて登場しました。そのため、db.r5.6xlarge のスペックは不明ですが、レシオから換算するに 192 GiB のメモリを持つと考えられます。
BYOL モデルでのみ利用可能
残念なことに、このオプションが提供されているのは以下のエディション×ライセンスモデルのみです。
- Enterprise Edition (EE) × Bring Your Own License (BYOL)
- Standard Edition 2 (SE2) × Bring Your Own License (BYOL)
これらの2つのみで、 Standard Edition 2 (SE2) × License Included
では提供されておりません。よって、ライセンス込みモデルをご利用されているユーザ様にはお使い頂けません。
※今回のアップデートは、BYOL 時にプロセッサライセンスで困っていたユーザ向けの機能追加と想定されますので、ターゲットが BYOL モデルのみになっていると想定しています
まとめ
本記事では、RDS for Oracle の r5 に追加されたメモリ強化インスタンスクラスに関するアップデートをご紹介しました。
また、スペックと利用料の一覧表も独自に用意しました。BYOL モデルでのみ利用可能であり、プロセッサライセンスでお困りであった方には朗報となる機能です。例えば、メモリのために仕方なくインスタンスクラスを増強されていた方は、vCPU の数が少ないインスタンスクラスに変更することで、メモリはそのままに Oracle のライセンス費用を削減できる可能性があります。つまり、Oracle のライセンスという観点となりますが、コスト削減に役立つアップデートでもあります。
AWS がこの辺りの「痒いところに手が届く」アップデートをしてくるとはさすがだと思いました。これからも RDS for Oracle のアップデートには注目したいです。
2021年6月30日 追記 RI について
新しいインスタンスクラスのリザーブドインスタンスは現在 AWS 側で準備中とのことで、既存の(tpc2.mem2xなどが付いていない)RI とは別扱いになる予定であるとのことです。この点はコスト削減においてご注意ください。
ではまたお会いしましょう。
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。