「第56回オープンCAE勉強会@関東(流体など)」に参加し、やはり流体力学はおもしろいと思った話

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2015年4月に入社した白鳥です。約1年間の新人研修が終わり、今年3月から技術2課に本配属となりました。よろしくお願いします。

入社して1年もたつと、自分が入社前に何をしていたのか、だんだん忘れ始めてしまいます。最近では「ナビエ-ストークス方程式?なにそれ?おいしいの?」「DNS? ああ、名前解決のことか。え、直接数値計算のことなの?なにそれ?おいし(ry」といった状態になりつつありました。そんな中、平林純先生のtweetにて、オープンCAE勉強会なるものが定期的に開催されていると知り、このたび参加してみました。

OpenCAEとは?

製造業において、製品の設計や、製造プロセスの設計をコンピュータを用いて行うことをCAE(Computer Aided Engineering, 計算機支援工学)と呼びます。設計図をかくためのCADや、設計時のコンピュータシミュレーションがこれに含まれます。従来、CAEでは高価な専用ソフトウェアが使われてきましたが、近年ではオープンソースのソフトウェアが提供されています。このようなオープンソースを使ったCAEがOpenCAEと呼ばれています。代表的なソフトウェアとして

  • OpenFOAM 流体シミュレーション
  • FreeCAD その名のとおりCAD
  • ParaView シミュレーション結果の可視化

などがあります。今回の勉強会は「流体など」と銘打っていることもあり、OpenFOAMが話題の中心でした。

従来CAEは、ソフトウェアにもそれを動かすサーバも高価だったため、大企業や研究所など、手の届く機関が限られていました。それが今では、ソフトウェアはOpenCAEを活用し、サーバはクラウドを時間貸しで使うことで、中小企業や個人でも手の届くものになってきていると感じます。その意味で、OepnCAEとクラウドは相性が良さそうです。

先に一部ネタバレさせておくと、今回の勉強会の動画はこちらで公開されています。

勉強会に行ってみた

会場

今回の勉強会は、日本イーエスアイ株式会社様の会議室にて行われました。新宿の都庁の近くで、アクセスが便利でした。かつ、新宿中央公園に隣接しており、周辺は穏やかな雰囲気でした。

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日本イーエスアイ様が入居している新宿グリーンタワービル

プログラム

勉強会のプログラムは以下の通りでした

  • hirax.net」主宰の平林純氏による特別講演会
  • オープンCAE勉強会についての説明
  • 初参加のメンバーによる自己紹介
  • レギュラーメンバーからの話題提供

平林純氏による特別講演会

今回特別講演会でお話をされた平林氏は、身近な現象に対し科学的なアプローチを駆使して現象の予測・解説などを行っている方です。テレビのバラエティ番組にて科学実験の監修・解説を行うなど、幅広く活躍されています。今回の講演では、空気砲が生み出す流れのシミュレーションや、秋葉原の風のシミュレーションの事例をご紹介いただきました。特に空気砲のシミュレーションは、中に仕込んだマイクと連動させ、空気を放つとほぼ同時にシミュレーション結果が表示されるという構成で、興味を持ちました。

オープンCAE勉強会についての説明

続いて、オープンCAE勉強会主催者のTHINK氏より、このオープンCAE勉強会についての説明がありました。勉強会が立ち上がってからの経緯や、日頃の活動内容の紹介がありました。私が気になったのは、通常の勉強会の活動として「数値流体力学」の輪講を行っているという点です。この本はかなり内容の濃い専門書なので、流体力学を忘れつつある私には良い刺激になりそうです。ただ、輪講で自分が説明する側になった際は、役目を果たせるか不安ではあります f(;´Д`)

初参加のメンバーによる自己紹介

今回、オープンCAE勉強会に初参加の人は私を含め8名でした。その8名より、自己紹介がありました。時間配分的には、この自己紹介が今回の勉強会のメインイベントとなっていました。各自、簡単に所属などを紹介するとともに、どのようにOpenCAEを活用してるか(活用しようとしているか)について話しました。OpenFOAMを研究に使っている研究者の方や学生さんが、自身の研究を紹介し、それについてディスカッションするケースが多かったです。研究のディスカッションの場に参加するのは久しぶりだったので、良い刺激となりました。また、AWSに興味をお持ちの参加者の方もいらっしゃったので、今後、OpenCAEのAWSでの活用を開拓していきたいです。

レギュラーメンバーからの話題提供

最後に、この勉強会によく出席されている参加者の方3名より、話題提供がありました。話題は様々で「OpenFOAMの標準ソルバ人気ランキング」「FMI1.0 for Model Exchangeの概要」といったOpenCAEに関するものから、「江戸しぐさの教科書掲載について」という全く異なる話題まで幅広かったです。私はOpenFOAMを使い始めたばかりで、どのようなソルバが使えるのか把握できていなかったので、ランキング形式で大枠をつかめたのは有益でした。

感想

このたびのオープンCAE勉強会では、久しぶりに流体力学に触れ、研究のディスカッションの雰囲気も体験でき、楽しい時間を過ごすことができました。また、企業や研究機関においてだけでなく、個人でOpenCAEを使っている参加者の方もおり、クラウド + OpenCAE の需要はありそうだと感じました。一方「大規模計算を行う場合は、AWSより他のクラウドの方が使いやすい」との意見もいただいたので、「AWSならではのOpenCAEの使い方」も探っていきたいです。AWS上でOpenFOAMを使う利点として、AWS IoT, API Gatewayと組み合わせることで、センサー類と連動させやすいことが挙げられます。この辺りの利点を活かした構成を実現できれば、「空気砲内のマイクで拾った値を境界条件として、リアルタイムにシミュレーションを起動させる」「秋葉原に風向きセンサーを設置し、風向きが急変したらシミュレーションを開始する」などもできるかもしれないので、妄想が膨らみます。