カスタマーサクセス部 佐竹です。
本日は、S3 Intelligent-Tiering を利用した実際のコスト削減効果をご紹介します。
はじめに
以前、以下のブログで「S3 Intelligent-Tiering」に新しく追加された機能「Archive Instant Access ティア」について記載しました。
この機能は、S3 Intelligent-Tiering の「自動」では今まで移動できなかった「アーカイブ層」へ、長期間利用していなかったオブジェクトを移動させることが可能となる機能で、最大 68% のコスト削減効果が期待できます。
現在、S3 Intelligent-Tiering で自動的に移動が行われる階層は、以下の3階層です。
Tier Name | 有効化 | 補足 |
---|---|---|
Frequent Access tier | 自動 | S3 標準と同等のストレージクラス |
Infrequent Access tier | 自動 | 30日間連続してアクセスされない場合にそのオブジェクトを本ティアへ移動する |
Archive Instant Access tier | 自動 | Glacier Instant Retrieval が利用されるティアで、90日間アクセスがない場合に本ティアへ移動する |
今回、このうちの「Archive Instant Access tier」を有効活用し、CUR のコスト削減に成功しましたためその実例をご紹介します。
CUR の保存にかかる費用について
CUR は 「AWS Cost and Usage Reports」の略称で、AWS 利用料の詳細な明細データを S3 バケットに出力する機能です。
この機能は、AWS の利用においてほぼ必須と言える機能となっていますが、我々のようなリセラーではこの CUR によって S3 へと出力される明細が大量になるため、S3 における利用料「TimedStorage-ByteHrs」が気付くと想定以上の金額になっていました。
上の画面キャプチャは、CUR のための S3 バケットのみを保持する AWS アカウントにおける、S3 利用料の増加傾向を Cost Explorer で確認した時のものです。この通り、日に日に利用料が増加しており、2021年11月末には毎日 $20 を超える費用となっていました。このままでは、CUR に年間100万円以上支払うことになってしまいます。
この費用を先にご紹介しました「S3 Intelligent-Tiering」を有効活用し、コスト削減に成功しましたので実際にどの程度削減できたのかご紹介します。
S3 Intelligent-Tiering のコスト削減効果
S3 Intelligent-Tiering は先に表でご紹介した通り、自動的に3つのティアに移動させるものです。
① Frequent Access tier への移動
「S3 Intelligent-Tiering」を設定し、オブジェクトが最初に移動するのは「APN1-TimedStorage-INT-FA-ByteHrs」の費用で表される「Frequent Access tier」です。INT-FA は「Intelligent-Tiering-Frequent Access」を省略したものとなっています。
Frequent Access tier の費用は S3 のスタンダードのコスト「APN1-TimedStorage-ByteHrs」と同額です。このキャプチャで費用が下がっているように見えるのは、「S3 Intelligent-Tiering」の設定と同時に不要な S3 オブジェクトも消したことによるものです。
② Infrequent Access tier への移動
「Frequent Access tier」へと移動したオブジェクトは、30日間アクセスがない場合に「APN1-TimedStorage-INT-IA-ByteHrs」の費用で表される「Infrequent Access tier」へと移動します。INT-IA は「Intelligent-Tiering-Infrequent Access」を省略したものです。
設定から30日後、全体の90%のオブジェクトがこのティアへと移動しました。そして、Frequent Access tier の費用は S3 のスタンダードのコストと比較するとおおよそ40%減額されます。この段階で、およそ40%のコスト削減に成功しています。
③ Archive Instant Access tier への移動
そして re:Invent 2021 で追加された新機能「Archive Instant Access tier」への移動です。
「Frequent Access tier」へと移動したオブジェクトは、さらに60日間アクセスがない場合、つまり合計90日間アクセスがない場合に「APN1-TimedStorage-INT-AIA-ByteHrs」の費用で表される「Archive Instant Access tier」へと移動します。INT-AIA は「Intelligent-Tiering-Archive Instant Access」を省略したものです。
設定から90日後、全体の90%のオブジェクトがこのティアへと移動が完了しました。これにより、S3 の利用料はおおよそ70%削減されています。
具体的には、Frequent Access tier の29日目である「2022年2月23日」は $21.05/day の利用料でした。90日後の「2022年4月25日」は $6.35/day まで減額されており、1日あたり $14.7 のコスト削減効果がありました。これを年間(365日間)の削減効果に換算すると、365倍して $5365.5 になります。これは日本円換算で65万~70万円程度の削減効果になります。
このように S3 Intelligent-Tiering は自動的に移動するティアへ「Archive Instant Access tier」が追加されたことにより、より効果的に S3 のコスト最適化が可能になりました。
まとめ
本日は、S3 Intelligent-Tiering を利用した実際のコスト削減効果を Cost Explorer の画面キャプチャと共にご紹介しました。
特に、最近追加された Archive Instant Access tier によるコスト削減効果により、S3 バケットに出力される CUR の利用料が約70%圧縮されました。
このような利用料は「塵も積もれば山となる」と言われる費用の代表的なものでしょう。初期は微々たる費用だったものだったとしても、年月が経つにつれ段々と費用が増加してしまいます。
このようなことがないよう「S3 Intelligent-Tiering」等を適切に設定されることを推奨します。また、S3 の費用の調査においては以下でご紹介しました「Amazon S3 Storage Lens」も併用し、S3 のコストを最適化頂ければ幸いです。
では、またお会いしましょう
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。