「量子コンピューティングに手を出すなら今?」なのか "Is now the right time to explore quantum computing?" を見て考えた

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こんにちは、サービス開発課の小倉です。普段は自社サービスであるCloud Automatorの開発をしています。

現在オンラインで開催中のAWS re:Invent 2020ですが、私は門外漢にもかかわらず興味本位でIs now the right time to explore quantum computing?という量子コンピューティングのセッション(以下、本セッション)を視聴してしまいました。

漁師のいらすと
これは漁師

タイトルからもわかるように「量子コンピューティングに手を出そうかどうか迷っているひとの背中を押す」ような内容で意外とハードルは高くなかったので、どんな雰囲気なのかご紹介します。

セッションタイトル Is now the right time to explore quantum computing?(re:Invent 2020にサインインするとこちらのリンクからセッション概要のページが見れます。)
スピーカー Grant Salton AWS Speaker

セッションの最初のスライド

今回、私がこのセッションを選んだ理由は、

  1. 量子コンピューティングはまだまだこれからの技術なので、知ったことが無駄にならず長持ちしそう
  2. 量子ガチ勢以外はみんながふわっとしか理解していないのでツッコミを受けづらそう
  3. 入門ということで話が抽象的なため、ブログ記事にまとめる力量が問われてやりがいがありそう

という後ろ向きなような前向きなようなものです。とくに3点目がチャレンジだったのですが「漁師のいらすと」を発見した時点でいい記事が書けそうな気がしました。

本セッションは「量子コンピューティングに手を出すなら今なの?」という疑問に答えるものなのですが、AWS的な結論はみなさんおわかりだと思うので本記事ではあえて触れることはしません。ぜひAWS re:Inventで実際のセッションをご覧ください!

👀 面白いセッションなの?

みなさんの、

英語だし量子コンピューティングだしハードル高そう。そもそも面白いセッションなの?

という声が聞こえてくるようです。セッションが面白いかどうかはひとそれぞれですが、予備知識はあまり要りませんでした。

QUBOに関する数式
突然の数式

油断していると上のような数式が出てきて「うおっ!!」となったりしますが、数式はこれ1つしか出てこなかったので「あ〜、QUBOね。名前がかわいいよね」と流しても大丈夫です。

そのほかにも、

  • 量子アニーリングと量子ゲートの2方式があるとか
  • 計算結果は確率的なものになるとか
  • とにかく冷却を頑張らないといけないとか
  • スピン?テレポーテーション?
  • QUBO?NISQ?

といったあたりも知らなくて大丈夫。

以下の2点だけ踏まえておけばよいです。

  • とにかく新しい技術である
  • 現時点では未知のことも多い技術である

私もそんな感じでしたが、セッション視聴後の個人的な印象はこうでした。

レーダーチャート

Braketとは、量子アルゴリズムをシミュレーターまたはD-Wave/IonQ/Rigettiのハードウェア上で実行することができるAWSのマネージドサービスです。

👌「やっぱりね」だったところは?

予想どおりだったのは、「まだまだ検証ステージ、PoC(Proof of Concept)プロジェクトの段階である」という言及でした。

TodayとTomorrow

今日(こんにち)のAWS的な量子コンピューティングは以下のようなステージとのことです。

  • Design and test solutions
    • どんなことができるのか探索していく
  • Run hybrid classical/quantum workflows
    • 従来のコンピューティングとのハイブリッドで動かす(次項で触れます)
  • Small Proof of Concept projects
    • 小さめのPoCプロジェクトをやっていく
  • Push boundaries of classical methods
    • 従来のコンピューティングの限界を押し上げていく
  • Potential NISQ applications?
    • 近い将来に実現可能なレベルの量子コンピューター(NISQ)では、誤り(ノイズ)の影響が不可避だが、それでも実用になるようなアプリケーションの可能性を探していく

誤りを訂正して正確な量子計算の結果が得られる(Full, fault tolerant quantum computation)ような時代は「TomorrowかつEventually」ということでまだまだ先になりそうです。

しかし、その前のTomorrowの段階で

  • Large, early applications
  • First demonstration of commercially relevant quantum advantage

といった可能性も示されているので、希望を失わずに行きましょう!

😳 「なるほどね〜」だったところは?

とくになるほど感があったのは次の2点。

  1. Quantum computer as a co-processors
  2. Execute algorithm on Quantum hardware
    • Need to change only 1 line

NISOアルゴリズムをハイブリッド構成で
Quantum computer as a co-processors

1点目の "Quantum computer as a co-processors" は、量子コンピューター(のプロセッサ=QPU)を従来のCPUの補助的に使うアプローチのことです。

複雑なグラフィック生成や機械学習の処理をGPUのような専用プロセッサにまかせることが当たり前になりつつありますが、それと同じことを量子コンピューティングにおいても適用しようということですね。

上のスライドでは、誤りの多い量子計算について、計算をQPUにまかせつつその結果をもとにしたパラメーターの再調整は従来のCPUで行う、というハイブリッド構成を挙げています。

Amazon Braketのワークフローの概念図
Amazon Braketのワークフロー

2点目は、量子アルゴリズムをD-Wave/IonQ/Rigettiといった実際のハードウェア上で実行させてみるときに、Amazon Braketでは「量子アルゴリズムのコードを1行変えるだけで、マネージドなシミュレーターからハードウェアでの実行に切り替えられる」という話です。えっ、本当に?

Amazon Braketを利用する際のワークフローは、

  • ローカルのIDEとマネージドなシミュレーターで量子アルゴリズムを開発・検証する
  • ハードウェアで量子アルゴリズムを実行する

というサイクルになるようなので、これを行き来するハードルをとにかく下げたということですね。

ここが面倒になると開発者としてつらいのは確かなので、おそらく本当に1行書き換えるだけで大丈夫なんだろうと信じていますが、機会があれば実際に試してみたいところです。

🤔 結局どうなの?

さて、「量子コンピューティングに手を出すなら今?」なのかどうかの結論についてはぜひ本セッションを視聴していただくとして、私が今回セッションを視聴した印象は、

  • 今は「どんな現実の問題に適用できそうか」を探索して知っていくステージである
  • ソリューション提案をしていくベンダーやインテグレーター、ユーザー企業内で似たような責務を担っている部門、においては少しだけ手を出し始めてもいいのかも

というものでした。

Amazon Braketのコスト感がぜんぜん実感できていないので手を出すのが若干怖いですが、この年末年始は長めの休暇が世間的にも推奨されているので、コストに気をつけながら触ってみようかなと思います。

今回のAWS re:Inventはなんと家で暖まりながら🔥参加できます。みなさんも是非セッションを見てbraとketして、量子コンピューティングの実績を解除してみましょう!

aws.amazon.com