Amazon FSx File Gatewayのキャッシュアクセス速度を検証してみた

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クラウドインテグレーション2部技術3課の山下です。

今回は、Amazon FSx for Windows File Server(以下、FSx for Windows)およびAmazon FSx File Gateway(以下、File Gateway)を構築し、クライアント端末からのアクセス速度の差異を確認してみます。

FSx for WindowsおよびFile Gatewayについて

はじめに、FSx for WindowsおよびFile Gatewayについて簡単にご紹介します。

FSx for Windows

Windows Server 上に構築されるフルマネージド型の共有ストレージです。サーバーの構築・管理をすることなく、SMB プロトコルによるファイル共有が可能になります。 詳細は以下リンクを参照ください。

aws.amazon.com

File Gateway

AWS Storage Gateway(以下、Storage Gateway)の一種で、オンプレミス環境からAWSストレージへのアクセスを提供します。また、FSx for Windowsのキャッシュサーバーとしても機能し、データアクセスのレイテンシーを軽減することも可能です。なお、FSx for Windowsとは異なり、サーバーの構築・管理が必要となります。選択可能なプラットフォームはVMware ESXi/Microsoft Hyper-V/Linux KVM/Amazon EC2です。また、専用のハードウェアアプライアンスを注文することも可能です。 詳細は以下リンクをご参照ください。

aws.amazon.com

docs.aws.amazon.com

docs.aws.amazon.com

https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/storagegateway/latest/userguide/hardware-appliance.html?icmpid=docs_console_unmappeddocs.aws.amazon.com

今回の構成

  1. FSx for Windowsを東京リージョンに構築します。(※今回はストレージタイプにHDDを選択しました)
  2. 疑似オンプレミス環境として、大阪リージョンにActive Directoryサーバー、クライアントサーバー、VPNサーバー(VyOS)を構築します。(※FSx for WindowsおよびFile Gatewayを利用するには、Active Directoryドメインへの参加が必要です)
  3. 東京リージョンと大阪リージョン(疑似オンプレミス)をAWS Site-to-Site VPNで接続します。
  4. File Gateway を東京リージョン、大阪リージョンに構築します。(※ストレージタイプはSSD(gp3)です)
  5. クライアントサーバーから、FSx・File Gateway(東京リージョン)・File Gateway(大阪リージョン)の同じファイル(※)にアクセスし、アクセス速度を比較してみます。

(※)アクセス用のファイルについては、100KB、100MB、500MBのテキスト形式のファイルを用意しました。

今回の構成図


疑似クライアントでネットワークドライブをマウントします


FSx for Windowsおよび2つのFile Gatewayがマウントされました


それでは疑似クライアントで各ネットワークドライブにアクセスし、ファイルを開くのにかかる時間を計測してみます。

確認結果

各ファイルに対してのアクセス速度(疑似クライアントでファイルが開くまでの時間)は、以下の通りとなりました。

ファイルサイズ FSx
(東京リージョン)
File Gateway
(東京リージョン)
File Gateway
(大阪リージョン)
100KB ※即時開くため測定負荷 ※即時開くため測定負荷 ※即時開くため測定負荷
100MB 約4秒 約3秒 1秒強
500MB 約20秒 約15秒 約6秒

ファイルサイズが100KBの場合、どのパターンでも一瞬でファイルが開いてしまい、アクセス速度の差異が計測できませんでした。

また、同じ東京リージョンに構築したFSx for WindowsとFile Gatewayではネットワークレイテンシーの差異がないため、アクセス速度にあまり差が出ませんでした。(ただ、ストレージタイプやサーバースペックに違いがある分、多少の差異が出ました。)

クライアントサーバーと同じ大阪リージョンに構築したFile Gatewayに関しては、100MB以上のファイルで、FSx for Windowsの3分の1程度のアクセス時間になりました。

考察

上記の確認結果から、File Gatewayは以下のようなケースで効果を発揮しそうです。

  • ファイルサイズが大きい
  • クライアント端末からの同時アクセス数が多い
  • クライアント端末とFSx for Windowsの間のネットワークレイテンシーが高い

加えて、クライアント端末に対してネットワーク的に近い場所にFile Gatewayを設置すれば、より効力が上がります。FSx for Windowsと異なるリージョンに設置すれば、リージョン障害への耐障害性も向上します。(ただし、あくまでキャッシュであり、完全なバックアップではないことにご注意ください。)

File Gatewayのコスト

File GatewayをAWS上に設置する場合、File Gatewayの利用料に加え、EC2インスタンス&ストレージの料金が発生します。 File Gatewayの利用料は、東京リージョンの場合「1 時間あたり 0.69USD」です。 File Gatewayの料金は下記リンクを参照してください。

aws.amazon.com

EC2については、最低でもm5.xlargeインスタンスタイプが推奨されています。また、ストレージはルートボリュームとは別に、150GiBのAmazon EBS ボリュームを用意することが推奨されています。 マネジメントコンソールでFile Gatewayを作成する際に、推奨スペックが表示されます。(下図参照)

おわりに

上述の通り、File Gatewayは常時稼働しているとそれなりのコストが発生します。導入を検討される場合は、コストに見合う効果が十分に得られるか、事前によく検討、検証して利用されることをお勧めします。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

山下 祐樹(執筆記事の一覧)

2021年11月中途入社。前職では情シスとして社内ネットワークの更改や運用に携わっていました。 2023 Japan AWS All Certifications Engineers。