re:Invent 2023で発表されたAWS re:Post Private を使ってみた

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3月よりIE課(インターナルエデュケーション課) に異動しました山﨑です。

今回はre:Inventで発表された「AWS re:Post Private」を早速利用してみたので、その感想を書きたいと思います。

AWS re:Post と AWS re:Post Private とは

1. AWS re:Post について

AWS re:Postは2021年にリリースされたAWSが管理/提供するコミュニティ型のパブリックなQ&Aプラットフォームであり、それまで存在していたAWSフォーラムに代わるものです。

このAWS re:Post はリリース前まで元々AWSの従業員によって社内利用されていたものであり、それがAWSコミュニティ全体で利用可能になりました。

個人的には、プログラミングに関するQ&Aに特化した stack overflow(スタックオーバーフロー)のAWS特化バージョンのような印象です。

aws.amazon.com

2. AWS re:Post Private について

AWS re:Post Private は、AWS re:Post をパブリックではなく組織に閉じたプライベート環境で利用可能なQ&Aプラットフォームであり、言い換えるとAWS技術に関する社内掲示板のようなものです。

aws.amazon.com

料金体系

無料で利用可能なAWS re:Post とは異なり、AWS re:Post Private には2つの料金体系があります。

Knowledge Management and Collaboration – AWS re:Post Private Pricing – AWS

料金プラン 概要 備考
Free tier ・6ヶ月間無料で利用可能
・ストレージは10GBまで
6ヶ月を経過すると、自動的にStandardに切り替えられるため注意が必要
Standard ・12USD/ユーザー
・ストレージは100GBまで
100GBのストレージ上限に達した場合はAWSにストレージ容量の追加リクエストを行う必要がある

3. AWS re:Post と AWS re:Post Private の比較

以下、簡単ではありますがAWS re:Post とAWS re:Post Private の比較表です。

項目 AWS re:Post AWS re:Post Private
目的 AWSに関する広範なトピックについての学習とディスカッション。 組織固有の問題の解決や内部的なコラボレーションの促進。
利用者 AWSアカウントを持っていれば、一般のAWSユーザー、開発者、専門家の誰でも利用可能。 特定の組織やグループのメンバーのみが利用可能。
情報共有の範囲 公開された質問と回答は全ユーザーが閲覧可能。 組織内部のみで情報が共有され、外部には公開されない。
プライバシーとセキュリティ 一般的な質問と回答に焦点を当てており、機密情報の共有には不向き 機密情報や企業固有の問題に対して安全な環境を提供
※プライベート環境ではありますが、顧客名等の機密情報は基本的には投稿しないことを推奨
カスタマイズ 汎用的なプラットフォーム設計でカスタマイズ不可 一部カスタマイズが可能

以下、ホーム画面の比較ですが、ほとんど同じでした(左がAWS re:Post、右がAWS re:Post Private)

ホーム画面の比較

早速、AWS re:Post Private を使ってみる

0. 事前準備

AWS re:Post Private を利用するには以下の事前準備が必要です。

  • AWSサポートプランのうち、Enterprise または Enterprise On-Ramp Support を契約していること
  • AWS re:Post Private を設定するリージョンで、AWS IAM Identity Centerを有効にすること
    • 2023年12月現在、AWS re:Post Private はオレゴンまたはフランクフルトリージョンで利用可能
    • AWS IAM Identity Center を利用するため、AWS Organizations のManagementアカウントにアクセスできる必要がある

1. AWS IAM Identity Center を有効にする

IAM Identity Center をIDプロバイダーとしてAWS re:Post Private にアクセスするだけなので、AWSアカウントの紐づけやアクセス許可セットを作成する必要は特にありません。

今回はグループとして「rePost_Group」を作成し、ユーザーとして「postmaster」を作成してグループに追加しました。

その他、IAM Identity Center を利用したアクセス方式については、以下のブログで解説していますのでお手隙の際にご覧ください。

blog.serverworks.co.jp

2. AWS re:Post Private を作成する

今回は10GBまでのストレージ容量で、半年間無料で利用可能なFree tierを選択しました(画面キャプチャではすでにFree tierを使って作成済みのre:Post があるためグレーアウトされています。)

re:Post Private の作成画面

今回は「PostTester」という名前で作成しました。その他、AWS re:Post Private 作成画面では以下の設定が可能です。

  • カスタムドメイン
    • 「サブドメイン.region.private.repost.aws」でカスタムドメインを利用可能(AWSによる承認に時間がかかる)
    • 例)post-test.us-west-2.private.repost.aws
  • データ暗号化
    • KMSを使ったデータ暗号化が可能(デフォルトはAWSマネージドキーで暗号化)
  • AWSサポートケースとの統合
    • re:Post Private 内で未回答の質問をAWSサポートケースに変換して起票可能(IAMロールによる認可が別途必要)

30分ほど待つと作成が完了します。AWS re:Post Private の作成後、IAM Identity Center の Applications メニューを確認すると作成した「PostTester」というアプリケーションが追加されていることが確認できます。

3. AWS re:Post Private の管理者を設定

AWS re:Post Private は最低でも1名の管理者を設定しておく必要があります。作成したre:Post Private のコンソール画面上でユーザー追加、グループ追加が可能になっていますので、必要なユーザー/グループを追加します。ここで追加するユーザー/グループは、IAM Identity Center で作成したユーザー/グループと紐づいています。

ユーザー/グループを追加した後に、管理者ユーザー/グループを設定します。余談ですが、re:Post Private のストレージ容量もこの画面から確認可能です。

これで、ようやくAWS re:Post Private にアクセスできるようになります。

4. AWS re:Post Private にアクセスして初期設定を行う

初回ログインでは、初期設定を行う必要があります。

ここではAWS re:Post Private のホーム画面に設定するタイトル、説明文、使用するページロゴやボタンの色、メニューバーの背景色などを設定することができます。これらは管理者であれば後から変更が可能です。

ここまで設定ができれば、AWS re:Post Private を利用するための最低限の準備は完了です!

AWS re:Post Private の基本機能

1. 質問する

これは技術的に不明点があったりした場合に社内メンバーに質問をしたり、誰かが投稿した質問内容に対して回答することができます。質問内容はMarkdownで書くことができます。

www.markdownguide.org

質問の作成画面

質問に対する回答画面

回答の承認とコメント

2. 記事を公開する

こちらは簡易的なブログ記事を作成することができる機能です。会社として公式な技術ブログを投稿する際、上長や広報部のレビューが必要となるケースがあると思いますが、re:Post Private であればあくまで社内のプライベート環境での投稿になるため記事投稿の敷居が下がり、より円滑な社内ナレッジ共有ができるようになるかもしれません。

記事の作成画面

公開された記事の閲覧画面

3. セレクションを作成

セレクションとは、特定のトピックやユースケースに関するAWSナレッジを整理する参考リンク集のようなものです。このセレクションはAWSが公式で提供しているセレクションも閲覧可能です。

セレクションの画面

AWS re:Post Private を使ってみて感じたこと

1. 良い、面白いと感じたこと

禁止用語を設定できる

re:Post Private では管理者が禁止用語を設定することができます。これにより倫理/道徳的にふさわしくない言葉や用語を用いた投稿ができないようにすることができます。実際に「男性」「女性」という性別を禁止用語に設定したところ、質問を投稿することができませんでした。

禁止用語の設定画面

禁止用語を使用すると警告が出る

プロフィールにスキルセットを設定できる

これは通常のre:Postでも利用可能だと思いますが、ユーザーのスキルセットを設定できるので社内の有識者を探す際に上手く活用できそうです。

スキルの設定画面

2. 改善の余地があると感じたこと

セレクションが日本語対応していない

セレクションは日本語がサポートされていないため早く対応してほしいところです。

日本語で作成するとエラーになる

ガイドラインを編集できない

AWS re:Post Private で質問をしたり、記事を作成する際に「ガイドライン」を閲覧することができるのですが、これは企業文化が出るところだと思いますのでカスタマイズできると尚良いなと思いました

質問をするためのガイドライン

通知設定がEメールしかできない

AWS re:Post Private では自身が作成した質問に対して回答があったり、記事にコメントが投稿されたりした際に通知設定を行うことができますが、現状はEメール通知しか対応していません。SlackやTeamsといったチャットアプリを主体としたコミュニケーションを取っている企業だと、そもそもメールをあまり見ないこともあるため、Slack通知に連携ができると尚良いなと思いました

Eメール通知設定

まとめ

ということで、今回は AWS re:Post Private を触ってみました。Q&Aサイトやナレッジ共有のプラットフォームを一から作成/管理するのは大変な労力がかかると思いますので、そういった際にAWS re:Post Private は真価を発揮しそうです。

山﨑 翔平 (Shohei Yamasaki) 記事一覧はコチラ

2019/12〜2023/2までクラウドインテグレーション部でお客様のAWS導入支援を行っていました。現在はIE(インターナルエデュケーション)課にて採用周りのお手伝いや新卒/中途オンボーディングの業務をしています。2023 Japan AWS Top Engineers/2023 Japan AWS Ambassadors