Savings Plans を推奨通りに購入した場合の影響度合いをビジュアライズ可能になりました

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マネージドサービス部 佐竹です。
2023年7月24日、AWS のコスト最適化において重要なサービスである Savings Plans に新しく「Visual Savings Plans recommendations」という機能が実装されました。

非常に有用なアップデートのため速報的にご紹介します。

はじめに

私は毎日 Savings Plans の適用状況を目で見るという運用を自主的に行っています。

本日も、朝から Savings Plans の状況を見ようと AWS Cost Explorer を表示してみると Savings Plans の「Recommendations」に「New」の文字が現れていました。

何だろうと思い表示してみると、上の通りの文言が表示されました。以下に掲載します。

Visual Savings Plans recommendations
You can now see the impact of each Savings Plan recommendation on your cost, utilization, and coverage by choosing View details in the table below

どうやら新しい機能が実装されたようです。

Visual Savings Plans recommendations

詳細が気になったので、AWS ドキュメントの更新履歴を探してみると、上画像の通りドキュメントヒストリーに更新がありました。

docs.aws.amazon.com

抜粋します。

Added a new feature to help customers understand and validate their Savings Plans recommendations through new visual graphs.

新しく視覚的なグラフを通じ利用者が Savings Plans の推奨事項を理解、検証できるようになる新機能が追加されました。(翻訳は筆者)

ということで、早速本機能をご紹介します。

Visual Savings Plans recommendations

新機能をざっくり説明しますと以下の通りです。

  • Savings Plans を推奨通りに購入した場合の利用料金への影響をグラフで確認可能
  • グラフ化できるのは、コストとカバレッジ(Coverage)使用状況(Utilization)
  • グラフ化される期間範囲は「Based on the past」の設定に依存
  • 推奨通りに購入した場合のみ可視化が可能で任意の購入額を入力することは不可

新機能の素晴らしさは「百聞は一見に如かず」を体現しているところでしょう。

エンドユーザ様への、Savings Plans のメリットについては口頭でお伝えしたり、資料をご提案したりはしているのですが、やはり口頭で伝えてもイメージはつき難いものです。しかし、今回の機能が利用できるようになったことで Savings Plans を購入した場合のイメージがかなりつきやすくなりました。

ということで、早速どのようなビジュアライズが可能となったのか画面キャプチャと共に見ていきます。

事前準備

本機能は、AWS Cost Management > Savings Plans > Recommendations の画面最下部「Recommended Savings Plans」に実装されています。

上画像の通り、Action として「View details」と記載されたリンクが新たに用意されました。

View details を押下するとポップアップが表示されます。そのまま閲覧する場合はポップアップの真ん中にある「View details」を押下してください。

情報を最新化してから閲覧したい場合「Refresh」を押下し、更新が完了してから再度「View details」のリンクを押下してください。今回はリフレッシュを行いました。

Recommendations の Refresh が完了すると「Your Savings Plans recommendations have been refreshed.」と表示されます。

補足: Refresh Recommendations

Savings Plans の「Refresh recommendations」については以下のブログでご紹介しておりますので、ご興味あれば合わせてご覧ください。

blog.serverworks.co.jp

Recommendation details

Savings Plans を未購入のアカウント

まずは、Savings Plans を全く購入していないアカウントで表示してみます。

Savings Plans type は「Compute Savings Plans」としています。また先に記載した通り、グラフ化される期間範囲は「Based on the past」の設定に依存します。今回は「60 days」で表示します。

1. Cost

  • 緑色:Current Compute Savings Plans commitment(購入済の SP コミットメント額=未購入のため表示なし)
  • 青色:Savings Plan recommendation(推奨 SP でカバーされる想定の利用料)
  • 赤色:Estimated On-Demand cost after Savings Plan purchase(オンデマンド=定価のままとなる利用料)

Savings Plans の購入の推奨はオフピークで行われます(赤い矢印の部分)。

このグラフの描画により、60日間で最も低い利用時間に合わせて「Savings Plan recommendation」が提示されているということがわかりやすくなりました*1

2. Coverage

  • 青色:Current coverage(既存の SP がないため 0) *2
  • 赤色:Estimated coverage after Savings Plan purchase

推奨通りに購入した場合の想定カバレッジは、これまで確認ができませんでした。

これが確認できるようになっただけではなく「New average hourly coverage」として平均値も取得できるのが良い機能だと感じます。

3. Utilization

  • 青色:Estimated utilization of the Savings Plan recommendation

カバレッジと同様、使用状況も確認が可能となりました。

補足ですが、本アカウントは停止や起動が頻繁に行われているため、Utilization が上下に振れています。ただこのようなケースは稀であり、通常は凡そ 100% で推移することが経験としては多いと感じます。

Savings Plans を購入済のアカウント

続けて、Savings Plans をある程度購入済のアカウントで表示してみます。「Based on the past」は同様に「60 days」です。

4. Cost

  • 緑色:Current Compute Savings Plans commitment(購入済の SP コミットメント額)
  • 青色:Savings Plan recommendation(推奨 SP でカバーされる想定の利用料)
  • 赤色:Estimated On-Demand cost after Savings Plan purchase(オンデマンド=定価のままとなる利用料)

先ほどは表示がされていなかった購入済の Savings Plans (緑色)がこちらでは表示されています。

そして青色の部分が追加購入によって新しくカバーされる箇所です。非常に分かり易くビジュアライズされています。

5. Coverage

  • 青色:Current coverage (購入済の SP のカバレッジ)
  • 赤色:Estimated coverage after Savings Plan purchase

購入済の Savings Plans がある場合は上記の通りの表示となります。購入後にはカバレッジが100% に近づくことがわかります。

6. Utilization

  • 青色:Estimated utilization of the Savings Plan recommendation *3

こちらの環境においては、60日間にわたってほぼ 100% で推移することがわかります。

CSV ダウンロードはアップデートなし

なお「View details」を押下した後の画面にも「Download CSV」が存在しますが、この CSV は「Recommended Savings Plans」から取得できる CSV と内容は同じものです。

また、今回のアップデートに合わせて更新がされているわけではなく、以前と同様の値でした。

Cost Explorerで生成可能なレポートとの差について

既存 Savings Plans のカバレッジ(先に見た Current Compute Savings Plans commitment)のようなグラフは、AWS Cost Explorer において Dimension =「Charge type」等を利用することで、似たグラフが作成できます。

ただし、AWS Cost Explorer において Granularity = Hourly の利用料は「最大14日間」のみが表示可能であり、それ以上は遡れません。

今回のカバレッジの描画機能は、グラフ化される期間範囲が「Based on the past」の設定によるため、Hourly の粒度なのにも関わらず Cost Explorer の14日間と比較して過去最大60日前まで遡れる点が優れています。

個人的にはこの点が驚きであり、素晴らしいと感じました。*4

まとめ

画像の再掲

AWS のコスト最適化において重要なサービスである Savings Plans に、その推奨通りに購入した場合の影響度合いをビジュアライズ可能となる新機能が実装されました。個人的には非常に素晴らしいと感じており、神アップデートではないでしょうか。

再掲となりますが、以下が新機能についてのまとめです。

  • Savings Plans を推奨通りに購入した場合の利用料金への影響をグラフで確認可能
  • グラフ化できるのは、コストとカバレッジ(Coverage)使用状況(Utilization)
  • グラフ化される期間範囲は「Based on the past」の設定に依存
  • 推奨通りに購入した場合のみ可視化が可能で任意の購入額を入力することは不可

この機能強化により、Savings Plans のエンドユーザ様への提案もかなりやりやすくなるでしょう。また、Savings Plans の運用者にとっても大きなメリットで、過去 60日間にわたっての Hourly を見ることで推奨値の裏付けが容易となりました。

さらに個人的には、今後任意の購入額を入力することも可能になれば嬉しいと感じます。AWS Compute Optimizer を利用してのインスタンスタイプの最適化を進めているエンドユーザ様では、推奨値よりも多少引き下げた Savings Plans を購入されることも多いため、その場合のカバレッジも表示してみたいと感じます。

ということで本ブログはここまでです。この記事が AWS のコスト最適化にとって少しでも有用であれば幸いです。

では、またお会いしましょう。

2023/7/26 追記

AWS の News にも本機能が掲載されました。

AWS Cost Management introduces visual Savings Plans recommendations

aws.amazon.com

*1:実際の推奨値は利用状況によりオフピークより少し高額になる場合があります

*2:右端で値が100%になってしまっているのは利用料の Cost Explorer への連携が遅延する都合だと思われますが、無視して問題ないでしょう

*3:右端で値が0%になってしまっているのは利用料の Cost Explorer への連携が遅延する都合だと思われますが、無視して問題ないでしょう

*4:Hourly は15日以上遡ってみたいシーンもままあるため

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マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023 Japan AWS Top Engineers/2020-2023 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。