マネージドサービス部 佐竹です。
本日のブログは AWS の Public IPv4 アドレスに 2024年2月1日から請求が開始される件に関連して、追加調査を行いましたのでその結果をご紹介します。
はじめに
本ブログは以下の内容に関しての追加調査となっておりますため、先に以下のブログをご覧ください。
上記のブログを2023年8月16日に投稿しました。そしてブログ本文では PublicIPv4:InUseAddress
についてのみ触れました。以下がその説明です。
PublicIPv4:InUseAddress
: お客様の AWS アカウント上のですべての使用中のパブリック IPv4 アドレス
の使用状況を表示します。これらには、EC2 パブリック IPv4 アドレス、Elastic IP アドレス、およびサービス管理のパブリック IPv4 アドレスが含まれます。BYOIP アドレスには料金はかからないため、含まれていません。*1
AWS の公式ブログにおいては、これに追加して以下のレコードについても記載がありました。
PublicIPv4:IdleAddress
: お客様の AWS アカウント上のですべてのアイドル状態のパブリック IPv4 アドレス
の使用状況を表示します。
しかし、後者ついては先のブログ中ではあえて触れていませんでした。
何故触れていなかったのかをここから記載するとともに、私が疑問に思っていた内容について AWS サポートからの回答で判明した内容を記載します。*2
PublicIPv4:IdleAddress と ElasticIP:IdleAddress の関連性について
PublicIPv4:IdleAddress
は7月からレコードが追加されており、以下の通り AWS Cost Explorer で確認が可能です。ここでは ElasticIP:IdleAddress
と比較のために同時に表示しています。
本画面キャプチャーにおいては、値を比較しやすくするため、リージョンは「東京リージョン」のみに絞っています。
加えて、これらは Billing(Bills)でも請求の明細として確認が可能です。表示している年月は2023年8月の1か月分の値となっています。
検索条件は画像の通りです。
本請求明細において気になるのは以下の2つのレコードです。
No | 説明 | 使用量 (時間) | 請求額 |
---|---|---|---|
① | $0.005 per Elastic IP address not attached to a running instance per hour |
182,633.6 Hrs | $913.17 |
② | $0.005 per Idle public IPv4 address per hour | 182,772.981 Hrs | $0.00 |
①ElasticIP:IdleAddress
はこれまで通り、既に過去から請求がされているものです。しかし ②PublicIPv4:IdleAddress
は $0.005 per Idle public IPv4 address per hour
と記載があるものの、請求額は $0 になっています。
さらに Hrs を見ると、値に少量のズレがあります。これは Cost Explorer で確認しても同様です。
これらの表示を見て私は以下の疑問点を持ちました。
疑問点の一覧
- まずは Cost Explorer を見るに「
PublicIPv4:IdleAddress
とElasticIP:IdleAddress
は同じ値を指しているのではないか?」という疑問です。しかし数値が少量異なっている理由が不明です - 次に「現在は $0.005 per Idle public IPv4 address per hour が実際請求値として $0 になっているが、これが有料化されると
ElasticIP:IdleAddress
と二重に請求されることになるのではないか?」という疑問です。私の想定では、ElasticIP:IdleAddress
が廃止されるか何らかの不具合かのどちらかだと考えました - 最後に「Elastic IP 以外で確保しているが未使用となる PublicIPv4 アドレスを保有するサービスがあるのだろうか?」という疑問です。これは1つの目の数値の差を考慮してそのように感じた次第です
これらの疑問への回答を以下に記載します。
またこれらの疑問を持っていたため、先のブログでは PublicIPv4:IdleAddress
は一旦 ElasticIP:IdleAddress
で請求済として PublicIPv4:InUseAddress
にのみフォーカスしていました。
1. PublicIPv4:IdleAddress と ElasticIP:IdleAddress は同じ値か?
PublicIPv4:IdleAddress
と ElasticIP:IdleAddress
は結論としては同じ値を指します。よって、同様の値だと認識して頂いて問題ありません。8月の数値が異なる点については、疑問点3.の回答で補足します。
また PublicIPv4:IdleAddress
と ElasticIP:IdleAddress
の数値の差が「2023年7月」は8月よりも大きくなっています。これは PublicIPv4:IdleAddress
が月の途中から追加されたためとなっており、数日分のズレを発生させているためでした。
Cost Explorer の値を「Daily」で確認すると上画像の通りとなり、7月5日に追加されていたことが確認可能です。
このため7月の「月(Monthly)」単位の値においては少々取り扱い注意となります。
2. ElasticIP:IdleAddress は今後どのように扱われるのか?
結論としては ElasticIP:IdleAddress
は今後2024年2月1日までに廃止されます。
このため、将来的には PublicIPv4:IdleAddress
のみになります。もし ElasticIP:IdleAddress
を利用して Cost Explorer レポート等を作成されている場合は、廃止されたタイミングでレポートの修正が必要となるでしょう。
3. Elastic IP 以外で PublicIPv4:IdleAddress を発生させるサービスがあるか?
回答は「ありません」。現時点で PublicIPv4:IdleAddress
を発生させるサービスは Elastic IP のみです。では、何故これらの8月の数値が異なるのでしょうか?
サポートからの回答では、この違いは PublicIPv4:IdleAddress
と ElasticIP:IdleAddress
でメータリングの単位が異なることにより発生しているとのことでした。
PublicIPv4:IdleAddress
は 1分単位での計測で、ElasticIP:IdleAddress
は 12分単位で計測のうえ切り下げとなっています。このため、例えば1つ idle 状態の Elastic IP が18分存在していた場合には、PublicIPv4:IdleAddress
では 0.3 hrs (18/60=0.3) の計上となりますが、ElasticIP:IdleAddress
では 0.2hrs での計上となります。
このように計算ロジックとして「切り下げ」が行われていたため ElasticIP:IdleAddress
は少し安く請求されていました。
今後は1分単位で計測されるため PublicIPv4:IdleAddress
への移行において少々数字が大きくなってしまいます。
このため ElasticIP:IdleAddress
が PublicIPv4:IdleAddress
に今後置き換わることで計算ロジックが適正になり、微々たる数値ではありますが、結果的に少額の値上げにもなるようです。
まとめ
本ブログは AWS の Public IPv4 アドレスに 2024年2月1日から請求が開始される件に関して、PublicIPv4:IdleAddress
と ElasticIP:IdleAddress
の関連性について追加調査を行った結果を記載しました。
結論をまとめに記載します。
PublicIPv4:IdleAddress
とElasticIP:IdleAddress
は基本的には同じ値を表しています- ただし計算ロジックが12分単位の切り下げから1分単位に変更となった都合、
ElasticIP:IdleAddress
よりもPublicIPv4:IdleAddress
の方が数量が増えます ElasticIP:IdleAddress
は2024年2月1日までに廃止されますPublicIPv4:IdleAddress
を発生させるサービスは現状 Elastic IP のみです
前回のブログから少し時間を要してしまいましたが、これで疑問点がなくなりすっきりしました。 PublicIPv4:InUseAddress
に関連して、同様の疑問点をお持ちの方に何か参考になれば幸いです。
では、またお会いしましょう。
*1:引用元 https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/identify-and-optimize-public-ipv4-address-usage-on-aws/
*2:AWS サポートへは9月8日に質問を行い、回答を9月22日に得ました
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マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。