マネージドサービス部 佐竹です。
本ブログは、Amazon Relational Database Service (RDS) における古いインスタンスクラスリタイアの予告に関するブログです。
- はじめに
- Amazon RDS for MySQL/MariaDB/PostgreSQL で M4, R4, T2 が2024年5月末に廃止
- RI を加味したおすすめの移行方法
- 2024年5月29日 追記 Aurora の R4 と T2 に関して
- まとめ
はじめに
以前告知のために記載しました以下のブログは、2023年上旬のリタイア予定をお知らせするものでした。
今回は、2024年上旬のリタイアをお知らせしたいと思います。
Amazon RDS for MySQL/MariaDB/PostgreSQL で M4, R4, T2 が2024年5月末に廃止
2024年2月26日 に本ブログの内容を一部更新しました。
以前のお知らせでは「4月までに」となっていましたが「2024年6月1日 から自動アップグレードが開始される」とのことで、5月31日が期限となりました。
3つの非 Nitro インスタンスファミリーである旧世代の DB インスタンスクラス M4, R4, T2 が3つまとめてリタイアとなります。*1
該当となる DB エンジンは Amazon RDS for MySQL、MariaDB、PostgreSQL 3つで、Amazon Aurora は含まれておりません。
2023年11月追記
Amazon RDS for SQL Server でも同様に、M4, R4, T2 が廃止という通知がありました。日付は「March 29, 2024」ということで、こちらは2024年3月29日と、日付まで明記されています。
利用者に送信されているメールの件名
本 DB エンジンと DB インスタンスクラスの組み合わせをご利用されている AWS アカウント宛に、以下の件名でメールが送付されています。
- Amazon RDS for MySQL をご利用中の場合
- [Action required] End-of-life date is approaching for Amazon RDS for MySQL database instances on M4, R4, T2 instance types
- Amazon RDS for PostgreSQL をご利用中の場合
- [Action required] End-of-life date is approaching for Amazon RDS for PostgreSQL database instances on M4, R4, T2 instance types
- Amazon RDS for SQL Server をご利用中の場合 (2023年11月追記)
- [Action required] Amazon RDS for SQL Server is ending support for M4, R4 and T2 Database Instances on March 29, 2024
なお、以下は2024年2月に確定として送信されているメールの件名となります。
- 2024年2月20日に送信された日付の確定連絡
- [Action required] Deprecation of Amazon RDS M4, R4, and T2 database instance types on MySQL, MariaDB, and PostgreSQL
メールに記載されている内容
メール本文に記載されている内容のうち、重要な点を整理して箇条書きで紹介します。なお以下は、Amazon RDS for Amazon RDS for MySQL、MariaDB、PostgreSQL について記載したものです。
- 2024 年 3 月 11日より
db.m4
、db.r4
、db.t2
のインスタンスクラスで新規インスタンスの作成が不可となる予定 - 2024 年 5 月 31日までに、すべての
db.m4
、db.r4
、db.t2
インスタンスを新世代のインスタンスクラスに移行することを強く推奨 - 2024 年 6 月 1 日から、
db.m4
、db.r4
、db.t2
で実行されているインスタンスが、同等サイズの新世代のインスタンスクラスにベストエフォートで移行される db.m4
、db.r4
、db.t2
のリザーブドインスタンスは、2023 年 6 月 30 日以降、購入できなくなる
気になる点を1つずつ掘り下げていきます
2024年4月 "まで" という期限表記について(古い情報)
以下は日付が5月末と確定しましたため、現在は考慮不要です。
メール本文を、日本語訳と原文、それぞれ詳しくみてみます。
日本語訳
2024 年 4 月までに、すべての M4、R4、T2 インスタンスを廃止する予定です。
原文(英語)
We plan to retire all M4, R4, and T2 instances by April 2024.
この ~までに(by)
という記載は注意が必要です。この日が期限ではなく、それまでに(前倒しで)行われる場合があります。
先にご紹介したブログに以下の通り記載したのですが、2023年4月30日までにと予告されていた日付は、追って2023年2月6日に確定されています。
2022年6月1日に通知が行われたのが、RDS for MySQL での
db.m3
とdb.r3
の廃止でした。これらのインスタンスクラスは、メール通知が来た通り2023年4月30日までに利用ができなくなる予定でしたが、その日付が2023年2月6日に確定されました。
さらにこの確定日付はメールではなく AWS re:Post で告知されました。
現時点では re:Post に本告知に関する情報は存在しないようでしたため、確定後に追って re:Post で日付が告知されると想定されます。今後 re:Post での告知があれば、本ブログにも追って内容を追記したいと存じます。
アップグレード先の DB インスタンクラス
推奨される切り替え先のインスタンスクラスは以下の通りです。
切り替え前 | 切り替え後 |
---|---|
db.m4 | db.m6i |
db.r4 | db.r6i |
db.t2 | db.t3 |
もし廃止予定のインスタンスクラスのまま廃止期限を迎えた場合は、その後いずれかのメンテナンスウィンドウのタイミングで上記のインスタンスファミリーの同サイズのインスタンスクラスに自動的に切り替えられます(この動作は RDS オートメーション
と記載されていました)。
また、新しいインスタンスファミリーは、古いインスタンスファミリーと比較して対応しているエンジンバージョンが高い傾向にあります。このため、インスタンスクラスの世代を新しくするには同時にエンジンバージョンも更新する必要がある場合に留意してください。
AWS のメールには、本インスタンスクラスの切り替えにあたり、MySQL においては MySQL 8.0.28 以降にアップグレードすることを、PostgreSQL においては PostgreSQL 13.4 以降にアップグレードすることを推奨する旨が記載されていました。
補足ですが、先に記載した通り db.m4
、db.r4
、db.t2
は全て非 Nitro 基盤で動作するインスタンスファミリーです。これを今回全て Nitro 基盤で動作するインスタンスファミリーへと切り替えることになるのですが、この点に関しては RDS では影響はございません。追加の対応作業を行うことなく Nitro 基盤のインスタンスへと切り替え頂けます。*2
これは Graviton に対応した db.m6g
等の g
が末尾に付与されたインスタンスファミリーへの変更においても、同様に影響はございません。ただしインスタンスクラスの切り替えには事前に「十分な動作確認」と「バックアップ Snapshot の取得」を実施頂けますようお願い致します。
参考: Nitro に対応しているインスタンス一覧
The following virtualized instances are built on the Nitro System:
- General purpose: A1, M5, M5a, M5ad, M5d, M5dn, M5n, M5zn, M6a, M6g, M6gd, M6i, M6id, M6idn, M6in, M7g, T3, T3a, and T4g
- Compute optimized: C5, C5a, C5ad, C5d, C5n, C6a, C6g, C6gd, C6gn, C6i, C6id, C6in, C7g, C7gn, Hpc6a, and Hpc7g
- Memory optimized: Hpc6id, R5, R5a, R5ad, R5b, R5d, R5dn, R5n, R6a, R6g, R6gd, R6i, R6idn, R6in, R6id, R7g, U-3tb1, U-6tb1, U-9tb1, U-12tb1, X2gd, X2idn, X2iedn, X2iezn, and z1d
- Storage optimized: D3, D3en, I3en, I4g, I4i, Im4gn, and Is4gen
- Accelerated computing: DL1, G4ad, G4dn, G5, G5g, Inf1, Inf2, P3dn, P4d, P4de, Trn1, Trn1n, and VT1
リザーブドインスタンスが新規購入不可となるタイミング
該当の DB インスタンスクラスのリザーブドインスタンス (RI) は、2023年6月30日以降購入ができなくなるとメールに記載がありましたが、2023年7月26日現在はまだマネジメントコンソールで選択ができる状態になっています。
実際、弊社では2023年7月3日に Amazon RDS for MySQL における db.t2.micro の RI を購入している実績がありました。
本メールは記載されていた期限である2023年6月30日よりも遅い同年7月3日に送信されてしまったために、実際はもう少し購入できる期限が伸びたのかもしれません。
現状購入がまだ可能ではあるのですが、期限は2024年の上旬ともう1年も無い状況ですため、今から該当する旧インスタンスクラスの RI を購入することは控えて頂き、インスタンスクラスを先に切り替えて最新化されてから RI をご購入頂くほうが後々手間もかからなくより良い運用になるかと存じます。
購入済のリザーブドインスタンスはどのように扱うべきか?
AWS 側の都合でインスタンスクラスが廃止されるような場合には、購入済の RI の疑似的な交換処理(≒途中キャンセル)が可能です。
このため、 RI をお持ちの場合は弊社のサポート窓口までご相談いただければと存じます。
ただ、キャンセルは少々やり取りに時間がかかりますので、廃止予定日までに RI の有効期限が切れる場合には、RI の期限を迎えた後にインスタンスクラスを変更し、追って RI を購入されるほうが良いでしょう。
RI を加味したおすすめの移行方法
まずは、移行が必要となった DB インスタンスに対して、リザーブドインスタンス(RI)が購入済かどうか事前にご確認ください。
![](https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/swx-satake/20230726/20230726151901.png)
マネジメントコンソールで、RI のステータスが「active」となっているものが、現在有効な RI となります。「retired」となっている RI は期限が切れておりますため、今回の移行には影響がございません。
有効な RI が存在している場合
RI を購入済でなおかつ現在も有効な RI が存在している場合、以下の2パターンで対応を行います。
まず、先に記載させて頂きました通り、廃止予定日までに RI の有効期限が切れる場合には、RI の期限を迎えた後にインスタンスクラスを変更し、そのタイミングで新たに RI を購入されることを推奨します。
次に、廃止予定日より RI の有効期限が先の場合には疑似的な RI の交換が必要になります。この場合、まずは弊社のサポート窓口までご連絡ください。先に新しい世代の RI を購入された後に「既存の RI をキャンセルするようにご連絡」いただいた場合に、確実にキャンセルが可能とは言い切れない可能性がございます。
予め AWS サポートに確認を行ってから、その後に対処を実施する方が確実です。そのため、まずは先に弊社サポート窓口までご相談いただくことを推奨します。
有効な RI が存在していない場合
RI を購入されていないか、有効な RI が存在していない場合は、期日までにインスタンスクラスを変更頂ければ問題ございません。
なお、インスタンスクラスを変更する場合 RDS は一時的に停止を伴う点にご留意ください。本作業をスケジューラーで実行されたい場合は、Cloud Automator を有効活用いただけます。
Amazon RDS for SQL Server に関して (2023年11月追記)
re:Post に以下の投稿があり、本記事の和訳を掲載します。
Amazon RDS for SQL Server は、2024年3月29日に M4、R4、および T2 データベースインスタンスのサポートを終了します。2024年3月29日までに、既存の M4、R4、および T2 インスタンスを新しい世代のインスタンスタイプに移行することを強くお勧めします。
推奨される切り替え先のインスタンスクラスは以下の通りです。
切り替え前 | 切り替え後 |
---|---|
db.m4 | db.m5 |
db.r4 | db.r5 |
db.t2 | db.t3 |
2024年1月29日より、M4、R4、T2 インスタンスファミリーを使用した新しい Amazon RDS for SQL Server データベースインスタンスの作成ができなくなります。加えて、影響を受ける既存のインスタンスを2024年3月20日までに新しい世代のインスタンスタイプに移行することを強くお勧めします。
リザーブドインスタンス (RI) をお持ちの場合は、同じ価格以上の新しい RI を作成した後でそれらをキャンセルできるようになります。インスタンスをキャンセルして再購入する場合は、AWS サポートを起票してください(リセラーの場合は弊社のサポート窓口で調整しますため先の通りご連絡ください)。
2024年3月29日以降、アップグレードされていないすべての Amazon RDS for SQL Server M4、R4、および T2 インスタンスは、対応するリージョンでのインスタンスの可用性とサポート性に応じて、同様のサイズの新しい世代のインスタンスに自動的に変更されます。このアクティビティはメンテナンスウィンドウで実行され、本メンテナンスではインスタンスにダウンタイムが発生します。
関連するブログの紹介
上記ブログで「Amazon RDS for SQL Server で T2、M4、R4 の RI が2023年1月30日に廃止」について記載しました。この記事で想定した通り、インスタンスクラスの廃止の連絡が行われている状況です。
2024年5月29日 追記 Aurora の R4 と T2 に関して
AWS から特に事前アナウンスが無かったにも関わらず、Aurora MySQL と Aurora PostgreSQL でも R4 及び T2 のインスタンスクラスに関して廃止の影響がありました。
上画像の通り、Aurora の新規構築画面において、db.t2 がデフォルトで選択できなくなりました。もし db.t2 を選択されたい場合は「以前の世代のクラスを含める」にチェックを入れる必要があります。
これは db.r4 でも同様です*3。
リザーブドインスタンス (RI) については完全に廃止されてしまったようで、RI 購入画面において db.t2 と db.r4 のインスタンスクラスが選択不可となっています*4。
恐らく、今後 Aurora においても db.t2 と db.r4 に関する廃止のスケジュールが通知されると考えられます。
まとめ
本ブログでは、Amazon Relational Database Service (RDS) における古いインスタンスクラスリタイアの予告に関して記載しました。
具体的には、Amazon RDS for MySQL、MariaDB、PostgreSQL で M4, R4, T2 が2024年5月末に廃止される予定です。
推奨される切り替え先の DB インスタンスクラスは以下の通りです。
切り替え前 | 切り替え後 |
---|---|
db.m4 | db.m6i |
db.r4 | db.r6i |
db.t2 | db.t3 |
なお db.m5
及び db.r5
はリタイア対象となっておりませんため、これらのインスタンスクラスへ変更することでも回避が可能です。しかし、可能であればこのタイミングでより最新のインスタンスクラスへ変更される方が良いでしょう。
加えて Amazon RDS for SQL Server では、2024年3月29日に廃止が実施される予定です。
SQL Server で推奨される切り替え先の DB インスタンスクラスは以下の通りです。
切り替え前 | 切り替え後 |
---|---|
db.m4 | db.m5 |
db.r4 | db.r5 |
db.t2 | db.t3 |
まだ少し先のリタイアのため、現状はまだまだ温度感も低い状況と思われますが、リザーブドインスタンスは要注意です。RI の期限は最低でも1年間(正確には365日)です。
このため本スケジュールを念頭に置いて頂き、これら3種のインスタンスクラスの新規 RI を購入することを避けたり、既に購入済の同インスタンスクラスの RI を更新することを避けたりと、予定されているリタイアを意識して日頃から運用くだされば、来年の廃止期限ギリギリに慌てることもないと存じます。
では、またお会いしましょう。
*1:インスタンスタイプ と AWS のメールやドキュメント等に記載されている場合もありますが本ブログではインスタンスクラスで統一します
*2:EC2 インスタンスの場合はドライバーのバージョンアップ等の対応がユーザ側で必要になります
*3:補足ですが、もともと Aurora には db.m4 は存在していません
*4:AWS CLI でも新規の購入は不可能です
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。