はじめに
re:Invent 2020 にて2020/12/11の「Infrastructure Keynote」を視聴しましたので簡単ではありますが、日本語で簡単にまとめレポートします。
元の動画はこちらとなります。 (閲覧にはユーザ登録が必要です) https://virtual.awsevents.com/media/1_qsv5itu8
以下、動画内の内容に関する各ポイントの大まかな時間についても記載しておきますので興味がある箇所については閲覧する時の参考にしてください。
(リスニングミスやら誤訳、誤解釈があるかもしれません、あった場合は訂正したいのでコメントいただけると幸いです)
Infrastructure Keynote
1.開幕 0:00-
Peter DeSantis 登場
パフォーマンス向上とコスト削減の両方において昨年から大きな進歩を遂げた事やAmazonの文化について述べ、AWSが今朝インフラストラクチャをどのように考え、構築するかについて少し深く掘り下げたいといった形で始まります。 常に顧客の意見に耳を傾け、改善し続けている姿勢について印象的でした。
2.電源な話 4:45-
可用性の高い電源設計としてDCとして一般的でよくある、商用電源、非常用の発電機、電力関連のスイッチ、UPSといった構成が図示され、可用性を高める為の冗長化考慮のポイントや維持管理の大変さについて色々と延べられます。
発電機
写真もこのような形で紹介されています。(AWSのどこかで利用されている実物かは不明です)
従来のサードパーティの大型UPS
このような写真で紹介されます。 重量も相当あるでしょうから専用の区画とかの考慮も必要そうです。
新しいラック搭載型のマイクロUPS
このような写真で紹介されます。 見るからに抜き差しが容易そうで、ごく一般的なラックマウント型サーバーのPS(電源ユニット)を大きくそして長くしたようなイメージに近い形ですね。
このようにAWSとして、従来の大型のサードパーティUPSからラックに格納するような自前のマイクロUPSへ移行を決めたようです。当然、当該ラックを稼働させながらバッテリー交換が容易な設計で、ファームウェア(ソフトウェア)も内製の為、仮にソフトウェアのバグ等で初モノの不具合ケースに遭遇した場合にも、社内ですべての情報を握っているのでサードパーティ製でサポートにIssueを上げて調査やら対応を待つのに比べ、解決に要す時間も大幅に削減出来るといいます。
大型のサードパーティUPSがこの位置だとすると
ラック単位のマイクロUPSだとこの位置になると
このグラフの見方は
・X軸 Complexity(複雑性)
・Y軸 Blast radius(障害時の影響範囲)
・色は赤が不眠症、緑がよく眠れるといった感覚的な表現です(面白いですね )
(とはいえ、感覚的なグラフでも実際インフラ面倒みていた人からすると気持ちはよくわかるところかな...と)
UPSを大型集約からラック単位に分散する事で影響範囲も分散でき、従来の設計ではレッドエリアだったものが グリーンのエリアとなり、夜に赤子のように眠れるデザインになったと述べています。
3.リージョンやAZな話 15:00-
Amazonのように非常にステートフルなリアルタイムアプリケーションを解決策は、より近くにある複数のデータセンターが稼働させる事ですが、かといって近すぎると火事、洪水、ハリケーンといった自然災害で同時影響を受ける可能性が高まり、かといって距離が離れすぎるとレイテンシーの問題で先に書いたようなアプリケーション用途で耐えらインフラストラクチャはGoldilocks Zoneにあるべきという結論に達したと述べています。
Goldilocks Zoneとは上のスライドにある通り
・レイテンシーが 100s of microseconds
・距離が 10s of miles (10miles=約16.1km)
ぐらいのゾーンです。
どのAZを利用するかはユーザーに委ねられますので、多くのユーザー視点では各リージョン内では最適な場所にAZの選択肢が用意されていると理解するだけでよいのかもしれません。
2020/12現在、AWSには24の独立リージョンがありそれぞれに複数の適切に設計されたAZがある 南アフリカ(ケープタウン)、イタリア(ミラノ)、スイス、インドネシア、スペインのリージョンが発表され インド、日本、オーストラリアには2つ目のリージョンが追加されると述べられました。(ここでいう日本は大阪リージョンの事ですね) そしてリージョンの追加だけでなく、マルチリージョン構成でのシステム運用で問題が発生しないような取り組みについても述べられました。
また、サプライヤーが2015年から約3倍近く伸びている事、地理的に多様なサプライチェーンへの大規模な投資を行い、お客様のサービスを中断なく 高い満足度でスケーリング出来ている点について述べられました。
ここで一つの例としてNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のCIOから話を聞きます。
NFLはアメリカ最大のスポーツ組織で、ゲームあたり1,500万人以上の視聴者があるようです。 Amazon EC2やAWS Direct Connect、AWS MediaServeices、AWS Shield Advanced等を利用し、 5500万人の視聴を記録したようなインフラを携帯端末でリアルタイムな動画配信をスケールしながら展開した例を紹介しつつ これからもAWSと共にブロードキャストとイベントを変革していくとCIOが述べられていました。
4.AWSカスタムシリコンな話 34:00-
2013年に関連会社と始めたNitroチップ製造に関する取り組みに関して、歴史を振り返るとともにカスタムシリコンの話題へと移ります。
Andy Jassyの KeynoteでEC2のMacインスタンスについて多くの人が驚いたり興奮したかと思いますがそのインフラの内部が公開されています。
(おそらく1Uのハーフ)ラック上に本体がまるごとマウントされている事がわかりますね。 Macのハードウェアには変更を加えていない点、Thunderboltで接続されている点、 その先にAWSの基盤がありNitroチップがある旨(EC2側の機能はすべてMac miniの外部で制御している)と説明があります。
次にクラウドで最高のパフォーマンスを発揮する64bitの汎用ARMプロセッサーとしてGraviton 2の話題へと移ります。
主に第5世代(M5)との比較がメインとなりトップ内の少しマニアックな話(キャシュやSMTが非効率な内容等)が続きます。
CPUやHammerDB(ベンチマーク)等の色々な比較が紹介されるので興味があれば閲覧頂きたいですが ユーザー視点だと低コストでパフォーマンスが優れるといったざっくり理解で問題なさそうです。
5.環境への取り組みや再生可能エネルギーな話 1:03:30-
Graviton 2 がユーザー視点で低コストや高パフォーマンスである事に続き 最も電力効率の高いプロセッサーでもあり省エネルギーである事があげられその切り口から環境への取り組みに関する話題へと進みます。
2040年のゼロ・カーボンに向けた取り組みについてさまざまな紹介がされていきます。
再生可能エネルギー(風力や太陽光)を利用した発電のプロジェクトに関して取り上げ、COVID-19という大きな課題がある中も推進し、新たに3,400メガワットを超える追加の再生可能エネルギーを発表できた事を誇りに思っているとのこと。
以下のような取り組みにより、AWSのデータセンターは、一般的なエンタープライズ向けデータセンターより88% CO2排出量を削減とのこと。
・より効率的なDC設備
・効率的なサーバーとより高いサーバー使用率
・消費電力の削減と再生可能エネルギーの活用
続いて、セメントの代替素材を増やす取り組みについても紹介されました。
最初はセメント?って思いましたが、世界中の建造物で利用されるコンクリートを作る工程で必要となるセメントは、 石灰石を主とした様々な素材を配合して高温で熱し化学反応を起こす事で「クリンカー」と呼ばれる材料からなりますが、 その焼成工程で発生するものは全世界のCO2排出力の約7-8%を占めているとても大きな要因になっているとのことで 代替素材に関する取り組みをすることでもCO2削減に貢献をしているという事です。
最後にデータセンターの冷却水に関する内容へと移ります。
多くの場合はデータセンターの冷却に外気を利用していますが、最も暑い季節などには冷却を助ける為に水が欠かせないそうです。その水をシステム最適化による使用量の削減の取り組みについて紹介がされます。
AWSで冷却に利用した水をキレイな状態で還元することで農業を中心としたコミュニティに貢献しており、恩恵を受けている方々の声を聞きます。「AWSウォーターチーム」という組織もあるようで、物理の世界だと当たり前かもですがなんか驚きですね。 Amazonは世界最大の再生エネルギーの利用する企業になると述べ締めくくります。
再生可能エネルギーに関するAWSの取り組みに関する詳細は以下を参照してください。
sustainability.aboutamazon.com
まとめ
Infrastructure Keynoteでは新サービスのような発表はなく地味な印象を受けるかもしれませんが、 インフラ自体がそもそもユーザーに意識させない(地味で裏方であればある)方が素晴らしいといった側面もありますし、 個人的にはとても楽しめる内容でした。
世界中で使われているAWSを裏で支える「今」のインフラの裏側や様々な人の取り組みについて 新たに得る情報が必ずあるかと思いますので、是非 Keynoteの動画の方をチェック頂ければと思います。