流体解析や構造解析などのCAEをクラウド上で利用しようとするとき、オープンソースのCAE(オープンCAE)は有効な選択肢になり得ます。ライセンスの上限を気にせずに計算ノードを増やしたり、クラウドのAPIと連携させたツールの開発がしやすいためです。そんなわけで、先日(2017年12月7日~9日)行われたオープンCAEシンポジウムに参加してきました。
▲会場の名古屋大学
参加した講習会・講演
12月7日
12月8日
一般講演A1【流体解析1: 6件】
一般講演A2【燃焼・伝熱解析1: 6件】
パネルディスカッション「テーマ:これからのCAEを考える」
12月9日
賛助会員LT(1)
特別講演「トヨタ自動車での自動車の衝突シミュレーション技術の現状」
一般講演D1【企業内利用・支援ツール: 7件】
一般講演C2【HPC: 7件】 C25にて発表(スライド)
賛助会員LT(2)
技術講演
感想など
各講演を聞いた感想を、3点挙げます
オープンソースであるが故のクラウドとの相性のよさ
オープンCAEとクラウドの連携の多様さを改めて実感しました。例えば、TreeFoamを名古屋大学のスパコンやFOCUSと連携させた発表がありましたが、AWSと連携させて、ジョブ投入時に自動的に計算ノードをEC2でLaunchさせることもできそうです。CAEツールとクラウド連携の実例としては、すでにDEXCSとRescaleの連携が実現されています。また、Windows対応が難しいソフトウェアについて「クラウド上のLinuxで動作させてWeb GUIを提供することにより、Windowsからも利用可能にする」という話もありました。
設計者CAEの利点と問題点
これまでCAEによる解析は、専任の担当者(解析者)が行うことが多かったですが、設計者が設計図を描きながら使えるCAE(設計者CAE)が普及してきています。設計者CAEは、CADと連携して設計変更時の解析結果をすぐに得られて便利な一方、ブラックボックス的に使われしまう問題が起きているようです。このことについて、パネルディスカッションでパネリストから問題提起があり、各社の問題点が共有されたり、対応策が議論されたりしました。また一般講演D1では、設計者CAE含むオープンCAE活用法が、より具体的な紹介されました。
並列計算の実装の難しさ
一般講演C2では、様々な条件でのOpenFOAMの並列計算性能向上についての講演がありました。使用するソルバや実行する環境のコンピュータアーキテクチャによってボトルネックが全く異なっていて興味深かったです。7日のMPI講習会では、よく利用されるプロファイラの紹介もあり、並列計算最適化の研究の大まかな流れを把握できました。
発表してみた
一般講演C2のセッションにて「Amazon Web Servicesを利用したOpenFOAMバッチジョブの実行」とのタイトルで発表しました(スライド)。AWS BatchによるOpenFOAMのジョブの実行について、デモをしつつ紹介しました。質疑では「Pocket WiFiからでも利用できるか」「GPUは使えるか」など、クラウドを利用する上での前向きな質問をいただきました。また一般講演D1では、同じくパブリッククラウドであるMicrosoft AzureでOpenFOAMを動かしたとの講演があり、CAE領域におけるクラウドの広がりを実感しました。
▲一般講演C2が行われた講義室
さいごに
講習会、基調講演、一般講演、懇親会を通じて、CAEやHPCについて知るよい機会となりました。オープンCAEシンポジウム2017実行委員会の皆様に御礼申し上げます。