こんにちは。ディベロップメントサービス1課の山本です。
今回は、AWS が提供するブロックチェーンのサービスについて紹介します。
ブロックチェーン技術はデータの安全性を高めるために注目を集めていますが、どのサービスを選べば良いか迷っている方も多いかと思います。
そこで今回は、AWS のブロックチェーンサービスの特徴と選択のポイントについて詳しく説明します。
ブロックチェーンの基本的な知識については、過去のブログをご参照ください。
- この記事の対象者は?
- AWS のブロックチェーンサービス
- Amazon Managed Blockchain (AMB)
- Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)
- サービス選択フローチャート
- さいごに
この記事の対象者は?
この記事は以下の方々に向けて書かれています:
- ブロックチェーンの基本的な知識がある方
- AWS のブロックチェーンサービスについて学びたいソフトウェア開発者や技術者
- Amazon Managed Blockchain (AMB)や Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)の基本的な概念と使い方について理解を深めたい方
AWS のブロックチェーンサービス
AWS が提供するブロックチェーン技術を活用したサービスは下記の2つです。
- Amazon Managed Blockchain (AMB)
- Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)
QLDB は厳密にはブロックチェーンではありません。
しかし、データの保存方法はブロックチェーンと同様の仕組みを利用しているため、ブロックチェーンサービスの一種として挙げられております。
ブロックチェーン - ユースケース別クラウドソリューション | AWS
Amazon Managed Blockchain (AMB)
まず最初に、AMB について説明します。
AMB は、フルマネージド型のブロックチェーンサービスです。
Amazon Managed Blockchain(ブロックチェーンネットワークを簡単に作成、管理)| AWS
ネットワークの設定や管理、ブロックチェーンのスケーリングとセキュリティの問題を AWS が管理します。
AMB では、以下の 3 つのネットワークを利用することが可能です。
- 専用パブリックネットワーク
- サーバーレスパブリックネットワーク
- プライベートネットワーク
専用パブリックネットワーク
専有パブリックネットワークとは、パブリックブロックチェーンである Ethereum のネットワーク内に自分だけのノードを構築し、参加する方式のことを指します。
接続先のネットワーク、ノードのインスタンスタイプ、アベイラビリティーゾーンを自由に設定できます。
接続先のネットワークは、本番用の Ethereum Mainnet とテスト用の Ethereum Testnet(Goerli)の 2 つがあります。(2023 年 11 月時点)
本番用の Ethereum Mainnet では、実際の資産価値のある ETH(イーサリアム)を取引します。 一方、テスト用の Ethereum Testnet では、資産価値のないテスト用の ETH を取引します。
テスト用の ETH は無料で取得することも可能なので、ちょっと試してみたい場合には Ethereum Testnet を利用してみてください。
サーバーレスパブリックネットワーク
サーバーレスパブリックネットワークとは、パブリックブロックチェーンである Bitcoin のネットワークに参加する方式のことを指します。
専有パブリックネットワークとは異なり、ノードの設定や管理が不要なサーバーレスアーキテクチャを採用しています。
これにより、より手軽に Bitcoin のネットワークに参加することが可能となります。
接続先のネットワークも同様に、本番用の Bitcoin Mainnet とテスト用の Bitcoin Testnet の 2 つがあります。(2023 年 11 月時点)
テスト用の BTC も無料で取得することも可能なので、ちょっと試してみたい場合には Bitcoin Testnet を利用してみてください。
プライベートネットワーク
プライベートネットワークとは、AWS 内でコンソーシアムブロックチェーン用のネットワークを構築し、そこに参加する方式のことを指します。
これは主に企業向けの機能で、自分たちだけのHyperledger Fabricを利用したプライベートネットワークを作成し、そのネットワーク上で取引を実行します。
独自のスマートコントラクトの作成も可能で、自由度の高いシステムが構築可能です。
企業間の取引や内部の業務処理など、限定された参加者間での取引を行いたい場合に有用です。
Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)
それでは、次に Amazon Quantum Ledger Database (QLDB)について説明します。
QLDB は、AWS が提供するフルマネージド型の台帳データベースです。
このデータベースは、ブロックチェーン技術を利用して、データの変更履歴を不変で透明に保つことができます。
Amazon QLDB(フルマネージド型台帳データベース)| AWS
ただし、AMBと異なり、データベースが一つの中央集権型となっており、厳密にはブロックチェーンではありません。
QLDBはデータ項目を「ドキュメント」と呼ばれる単位で保存します。
この「ドキュメント」は完全な変更履歴を保存しており、PartiQL という SQL 互換のクエリ言語で取得することが可能です。
さらに、QLDB は「ダイジェスト」を利用したデータ検証も可能です。
ダイジェストは、特定の時点での台帳の完全な状態を表す一種のハッシュ値です。
ダイジェストのハッシュ値を、実際の台帳と比べることで、データ改ざんの有無を検証可能です。
以上のような特性から、QLDB は金融システムの取引履歴、製品の供給チェーン、デジタルコンテンツの所有権履歴など、データの変更履歴を確実に追跡し、検証する必要がある場合に有用です。
サービス選択フローチャート
今までの説明を元に、どのサービスを利用するべきを示すフローチャートを作成しました。 こちらを参考に、AMB と QLDB のどちらを使用するべきかを検討してみてください。
さいごに
AWS のブロックチェーンサービス、AMB と QLDB、それぞれには独自の特性と利点があります。
適切なサービスを選ぶことで、データの安全性を高め、効率的な開発を実現できます。
本ブログがどなかたのお役に立てれば幸いです。