大石が最近書いたこと

働き方改革 < 関係性改革

こんにちは、大石です。

最近、いろいろな場面で「働き方改革」についてお話する機会が増えてきました。
私達自身、過去6年に渡り様々なチャレンジを進めてきたので、トランアンドエラーの結果をお伝えすることは簡単にできるのですが、一方で「自分たちでは、働き方改革というキーワードは使わなかった」という事実とのギャップに戸惑ってもいます。
この戸惑い・違和感の正体はなんだろうか?と疑問に思っていたのですが、先日ある方のインタビューを受けていてようやく謎がとけました。

当社は13部署中6部署のマネージャーが女性なのですが、社内で「女性活用」というキーワードは出てきたことはありません。
ですが、インタビュワーの方に
「女性マネージャーがそんなにいらっしゃるなんてすごいですね。女性活用とかに取り組まれてきたんでしょうか?」
と聞かれたときにハッと気づいたんです。

よく日本語は「主語を省略する言語だ」といいますが、「女性活用」という言葉は、主語が「男性」なんですよね。
「男性が女性を活用する」と。
私達の会社で女性マネージャーが活躍しているのは、恐らくそういう視点が皆無で、純粋に能力・適性・動機・経験等を勘案してフェアに決めた結果だから、「女性にゲタを履かせる」ようなこともなく、みんな活躍できているんだと思うのです。

同じように、「働き方改革」というのも暗黙の主語が「会社」なんだと思います。
でも、別に今の若い人は(仕事を選びさえしなければ)いくらでも働き口はありますし、「会社が潰れたら転職すればいいじゃん」というのが普通の感覚なんではないかと思います。
つまり、「働き方を変えて生産性を上げてほしいのは、(今まで若手をこき使って利益を捻出してきた手法が使えなくなって)困っている会社側」なのであって、社員視点でみればサイボウズさんの広告のキャッチコピー

が本音なのではないかと思うんです。

これから人口、特に若い人が減って、人手に頼るオペレーションはほとんど不可能になります。人手不足で苦しんでいる会社が「人手が十分に足りている」という状況はもう二度と来ないわけです。
そう考えると、今変えるべきは「働き方」なのではなくて、「社員と会社の関係性」なのではないかと思うのです。

今までは、相対的に会社よりも若者の数が多かったので、若者が選ばれる側だった。だから入った会社に忠誠も誓うし、理不尽な命令でも従っていたわけです。
ところが、これからは若者の数が減って、若者に選ばれない会社は、老衰で死を迎えるしかなくなる。まさに死活問題になるわけです。

これは本当に本質的な変化です。
今まで業者だと思っていた会社が顧客になる。
弟子だと思っていた人が先生になる。
それと同等の大きな変化です。

だからといって「甘やかしてお客様扱い」するわけではありません。会社が潰れない約束など誰もできない世の中ですから、会社が社員に約束できる最大の報酬は「どんな会社にも転職できる能力をどこよりも早く身につける」ことだと思うのです。そのためにはお客様扱いするのではなく、きちんと機会とサポートを提供しなければいけません。これはこれからの日本企業の義務です。

一方で、理不尽な下積みや、ふるい落とし型の教育・育成はもう機能しません。あえて厳しい下積み・業務を経験させて「這い上がってきた奴を使おう」というスタンスでいると、若者の母数が多いうちは何人か残ってくれて会社に貢献してくれたのかもしれませんが、これからの社会では「そして誰も居なくなった」的なシャレにならない未来が待ち構えています。
私達でも、実際こんなことがありました。

当社では毎週月曜日に「朝会」と称して、私がとても「ありがたい」話を会社でするというとても「ありがたい」会があるのですが、その場に居なかった人でも私の話を聞けるように、新入社員が持ち回りでテキストに起こして社内Wikiに掲示する、というとても「ありがたい」仕事があったのです。
いわゆる「下積み」に近い業務ですが、一方で私の話を新入社員が耳ダンボで聞く羽目になりますので、私の想いを早く浸透させることができる、という効果を狙った「下積み」だったわけです。
ところが、新入社員にとってこれは苦痛以外の何者でもなかったらしく、ある日優秀な新入社員の一人から「この業務をお願いだからやめてくれ」という声が上がったのです。
昔の会社だったら「うるさい!いいからやれ!」で良かったのかもしれませんが、これから若手のパワーが何より重要になる社会において、若手の生産性よりも貴重は資源はありません。というわけで、今ではBox Captureで音声をそのままBoxに上げるというオペレーションに変えて、生産性と優秀な社員の動機づけ(どちらかというと離職の防止ですがw)につながった、ということがあったのです。

私たちはこのように考え、できるだけ「当社でしか通用しない業務」を排除しようと様々な工夫をしていますし、また「AWSの様な世界最先端のサービスを使い続ける」ことで、技術・営業スキル・人脈含め、自分の能力と経験を伸ばすために最高の環境を準備しようと努めています。

つまり、私達のはたらき方改革は、会社が命令してやってきたわけではなく、社員と会社との関係性を改革しようとして対話を続けてきた中で、結果として本気のリモートワーク活用やお昼寝スペースの設置、理不尽下積みの排除など、イマドキの働きかたになってきたというのが本当のところなのです。

私が、変えるべきは「はたらき方」よりも「社員と会社の関係性」と考える意図がみなさんに伝われば幸いです!

なぜエンジニアにはミュージシャンが多いのか

こんにちは、大石です。

先日BacklogCacooでおなじみヌーラボの橋本社長と話していたら、ヌーラボさんでも元ミュージシャンやバンドマンが多いとのこと。
当社にも「ミュージシャンを目指していたが途中でくじけて(やむを得ず)エンジニアになった人」とか「今でも趣味でバンドをやっている人」が数多く在籍していますが、これは決して偶然ではないように思います。
自分も多少音楽をかじっていたので確信があるのですが、音楽もITも使う頭の機能が似ているんです。

音楽そのものは「瞬間的」「流動的」で「形がなく」「あいまい」で「人によって捉え方が違う」という右脳的なものですが、「楽譜」という共通ルールで符号化するという左脳的作業によって、「ロジカル」で、「あいまいさを排除」し、厳密なものにして「再現可能にする」なものになっていきます。
もちろん、これは一方通行ではなくて、楽譜に落とし込んだあとに「演奏して当初の意図通りか検証」したり「現実に合わせてアレンジ」したりといった、楽譜と実際の音とをいったりきたりする工程が必要です。

エンジニアの仕事も酷似していて「業務」とか「要件」という、形がなくてあいまいで人によって捉え方が異なるものを、「コード」という共通言語で符号化することによって「厳密」かつ「再現可能」にすることが求められます。そして、音楽と同じように「コード化したものが現実に即しているのか」を検証して、それを修正したり、またコード化したりと、現実とコードをいったりきたりすることを繰り返し、現実世界を精緻に反映したコードができていくわけです。

素晴らしい音楽家の音楽を聞くと、作り手の感情や情景といった「あいまい」なものが鮮やかに聞き手の頭に再現されるように、優れたエンジニアが書いたコードやシステムは、業務や課題といったあいまいなものが鮮やかに解決されるわけです。よいエンジニアにミュージシャンが多いのは決して偶然ではなく、こんな共通点があるからなのではないかと思います。

 


 

ところで、このエントリを読んで「右脳とか左脳とか間違いだから、本稿の議論は意味がない」と感じた方へ。
本稿で述べたいことは「優秀なエンジニアと音楽家に共通する能力は、現実世界を知覚する能力と、厳密に符号化する能力との架け橋にある」ということです。そして現実問題として「イメージは右脳、ロジカルな思考は左脳が処理する」と認識している人が多いわけなので、比喩として出したわけです。ここで言っている「右脳」とか「左脳」というのは現実世界をざっくりと切り取るためのメタファーで、「形がなく」「あいまい」なものです。現実の「あいまいさ」と「科学的な厳密さ」とをブリッジして読んで頂ければ幸いです 😉

「国・政府」を「企業」に置き換えても違和感がなかった話

こんにちは、大石です。

経済産業省の「次官・若手プロジェクト」で作られた 「不安な個人、立ちすくむ国家」と題した資料がネットの話題をさらっています。

「よくやった」「そうだそうだ」という声と「データが間違っている」「何をいまさら」「処方箋が示されていない」という批判的な声の両方があるようですが、これは行政が作っているものなので、普通に考えて「処方箋出したらダメでしょ」と思います(「処方箋がないからダメだ」と批判する向きには「三権分立って知ってますか?」と聞いてみたいのですが・・)。
一般論で言えば、行政に携わる官僚の方が、選挙で選ばれる任期制の政治家よりも長期に渡って国の仕事をすることになるでしょうから、長期視点に立ち「このままポピュリズム的シルバー民主主義だとまずいよ。若者の教育に投資を振り向けてくれるまともな政治家に投票するムーブメントを一緒につくろうよ」というSOSだと見るのが妥当ととらえました。
そうして読めば、下手に処方箋という名の行政権を超えた提言をするのではなく、データに基づいた国家設計の1つの方向性を示して「国民の投票活動にポジティブな影響を与えよう」とするギリギリの努力が垣間見え、私は「すばらしい知的な努力の結晶」と感じました。

ところで、これを読んでいて気づいたのですが、ところどころ「国」とか「政府」などと書かれているところを「会社」と読み替えても違和感がないんです。

これには愕然としました。なんとなく、日本人の感覚として「国はだらしないけど、企業は国よりはマシ」という認識があると思うのですが、「本当にそうかしら?」と思うほど似ているのです。

当たり前ですが、組織が小さいほうが機敏に動けるので、私もよく「ベンチャーは社会実験だ」といろいろなところでいいますし、クラウドにしても社内の制度やはたらき方改革にしても、私達の取り組みがうまくいけばそれを大企業とか社会に伝えていくのが、企業人としてのミッションだと思っています。社会の変化は、どうしても組織のサイズという観点から「民→官」の順になると信じていました。
ですが、上の対比をみるにつけ、本当に「国よりも進んだ位置にいなければいけない企業で、将来に向けた取り組みができているんだっけ?」と思わざるを得ないわけです。

 

働き方改革から「関係性改革」へ

 

この資料でも何度も取り上がられている様に、これから日本では「若者が減る」社会になります。そしてそれは二度と覆らないわけです。そうした状況下で会社が「働き方を変えろ」と若手に言っているのは滑稽ですらあります。

今までは会社が若者を選別する時代でした。ところが、若者が貴重な資源となる今後は、若者が会社を選別する時代 になるわけです。
若者が減る時代の企業経営に求められることは「若手に来てもらう経営」であって、これをやらなければ(今まさに日本という国が老人とともに沈没しかけているように)企業も老人とともに年老いて滅びるしかない、ということを意味しています。
つまり、変えなければいけないのは「働き方」ではなく「社員と会社の関係性」なのです。私たちはこれを「関係性改革」と呼んでいます。
今まで業者だと思っていた会社が突然顧客になる。今まで生徒だと思っていた人が突然先生になる。それと同種の変化が、社員と会社の間に起こり始めていて、そしてそれは二度と逆転することのない不可逆的なものであるわけです。

 

若手社員≠お客様

 

ですが、それは「会社が若者をお客様扱いしろ」というわけではありません。
本資料のP32が示すように

「若者は貢献意識に溢れていて、何か役に立つことをしたいと思っている」

という意識は事実として示されていますし、私達の実感とも合致します。社会のためになる仕事をしたいという想いは、私が社会人になったときの同世代人よりも、今の新入社員の方により強いものを感じます。
しかし、そういう取り組みを支援する社会的な合意や基本的な仕組みが欠落している。そういう風に若手が捉えてしまい、「頑張っても報われない」と諦めてしまっている姿がすけて見えます。

逆に言えば、

  • 会社がきちんと社会的に意義のあるビジョンを示して
  • 若手でも活躍できるチャンスを与えて
  • 将来に渡る持続的な居場所とつながりを提供すれば

会社という仕組みはまだまだ機能するし、若者も会社も活躍できる可能性を示唆しているわけです。

 

シルバーワークス構想

 

一方で「居場所のない定年」についてはとても解決の難しい問題です。すべての会社は、放置すれば人口動態に沿って年配の比率があがっていきますし、どんな人でもどんな会社でも、老いは避けられません。
私は、この問題を年齢層ごとの会社分割で解決したいと考えています(ちなみに分割後の会社の名前は「シルバーワークス」という名前にしようかと思っており、ドメインも取得済みですw)

  • コンセプト
    • サーバーワークスの社員のうち、希望する55歳(くらい)以上の人がシルバーワークスに転籍できる
    • シルバーワークスは定年なし
    • サーバーワークスの仕事のうち、古いシステムの運用、過去の経験、古い知識などが求められる仕事を請け負う
    • シルバーワークス社長は(会社の中で相対的に)若い人がやる
    • 完全成果報酬型なので、逆に成果を出さなくても堂々と会社に居られる(会社の仲間とお茶のみ仲間の狭間)

 

はっきり言って、このアイディアがうまくいくかどうかはわかりません。ですが、私自身「シルバーの問題はシルバーでなければ解決できない」と確信していますので、自分のライフプランとしてやりきろうと思っています。資料でも提言されている「働ける限り貢献する社会」というイメージですね。
当社にも御年74歳の監査役がいらっしゃいますが、お元気ですし、何より貴重な戦力です。74歳になられても、ベンチャーに必要な人はたくさんいらっしゃる、ということを体現されていて、「あんな風に歳を取りたいなぁ」と私を含めてたくさんの人が思っているんじゃないかと思います。

 

私達のチャレンジ

 

この資料が示すとおり、「放置すれば老衰による自然死」が確定している現在の状況を指を加えて傍観しているわけにはいきませんので、サーバーワークスとしてもいろいろと手を付け始めています。

  • いまやっていること
    • 関係性改革=来てもらう&居てもらう経営
      • 出社したくなる会社の設備(と、無理に出社しなくてもよい制度)
      • 転職したくなるような企業風土マーケティング
      • 新卒でも早くから活躍できる制度と文化
    • 事業の社会的な意義
      • 「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンとそれに即した事業
    • はたらきやすい環境づくり
      • 本気のリモートワーク+全システムのクラウド化
      • 時短でも正社員
      • 転勤0(ローカル採用・ローカル勤務)
      • 女性でも男性でも育児参加を支援
      • 叱責しないカルチャー(失敗を個人の責任にしないルール)
      • 自動化自動化アンド自動化
    • これからやろうとしていること
      • 「人が少なくなる時代の、企業のITインフラ」をクラウドで支えること
      • 自分たちのワークスタイルや成功体験を広めること
      • シルバーワークスの様な会社をつくって、若い人から年配の方まで、すべての人が永く活躍できる場をつくること

 

いろいろと端折って書いていますが、「来てもらう&居てもらう経営」「はたらきやすい環境づくり」については様々なトライ&エラーの蓄積ですので、回を改めてこちらのブログでも書く予定です。

 

まとめ

 

この資料について「データの確からしさ」とか「言葉じり(上から目線?)」「100点の人生って何だよ」など枝葉にアレコレ言っている人は多く見受けましたが、「若者もシルバーも両方が活躍できる社会をつくろうぜ!」という幹の部分に異を唱える人はほとんどいないと思います。

私は企業経営者という立場から「私ができることをやる」というスタンスですが、資料P61の「意欲と能力ある個人が公の担い手に」とある通り、個人でも企業でも、いろいろとできることはあると思います。

サーバーワークスでは、オリンピック/パラリンピックの期間中はお休みにすることを明言していますが、それは「企業という社会の一員として、ボランティア活動をやることが相応しい時はボランティア活動をしよう」と考えているからですし、また今回提言されたような課題に対しては「社会の問題に対しては官も企業も個人もなく、オーナーシップをもって取り組もう」と考えた結果、小さいながらも上記の様な行動につながっているわけです。

少しでもよい社会を創るためにも、これを読んでくださった皆さんと一緒にできることから始められれば幸いです!

新しくマネージャーになる皆さんへ

当社は3月から新しい期に入りますが、来期に向けた新しい組織やマネージャーも決まり、何人か新任のマネージャーも誕生することになりました。

以下はあくまで社内向けのメッセージですが「サーバーワークスではこんな考えでマネージャーを任命しているんだ」ということを知っていただく意味でも、こちらでシェアしたいと思います。

マネージャーのみなさんへ

新しくマネージャーに就任された皆さん、おめでとうございます!みなさんは、今素晴らしいチャンスを手にしています。

マネージャーのチャンス

  • 知ることができる範囲が広がる
    私たちは「原則オープン」の会社なので、マネージャーしかしらない情報というのはあまり無いのですが、それでも「マネージャーだから集まる情報」というものは一定程度あると思います(例えば評価の情報)。社内での情報差は少なくとも、社外の方は「マネージャーに伝える」「マネージャーだから伝える」という行動を取るでしょうから、必然的に得られる情報の範囲が広がります。多くの情報が得られるということは、多くの選択肢を得られるという意味で良い機会だと思います。
  • 自分の能力を開発できるチャンスが増える
    当然ですが、「やれること」を続けても能力は伸びません。能力開発・成長とは「できるようになる範囲が拡がる」ことを言います。自分のやれていないこと、やってこなかったことにチャレンジして、できるようになって、はじめて成長したと言えるわけです。マネージャーという新しい仕事は「自分がやってこなかったこと」に対するチャレンジという意味において、成長の機会といえます。
  • キャリアの幅が広がる
    良いか悪いかはこの際おいておいて、課長は課長として、部長は部長として転職する機会がほとんどです。一人として「転職してほしい人」などはいませんが、(逆説的ですが)「サーバーワークスでしか生き残れない人」はマネージャーとして適任とは言えないと思います。能力をポータブルにすることはとても大切で、「いつでも転職できるけど、それでもサーバーワークスでマネージャーとして活躍する道を選んでいる」という状態であってほしいと強く願っていますし、「自分はいつでも転職して別なキャリアを形成することもできる」という状態を保つことは、精神衛生上も好ましいことだと思います。その意味で、マネージャーになるということは「キャリアの選択肢が拡がる」といえます。
  • 給与があがる(かもしれない)

    上役が下より高い給料をもらうのは、優秀だからではない。上役の方が責任が重いからだ。その責任の中には、必要なときに手を貸すこと、手に負えない事態から救うこと、守ることが含まれている。 ---カーリー・フィオリーナ

    当社の場合、役職とグレードを分離しているので、「マネージャーになったからといって給与があがるとは限らない」制度になっていますが、マネージャーに任じられるということは少なくとも期待はされているわけですから、給与があがる可能性が高いということはいえます。

私の知る限り、マネージャーに昇進することによるデメリットはほとんどありません。一部の会社では管理職になって残業代がつかなくなる、などということがあるようですが、当社の制度がそのようになっていないことはみなさんご存じの通りですし、そもそもマネージャーが残業代で稼ごうと思うような会社に未来があるとは思えません。ほとんどの場合「知らないから恐れている」だけだと考えられます。そこで、「知らない恐怖」を少しでも払拭するべく、以下に10のガイドを記したいと思います。

マネージャーへの旅を楽しむガイド


(1) 期待が変わったことを理解すること

みなさんはこれから「メンバー」から「マネージャー」というロールに変わります。ロールが変わるということは、期待も変わる、ということになります。
殆どのケースで、マネージャーは実務能力が高いからマネージャーに選ばれているのだと思います。実は これが大きなワナ です。今までは個人での実務を期待されていたのに、これからは突然「チームでのパフォーマンス」を期待されるのです。この変化に気づくことはとても重要です。マネージャーに任命された方は「チームメンバーのみんながあなたの様に成果をあげられるようになってほしい」「チームとして成果をあげてほしい」ということを期待されているのであって、「今まで通りにやってほしい」ことを期待しているわけではありません。まずこのことを再認識しましょう。

(2) 高い目標を設定すること

特に新任のマネージャーにありがちですが、感覚がわからないために「できること」に絞って小さな目標を設定してしまうケースが散見されます。が、これはあまり良いようには思えません。マネージャーへの期待という点では、「高めの目標にチャレンジし、結果として未達だったとしても、マネージャーも、チームメンバーも、会社もみんな成長することができた」という姿が理想的な姿です。「目標を達成したかどうか」よりも「全体として成長できたか」の方がより大切です。10%成長の目標を110%で達成したマネージャーよりも、30%成長の目標を95%で未達だったマネージャーの方が私は「優秀」だと考えます。
例えば野球で「出塁率」の様な小さな目標を立ててしまうと、ツーアウト2・3塁でフォアボールを選んで喜ぶようなことがおきてしまいますが、それよりもスリーベースを打ってさらにランニングホームランを目指したが、結果ホームでアウトになってしまった。でもチャレンジして2点とった、というぐらいの人の方が、チーム全体のパフォーマンスという点では期待には沿っていると思います。

(3) 会社のリソースは借り物であることを忘れないこと

特に新任のマネージャーは、メンバーをとても大切にする傾向があります。これ自体は良いことなのですが、意図せず「チームを不必要に護ってしまったり、さらに外界と隔絶されたガラパゴスを作ってしまう」ことが起こります。その結果、マネージャー自身の評価が下がってしまったり、メンバーが異動しにくい・他のチームと交流しにくい状況が生まれてしまっては「メンバーのためを思って」した行動が裏目になってしまいます。
メンバーや予算といったリソースは所有物ではなく、あくまで「借り物」です。会社の都合で期中で増減しなければいけないことも起こりえます。そうした場合に「取られた」とか「押し付けられた」などという感情が湧き上がったら要注意です。そうした感情は「チームは自分のもの」「自分のリソースは自分のもの」という思い込みがあるから湧き上がっているのだと考えられます。
リソースは「借り物」であることを忘れず、いつどんな場合でも、手持ちのリソースでベストを尽くすことに常に意識を集中しましょう。

(4) 他のマネージャーを大切にすること

マネージャーになって視座が高くなると余計に感じるものと思いますが、基本的に仕事で「自分のチームだけで完結する」というものはほとんどありません。仕事というものは、本質的にマーケ、営業、技術、総務、経理、人事、役員、いろいろなチームの人たちが連携して動いて、初めてうまくいくものです。しかも他の部署のマネージャも、たくさんの業務やいろいろなミッションを持っており、同じような悩みや苦労を抱えています。こうした「同じ目標に向かいつつも、同じ悩みをもつ同志」を大切にして、仕事の連携を良くすることで、結果として全体のパフォーマンスがあがるわけです。
特に新任のマネージャーは、どうしても「自分のチームのパフォーマンス」を気にしてしまいますが、会社全体で見るとパフォーマンスというものは「チームとチームの間のパイプの太さ」によって既定される場合がほとんどです(ボトルネック)。

下の図はこの考えを示したモデルです。

(1)でチームのパフォーマンスを倍にするよりも(それはとても大変なことですが!) (2)の様にチーム間の連携をスムーズにする方が、会社全体のスループットは上がるということを示しています。

こうした「チーム間のパイプを太くする動きをすることで、全体のスループットがあがる」という認識があると、他のマネージャーを大切にすることの意味も理解できると思います。その認識と行動が、あなた自身によりよい結果をもたらすはずです。

(5) メンバーの能力を引き出すこと

先の「借り物」のところでも言ったとおり、メンバーはあなたの所有物ではありません。ですが、能力と成果を引き出すことについては、マネージャーにその役割が期待されています。「部下を思い通りにコントロールする」という発想を捨てて、メンバーにどのような能力があって、その能力をどのように引き出すとチームのパフォーマンス(成果)につながるのか、メンバーの成長が促されるのかを常に意識しましょう。

(6) 会社の意向を咀嚼して、実行に移すこと

マネージャーになると、会社からの要求が一段抽象的になります。例えば会社のトップが「火の用心」というビジョンを示した時に、マネージャーがメンバーに同じように「おい、火の用心しろよ」というだけでは、なんの実効性もありませんし、マネージャーが居る必要性もありません。
会社が「火の用心」と言っている場合、他の部署と連携して、誰かが水槽を用意すれば、自分の部署はポンプを用意する。別な部署が火災報知器を用意したら、他の部署は消防車を用意する。そしてそれが常に稼働するような計画を立て、実際に実行する、といった具合に、抽象的な目標やビジョンを、具体的な行動に咀嚼(翻訳)して計画と行動に落とし込む必要があります。これを今までと同じように「やるべきことが降ってくるもの」と思っていては、1の「会社の期待が変わったこと」に対応できませんし、5の「メンバーの能力を引き出す」こともできません。
こうした「会社のビジョンを仕事のアクションアイテムに翻訳する」こともマネージャーの大切な役割の一つだと認識しておくと、自分への期待、やるべきことも一層はっきりするものと思います。

(7) 新聞を読むこと

マネージャーになると高い視座が求められます。そしてそのような視点を持っていると、会社の方向性、ミッション、お客様の意思決定など、実に様々なものが「流れ」の中で決定されることがわかってくると思います。こうした「社会の流れ」を掴んで置くことは、マネージャーが様々な意思決定をする上でとても大切です。なぜ今「はたらき方改革」なのか。なぜ今AIが注目を浴びているのか。クラウドは社会からどのように認識されているのか。1社1社歩いて聞いてきても同じ情報が得られるかもしれませんが、マネージャーにそんな時間的な猶予はありません。新聞の様な、より効率的かつより公平なメディアから情報を得ることが、高い視座を持つ上で有効に機能すると思います。
(ちなみにtwitter、facebookなどは「流れ」を見るためには不適なメディアです。こうしたSNSは基本的に同じクラスターの人が集まりますので、自分のクラスターに不都合な事実は隠蔽されてしまったり、過小評価されてしまいます。流れを見るためには情報の偏りを避けることが大切で、そのためにあえて「新聞」と言っています)

(8) 判断の評価軸を明確にすること

マネージャーになると(それまでよりも)いろいろな決定に関わる機会が増えることになります。その時、メンバーに「あのマネージャーは、こういうときは○○と判断するはずだ」と認識されているか、それとも「聞いてみないとわからない」と認識されているのかは大きな違いがあります。
判断の軸がまちまちであったり、気分によって回答が違ったりすると、メンバーは気分が回復するまで相談を躊躇したり、都合の悪い情報を隠蔽したりするようになるかもしれません。これでは正しい情報が集まらず、チーム全体の意思決定のスピードも遅くなってしまいます。
幸いサーバーワークスでは「行動指針」という形で意思決定の大指針が提示されていますが、それでも行動指針は大きな枠組みであり、細かい判断はまだまだマネージャーに委ねられているのが実状です。そうなると、「自分のチームでは、こういう軸で判断する」という評価軸を明確にし、それを自分の気分や思いつきで変更しない運用をすることが、メンバーが精神的に安心して相談できる環境の醸成につながります。

(9) 自分の成果を見える化すること

今までメンバーだったときは、自分が「課長に見てもらう」立場でした。今度からはメンバーを「見る立場」に変わるわけですが、ここで「そうはいっても、会社全体から見られる立場になった」ことを忘れてはいけません。自分の役割や仕事に誇りや自信を感じていればなおのこと、「自分はこのような成果を成し遂げた」ということは誰からも明らかにするべく、見える化しなければいけません。
4の「他の課長を大切にする」でも述べた通り、会社全体のスループットという観点では、実は「チームそのもののパフォーマンス」よりも「チームとチームの間の連携」の方がパフォーマンスに与える影響は大きいのです。ところが一般的に評価というのものはチームのパフォーマンスに焦点が当たっていますから、自分たちの行動の結果、連携がどのようによくなって、どの程度会社全体のスループット向上に貢献したのかは、マネージャーが率先して公開しないとわからないものなのです。
サーバーワークスであればQuestetra BPMを使ってチーム間のワークフローを自動化していますが、例えば「ワークフローを作ることで、業務が省力化された」とか「ワークフローの改善でデリバリーまでのスピードが短縮化された」といった事実は、マネージャーが意識的に見える化することで初めて認識されます。これは、会社全体のためにも、メンバーのためにも、そして何より自分の評価のためにも大切なことです。

(10) マネージャーという役割を楽しむこと

仕事の肩書きというものは、あくまで会社運営が楽になるように考えられた「役割」です。「ロミオとジュリエット」に2人も3人もロミオが居ては劇は成り立ちません。誰かがロミオに、だれかがジュリエットを演じて、他の誰かがエスカラスやロレンスを演じることで初めて劇として成立するわけです。
同じように、役割というものも「会社」という舞台を成功させるために、あなたに割り振られた「役割」です。上の1〜9を参考にして見事演じきることで、更に大きな役割を与えられたり、場合によっては主人公に抜擢されることもあるわけです。
せっかくみんなで一緒の舞台に立っているわけですから、この劇が見事成功するように、自分の持ち場を演じきって、より大きな喝采をあびましょう!

 

マネージャー(課長、部長)への昇進、おめでとうございます!一緒に新しいロールを楽しんでいきましょう!

新年のご挨拶

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中に賜りましたご厚情に、厚く御礼申し上げます。

既に各所で報道されているとおり、2016年もAWSのマーケットは順調に成長し、当社も歩調を合わせて成長することができました。日頃より当社をご愛顧くださっているお客様、パートナーのみなさま、素晴らしいサービスを提供してくれているアマゾンウェブサービスジャパンの皆さま、そして成長を支えてくれている社員とそのご家族の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

例年この場で「去年のn大ニュース」の様なことをお伝えしていたのですが、実は昨年は「ビッグニュース」が少ない1年でもありました。ニュースらしいニュースというと「3年連続のプレミアコンサルティングパートナー」くらいなのですが、実はある程度想定できていたことで、今年に向けていくつかの大きな取り組みを仕込んでおり、そのためもあってニュースの少ない年になりました。
ジャンプの前にはしゃがむことも必要ですので、今年のサーバーワークス・ジャンプをぜひご期待いただければと思います。

個人的には、家族の事情があって生まれて初めて東京で年越しをすることになりました。年末年始は新潟で過ごすことが恒例だったのですが、今年は東京でないとできないことをやろうと思い、ご近所の護国寺で除夜の鐘を横目にお参りをしつつ

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念願のスターバックス福袋を入手しました!

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(当社にはスタバ部という謎の部活があるのですが、早速部長にも報告しておこうと思います)

まとまった休みの時は家族4人でカタンという人気のボードゲームをするのが好例なのですが、ついに子供が強くなり勝てなくなってきました。狡猾な手口で狙い撃ちにされたり、予想しない戦略で痛めつけられると本気でイラっとします。このゲームほど子供の成長を喜べない遊びはないと思いますので、お子様が大きくなってきたご家族はご注意下さいませ。

私はカタンをやるときに「最長交易路」という「最も長い道を作る」戦略を立てることが多いのですが、私たちの仕事にも似たところがあるのではないかといつも思っています。
道無きところに道を作り、開拓し、発展する。ボードゲームをやりながらも、自分たちの仕事に重ね合わせ、同じように楽しんで行きたいと考えております。

今年も一年、公私共々どうぞよろしくお願い致します。

日経ビジネス特別版で、ワールドホールディングスさまの事例を公開しました

こんにちは、大石です。

11月21日発売の日経ビジネスに「ビジネス革新を加速させるクラウドサービス」という特別版が同梱されていますが、こちらに当社のお客様であるワールドホールディングス様のAWS活用事例を公開致しました。

ワールドホールディングス様は、人材派遣業で業界4位、連結従業員1万4千人近くを擁する大企業です。こうした企業が「インフラは全てAWSに移行する」「そのためのパートナーとしてサーバーワークスを選択する」という判断をして下さっています。こうしたお客様のサポートができることは私たちとしても誇りに思いますし、事例として公開できることになりテンションも上がっています。

お客様からの問い合わせや案件数を見る限り、企業でのAWS導入はかなり進んできている実感はありますが、それでも未だ多くの方から「オンプレの方が安いのではないか?」という意見を頂くことがあります。

当然ワールドホールディングス様にもこのような疑問はあったはずなのですが、私がインタビューさせて頂いた時に、「当社はもともと人材派遣業がメインだったため、クラウドを使う判断は簡単だった」というお話を伺いました。つまり、

  1. 人材派遣とは「コアコンピタンスに集中し、コアでない業務はアウトソースする」ために利用するもの。当社がそうした事業を営んでいる以上、自分たちも「コア業務には集中する。それ以外(ITのケースでいえば、サーバーやインフラの所有・維持)は積極的にアウトソースするべきだという考えが元々あった
  2. 人材派遣業では時間の感覚を厳しく持っているため、IT資産を持つことによって発生するシステムの維持管理コストを厳しく見ている。その結果、クラウドに移行した方が大幅なものTCO削減が実現できると試算した。実際に移行したところ、80%ものTCO削減が実現できている

 

私も企業経営者として「時間よりも貴重な資源はない」と思うのですが、ワールドホールディングス様のように「業務にかかる時間をシビアに計算する」という考え方がもっと広がれば、クラウドの活用が進むだけでなく、 社員に無駄な時間を使わせない という意識にもつながり、残業の抑制やブラック化の歯止めにもなるのではないかと思うのです。

これをご覧の皆さまも、もし会社で「オンプレの方が安い」などと言われたら

「では会議で配る資料も手書きにしますか?」

と問うてみて下さい。

複写機を使った方が圧倒的に早くコピーできるので、多少の投資をしてでもみなさん複写機を使っていらっしゃるのだと思います。

comparison-between-onpremise-and-cloud

同じことはITの世界にも言えます。見た目の目的はオンプレとクラウドで変わらなそうですが、実際には「所有することによってまとわりつく不必要な業務」が大量に発生します。こうした違いは、結局のところITインフラの維持コストに、最終的には企業の競争力に影響してきます。こうしたムダを省き、より迅速に、変化に適切に対応できるインフラを持つことは、企業経営として自然なことの様に思われます。

 

人生とは時間そのものです。時間より貴重な資源はないと断言できます。

少しでも多くの人が、ハードを持ってしまったばかりに生じた「何も生まない」仕事から解放され、より人間的な、生産的な活動に従事できるようにするため、これからもクラウドが持つ “Super Power” を皆さんにお伝えし続けようと思います。

サーバーワークス アドベントカレンダー1日目 – re:Invent 2016の会場より、プレミアコンサルティングパートナー認定のお知らせ!

こんにちは、大石です。

早いもので今年も12月。サーバーワークスのアドベントカレンダー初日を迎えました。

今年もAWSが主催するワールドワイドカンファレンス “re:Invent 2016” がラスベガスで行われており、このブログもラスベガスの会場から書いております。

ここで毎年、AWSのパートナーランク最上位である「プレミア コンサルティング パートナー」の発表が行われるのですが、当社も2017年のプレミアパートナーに認定されました!

Premier Partner in 2017

パートナーの成長についてもいくつかユニークな数字が発表され、

  • Fortune 100社のうち90%以上がAPNパートナーを使っている
  • MSP認定パートナーは年間130%成長している

といった事実が紹介されました。

一般的に「米国では自社で開発・運用を行うのでSIerに頼む習慣がない」と言われますが、現実的にAWSのサービス規模と顧客がAWSに期待する効果から考えると、米国の企業ですら、自社でAWSのエンジニアを採用したり育成したりするよりも、AWSパートナーに頼んで早くクラウドトランスフォーメーションを進めよう、と考えていることが分かります。

日本からも新たにNTTデータ、NECの2社がプレミアコンサルティングパートナーに加わり、AWSとしてもエンタープライズ用途での利用拡大に期待していることが窺えます。私たちは2009年から エンタープライズグレードのお客様にAWSを効果的にお使い頂くサポートを専門で行ってきた 知見を活かし、これまで以上のスピードで、事業の拡大とお客様に提供できるサービスの質・量のアップを図って参ります!

現地時間の11月30日にはAWSのCEO アンディ・ジャシー氏によるキーノートスピーチも行われ、AI, IoT, ビッグデータ分野でそれぞれAWSらしい、ユニークなサービスの発表がありました(個人的にはRekognition, LEX, Greengrass, Athenaに注目しています)。

発表の内容については、当社の技術ブログでこれからレポートする予定になっているほか、大阪では R3さんと共同でre:Invent解説イベントを行うなど、各種イベントを通じて皆様にもお伝えする予定ですので、ご興味のある方はぜひこちらもご覧下さい。

AWSの成長は本当に驚くべきスピードで、2016年もYoYで55%成長とのこと。売上1兆円の企業が50%以上の成長を達成しているということも驚きですが、これだけの規模で拡大している場所でビジネスができることは、当社にとっても、当社ではたらくエンジニアにとっても大きなチャンスと言えます。会社にとってはもちろん成長と発展が見込めますし、エンジニアにとっても、新しいサービスやイノベーションが起きている爆心地の近くで仕事をすることで、より早く新しいサービスに触り、技術力を磨く機会が継続的に存在することになります。

これからもこの 恵まれた環境を活かし、成長にコミットして、そして私たちの「クラウドで、世界を、もっと、はたらきやすく」というビジョンの実現に邁進していきたいと思います。

これからも応援のほど、どうぞよろしくお願い致します!

クラウドジャーニー(AWS Summit 2016を終えて )

こんにちは、大石です。

今年もAWS Summitが開催されました。当社も4年連続ゴールドスポンサーとして出展しまして、国内クラウド業界で最大規模となったお祭りに出展者側として参加いたしました。
既に沢山のレポートがあがっていますので詳細はそちらに譲るとして、私が印象に残ったことを1つだけ挙げるとするなら、AWSJ長崎社長のキーノートで提示されていた「クラウドジャーニー」というキーワードです。

「全ての組織はユニークだが、クラウド導入における共通のパターンはある」

 

そのパターンとして
1. プロジェクト単位での導入
2. 本格的に導入する前の基盤整備
3. 移行
4. AWSへの最適化
の4つの段階があることが示されました。

 

cloud-journey.png

 

これは私たちの実感とも完全に一致しています。特に最近は1-2の段階から「実際に数十〜数百のサーバーやシステムを、どうやってAWSに移行するのか?」という課題が増えてきており、クラウドジャーニーもいよいよ「移行」がメイントピックになりつつある、と感じています。

中間解としての “Lift-and-Shift”

こうした状況を踏まえて、当社からは「Lift-and-Shiftという移行アプローチ」についてご説明させて頂きました。どうしてもAWS移行というと、Redshift, LambdaやDynamoDBといった「イケてるマネージドサービスを使うのが善で、それ以外は悪」のような風潮がありますが、実際に大きな規模の会社や巨大なシステムで一挙にクラウドネイティブ化をすすめようとしても、組織の問題やアプリケーション書き換えの問題などで頓挫してしまうことも考えられます。
そのため、「まずはas-isでAWSに移行して、それから順次マネージドサービスに切り替えていく」というアプローチが採られるケースが増えている、というお話をさせて頂きました。

実際、私たちが過去のAWS Summitで発表させて頂いた丸紅様、横河電機様などの大規模な事例も、このように「まずLiftして、それからクラウドらしくShiftしていく」というアプローチを採られています。

サーバーワークスからの発表

そして、当社からはこうした状況も踏まえて以下の発表を行いました。

1. Cloud Automatorに「構成レビュー自動化」を追加
これまでCloud Automatorは「ジョブ自動化」に特化していましたが、さらに「構成レビュー自動化」の機能を追加致しました。

 

 

お使いのAWS環境が、予め決められたポリシーに従って運用されているかどうか、Cloud Automatorが自動的にチェックする、という機能です。

 

2. 新サービスpieCeの発表
これまで「課金代行サービス」と称して、AWSの利用料を円建て・請求書払いを受け付けるサービスは提供して参りましたが、これを拡充し、「AWS構築ガイドライン+Cloud Automatorの全機能+東京海上日動火災保険が提供するAWS保険」をセットにして、今までと同じプライスで提供するAWSの請求代行サービスを提供致します。

 

3. 社内ツール Yambda のお披露目
最後に、これまで外部にお伝えすることが殆ど無かった社内プロジェクト “Yambda” についてもご説明させて頂きました。当社ではこうしたツールを使ってCloud Formationのテンプレート、ドキュメント、テストコードなどの生成を自動化しているから、素早く、そして正確なデリバリーができるということをお伝えさせて頂きました。

 

yambda.png

 

実際、社内では既に90%近いプロジェクトでこのツールによる構築の自動化が実現できています。

 

そして(具体名は出しませんでしたが)、移行ツールの拡充によって「ダウンタイムの極めて短いAWS移行サービスを今夏に提供する」ことも発表させて頂きました。当社は先日「移行コンピテンシー」の認定も取得しましたが、サードパーティーとの連携も強化し、移行サービスもさらに拡充して参ります。

来年は・・・?

来年はIoTの実例がかなり揃ってくると思います。
また、IoTやAIといった新しいパラダイムを取り込むには「クラウドでなければ実現できない」という(既にクラウドに取り組んでいる人からしてみれば至極当たり前のことが)ようやく事実として広く認められる様になっていると考えられます。
私たちとしても、以前からお伝えしている「コードを書かなくてもここまでできる!」というお客様の実例を多数用意して、何年も前からコンセプトとして掲げてきた「作らないSI」、つまり「コードレスアーキテクチャ」が現実解であることをご覧に入れたいと今から意気込んでいます。

 

 

ところで・・・
今回のAWS Summitの1-2日目は風邪を引いてしまいまして、ダウンしてしまっておりました。わざわざブースにお越し下さった方がたくさんいらっしゃったと聞いております。大変失礼致しました。来年はばっちり体調を整えて、3日間フル参戦したいと思います!

システム内製化の罠

こんにちは、大石です。

先日JAWS DAYSというJAWS(AWSユーザー会)の会合があり、私もパネラーの一人としてお話する機会がありました。そこで既存のSIerを袋だたきにしようという企画があり、そのときの内容が日経ITProで記事になったようです。こちらのパネルディスカッションの内容について、話しきれなかったことをお伝えしたいと思います。

最近いろいろなところでシステムの内製化なるキーワードを耳にします。要は「システムは社内で作った方がいいからその為の人は自社で抱え込もう」という話です。
こういう話が出てくる背景には、いくつかの典型的な要因が考えられそうです。

  • ベンダーへの不
    昨今ユーザー企業とITベンダーとの間の巨額な訴訟問題がニュースになったり、品質の低下やスピードの欠如など盛んに喧伝されています。外部のベンダー(SIer)に対して様々な不満がたまっているであろうことは想像に難くありません
  • リソースの逼迫
    更に頭が痛いのが「リソースの逼迫」です。ベンダー側も人手不足で、単金があがったり場合によっては仕事を断られたりして、必要な時に想定されるコストでオーダーする「便利なアウトソース先」としての利点が薄れています。ベンダー側もこれを補うために経験不足のスタッフをいれたりオフショアしたりした結果、品質の低下を招いてしまうといった悪いスパイラルが生まれています
  • ビジネスのデジタル化への遅れ
    ユーザー側には「もっと新しいことを提案して欲しい」という要求があるにも関わらず、なかなか具体的な行動には繋がっていないようです。これは仕方が無い部分もあると思うのですが、新しい技術というものは本質的に既存のやり方を壊したり効率的にするものなので、運用費用の低下を招いたり、既存の技術が使えなくなるなど「既存のベンダーにとって痛い方向性に進む」ものが殆どです。既存のベンダーに「君の会社に払うお金を少なくする提案をもってきてね(にっこり)」と言っても「いやいやいやいや」となるのが関の山です。こうした利益相反が「ベンダーからは新しい提案が出てこない」「ベンダーが先端技術に詳しいわけではない」という不満に繋がっているようです


こうした課題は大小を問わず多くのユーザーが抱えているようで、メディア等の記事を見ても「システム内製が正義で、外部のSIerを使うのは古くてダサい、間違った選択だ」という論調を目にする機会が増えてきました。
ですが、私はそうは思いません。
長期的に見れば、ユーザー企業によるシステムの内製化はうまくいかないと考えています。
これは、私たち自身が過去内製を行ってきた経験を踏まえて到達した、一つの結論です。

 

システムの内製化に何を期待するのか?

当然システムの内製化を試みる企業には、上であげたような一定の課題や不満があるわけです。そうした課題に対する解決策として内製化を期待することは合理的な判断に思えます。

  • スピードへの期待
    社内のリソースを使うわけなので、外部ベンダーの選定や契約手続き、業務理解といったプロセスを省くことができ、スピードが期待できる
  • コストへの期待
    外部リソースを使えばベンダーが得る利益の分システム開発コストが浮く。従ってアウトソースするよりも安く開発することができる
  • デジタル化への期待
    社内のメンバーであれば業務のことを理解しており、かつ最新のITにも詳しければ、クラウドの利用やIoT活用、O2Oモデルの確立などビジネスのデジタル化を進める上で最適である

 

なぜ内製化が答えにならないのか?

しかし、私たち自身が(小規模とはいえ)過去に内製化を行ってきた実績や、実際に大規模に内製を行っているユーザー企業の実態を見聞きした結果として、こうした期待は裏切られる確度が相当に高いと考えられます。

  • スピード要求に応えられな
    当たり前の話ですが、スピードを高める為には一定の頭数が必要です。ところが内製という選択をしてしまうと、自社で採用できているメンバー数がキャパシティの最大値になってしまう、オンプレミス状態が発生してしまいます。更に、社内の場合契約関係が発生しないため社内での流動性が高く、特定の忙しい部署にどんどん人が割かれてしまいます。SIerが「空いている時間でサービスを開発しよう」と思っても結局受託が忙しくて何も作れない、というのと同じ理屈です。こうした力学が、スピードを下げる方向に向かってしまいます。
  • コストは安くできない
    全てのIT企業が「人手不足」と言っている中で、「今から内製化します」というユーザー企業に優秀なエンジニアが集まるほど採用は甘くありません。現実的には人事部が多大な労力を割いて、高額な紹介料や採用媒体費用を負担して、サインアップボーナスを払い、ようやく採用できるのが現実です。配属先の部署はこうしたコストを負担しないため「やっぱり社内の方が安いじゃないか」と錯覚しがちですが、現実的には会社が採用のためのコストを負担している、つまり企業全体としてはコスト安にはならない訳です。
  • 社内だから業務に(もしくはITに)精通しているとは限らない
    間の時間は平等です。社内業務に精通している人はITに割ける時間が短く、ITに精通している人は業務に割く時間が短い。当たり前のことです。つまり、「最初から両方に精通している人をあてにする」行為自体が戦略の不完全さを現してしまっているのです。社内で業務に精通している人はそれだけITに割ける時間が少なくなります。これはIT戦略が不完全になってしまうリスクを伴っています。


実は私たち自身、過去にこうした問題を解決するためにシステムの内製化に取り組んでいたことがありました。クラウドインテグレーションという新しい事業を始めるにあたり既存のシステムでは対応できないため、新しい顧客管理システムを自作しようとしたのです。ところが、実際にシステム内製をはじめてみたところ、スピードは頭数に限定されるので開発スピードは上がらず、結局メガベンダーが開発しているクラウドサービスの方が、製品の成熟スピードも、自分たちの業務にフィットさせるためのスピードも早いということに気づいたのです(この話はSalesforce導入の話です。こちらに4年前のインタビューがありますので興味がある方はぜひご覧下さい)。

こういう話をすると、かならず「IT先進国アメリカではSIerというものが存在せずユーザー企業が自分でIT部門を抱えている」という反論がなされます。ですが、それは半分正しく、半分は間違っています。なぜなら「米国企業のIT部門が1万人のエンジニアを雇用していたとしても、その1万人の中身は10年前と今とでは全く人が違う」からです。
ですから、上の問いに対する私の答えは以下の通りです。

もしあなたの会社で、米国と同様に、いつでも契約を終了できるエンジニアを大量に集めてIT部門をつくることができるのであれば、米国と同様のインソースが可能でしょう。ですが、日本の雇用環境でそうしたことは事実上不可能です。米国企業が社員個人個人とJob Descriptionに基づき利用技術や業務内容を定めて契約行為を行うことと同じ事を、日本の企業はSIerとやっているだけです(もちろん成果物の責任をどちらが持つか、という違いはありますが)

この違いを理解せずに、米国の成功モデルを語ることは非常に危険です。
日本では一般論として雇用契約を会社都合で簡単に終了したりすることはできません。ですから、今ユーザー企業が「AWSを使うから」といってAWSのエンジニアを大量に雇用しても、5年後にAWSを使わなくなった時には全く別な技術を覚えてもらわなければいけないわけです。米国では、こういう場合にAWSエンジニアとの契約を終えて人を入れ替えるので、インソースしてもリスクが限定的なわけです。つまり、内製化がうまく行かないと考えるのは、ユーザー企業個別の事情ではなく、国内の雇用環境がそうさせてしまうことが理由だと言っているわけです。

じゃあどうするのか?

理想は 雇用の規制緩和を進める ですが、この実現には相当高いハードルが予想されるので、現実的には今のコンディションで最善を尽くすことになります。ユーザー側の選択としては以下の様になるかと思います。

  1. システムは原則として作らずに「使う」
    上記の通り、優秀なエンジニアの獲得はどこも難しい。しかもこれから少子化で労働人口も減っていくことを考えれば、アウトソースできるところは徹底的にやる、というのが基本原則です。メールやカレンダーといったコモディティーはもちろん、サーバーのお守りや物理セキュリティの確保などに貴重なエンジニアのリソースを割くべきではありません。こうした業務は社内のエンジニアにやらせるより、もっと大規模に、かつ精緻に行っているAmazonやMicrosoftに任せるべきです。
  2. 作るものを「競争力を向上させる」ものに限定する
    解が無いように言いますが、私は「システムは必要ない」といっている訳ではありません。優れたシステムは、企業の成長を支え、差別化し、競争力を獲得するために絶対に必要です。そして、システムのうち「何が自社独自の価値を生み出すもので、何はそうではないのか」を切り分けることが非常に大切になってきます。これはアイデンティティーの問題なので、社内で行われるべきです。
  3. ベンダーを戦略的に使う(アウトソースとパートナーシップの融合)
    ることになれば、徹底的に良い物を作るべきです。そして、業務への理解を少しでも深めつつ自社にフィットするシステムを作ってもらうためにも、アウトソース先に積極的に自社業務を理解してもらう必要があります。そのためにも、これまでのように都度都度コンペをするような使い方から、ベンダー側にも同じ担当者を長く担当させるモチベーションが働くような契約が求められます。例えばユーザーから発注する際に、EC2でいうRI(Reserved Instance)の様な契約体系にして、ブロックで発注する代わりに特定のSEやチームを貼り付けることで、業務理解を進め、IT専門家と中期的な関係を作りつつ、長期のリスクはオフロードするような契約体系がアイディアとして考えられます。


これに対して、ベンダー側の選択として考えられるものは大別して以下3つになろうかと思います。

  1. これまで通り)エンジニアリソースのバッファとして機能する
    繰り返しになりますが、日本の雇用環境下でユーザー企業が内製エンジニアを大量雇用するというアプローチは現実的ではありません。そのため、リソースのバッファとしてのSIerはかなり長い間ニーズがあると考えられます。
  2. クラウドサービスを提供する側に回る
    そうはいっても「作るよりは使った方が良いケースが増える」ことは間違いありません。これまでオンプレミスやパッケージ型、買い切り型で提供されていたものをクラウド化していくというのは、ユーザーの実状に即したよいアイディアだと思われます。
  3. クラウド利用の課題を解決する側に回る
    たちの様なクラウドインテグレーターはこの部類です。複数のクラウドを組み合わせるケースなど、現実世界とクラウド環境とをフィットさせるためには相応の技術とノウハウが必要とされます。実際、米国でもクラウドの複雑さにはユーザー企業が自力で対処できる範囲を超えていると認識されており、2012年のre:InventでもGartnerから「米国のクラウド利用企業が求めているサービスTop3」の1位に「インテグレーションサービス」がリストされているような状況です。この分野はクラウドの活用が進むにつれて大きな市場になると認識されています。

 

こうした現実的な選択によって、ユーザーとベンダー双方がよい関係を構築し、ユーザーはクラウド、IoTといったトレンドを取り入れビジネスのデジタル化を進め、競争優位を確立していくという流れは(内製に頼らずとも)実現できると私は確信しています。

いろいろなネットや雑誌記事などを見ていると、「問題に対する焦点の当て方が間違っている」と思われる言説が多数とびかっています。「問題はユーザーだ」「いやベンダーだ」と言い合って悪者探しをすることで、いっとき溜飲は下げられるかもしれませんが、根本的な解決には至りません。
私たちはクラウドというテクノロジーを用いて企業の課題を解決する会社です。問題に対する焦点が間違っていれば当然解決策も間違います(歴史的に見ても、ホロコーストや大躍進政策など、焦点の当て方が間違って悲惨な結果を招いた例は枚挙に暇がありません)。
私たちは常に、何が根本的な原因なのかを明らかにし、解決出来る物は解決する。独力で解決不能なものはそれを受け入れ、与えられた条件下でどうベストを尽くすのか考える。そういう集団で在り続けたいと願っています。その為にも、不毛な論争を打ち切り、前を向くための灯台となるべく筆を執った(キーを叩いた?)次第です。

震災から5年

今日で震災から丸5年が経ちました。

今でもあの揺れと、その後の痛ましい映像を忘れることはできません。
特にヘリコプターから撮影されていた名取市の津波は本当にショックで、私が学生時代に家庭教師をしていた地域が黒い渦に飲み込まれていく様は、恐怖と悲しみと無力感とでやりきれない気持ちになったことを今でもよく覚えています。
犠牲になられた全ての方のご冥福をお祈りすると共に、まだ避難生活を余儀なくされている全ての方々に、心よりお見舞いを申し上げます。

昨日、「震災の記憶を風化させないように」とのことでアマゾンさんが「会社の枠を越えたウェブサイト復旧支援 ~東日本大震災時にAWSユーザーグループのメンバーはどう行動したか~ (記憶の継承)」という無料のKindle本を出しています。
こちらの本とも内容は一部重複しますが、私たちが震災後に行った支援活動について、改めて日本赤十字社様から当時のお話を伺い、インタビュー記事に纏めております。

>>日本赤十字社様特別インタビュー「無関心を超えた先にある繋がりのある社会へ」<<

私たちは当初、日本赤十字社様に行った支援活動について公表していませんでした。ところがある日、西島部長から「この事例は公開すべきだ。公開して、利益を出して、そして税金を払うなり義援金を払うなりして欲しい。それこそが真の復興であり、真の社会貢献だ」と諭されたのです。

日本赤十字社様のキャッチに

人間を救うのは、人間だ


というものがあります。

西島部長から復興のあり方について指摘されたとき、(おこがましい物言いは承知で言うと)「人間を救うのは自分の行動なんだ」ということを改めて思い返し、それが今の私たちを突き動かす原動力となっています。

5年も経つと、本当にいろいろなものが変わります。
記憶も少しずつ、薄れていきます。
ですが、形あるものが壊れ辛い記憶が風化しても、明るい未来をつくるという気持ちだけは変わらずに、私たちの仕事が少しでも日本と世界の将来に繋がることを信じて、生かされた毎日をしっかりと歩んでいきたいと思います。

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