SRE部 佐竹です。
今日も Savings Plan のお話です。
はじめに
本ブログは、以下の Update を受け Savings Plan のどれを買うべきかということを、これまでの Savings Plan 運用知見も加味した上で再検討するブログです。「Savings Plan」の特徴については「Savings Plan と Reserved Instance の比較」をご覧ください。
EC2 Price Reduction – For EC2 Instance Saving Plans and Standard Reserved Instances
https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/ec2-price-reduction-for-ec2-instance-saving-plans-and-standard-reserved-instances/
結論
最初に結論を記載します。
Compute Savings Plan × 3年が変わらず「おすすめ」です。
今回のUpdateの内容
OSSのLinuxにおいて、スタンダード Reserved Instance と EC2 Instance Savings Plan の割引率が特定のファミリーで増加しました。割引率が増加したのは、M5, C5, R5, C5n, C5d, M5a, M5n, M5ad, M5dn, R5a, R5n, R5d, R5ad, R5dn, T3, T3a, Z1d, そして A1 となります。
コンバーチブル Reserved Instance 及び Compute Savings Plan では割引率は増加しておりません。
実際の利用料と割引率をSavings Planで確認してみる
というわけで、人気のある m5, c5, r5, t3 (割引き後) を m4, c4, r4, t2 の利用料と一覧表にして比較してみることにします。比較するための Instance Type は全て large で固定しました。「一部前払い」はあまり利用しているユーザ様をお見受けしないため、省いています。また価格は1時間あたりにかかる EC2 Instance のRunning 費用となります。
ブログでは割引率の増加について記載がありましたが、実際にいくらになったのかは記載がなかったため、その点のフォローアップになります。
割引率について
以下の通りの割引率の強弱があります。一覧表を確認するにあたって、以下の内容を先にインプットして頂くと、差がわかりやすくなります。
- 3年コミット > 1年コミット
- 全額前払い(All Upfront) > 前払いなし(No Upfront)
- EC2 Instance Savings Plan > Compute Savings Plan
1年 での比較(利用料)
「こちら」の公式ページより価格を引用しました。
Linux/Unix (Shared) Tokyo Region 1year |
Compute SP | EC2 Instance SP | |||
Type | OnDemand | AllUpfront | NoUpfront | AllUpfront | NoUpfront |
m5.large | $0.1240 | $0.0930 | $0.0990 | $0.0730 | $0.0780 |
m4.large | $0.1290 | $0.0935 | $0.1002 | $0.0814 | $0.0871 |
c5.large | $0.1070 | $0.0820 | $0.0880 | $0.0630 | $0.0670 |
c4.large | $0.1260 | $0.0970 | $0.1040 | $0.0840 | $0.0900 |
r5.large | $0.1520 | $0.1030 | $0.1100 | $0.0890 | $0.0960 |
r4.large | $0.1600 | $0.1082 | $0.1159 | $0.0941 | $0.1008 |
t3.large | $0.1088 | $0.0798 | $0.0855 | $0.0640 | $0.0685 |
t2.large | $0.1216 | $0.0881 | $0.0945 | $0.0767 | $0.0822 |
1つ前の世代のInstance Typeと比較すると、新しいInstance Typeの値引後の額のほうがより安いことがわかります。特に「EC2 Instance SP」ではその差が大きくなっています。
1年 での比較(割引率)
割引率は、上記の表から計算し、小数点以下第2位まで表示したものとなります。
Linux/Unix (Shared) Tokyo Region 1year |
Compute SP | EC2 Instance SP | ||
Type | AllUpfront | NoUpfront | AllUpfront | NoUpfront |
m5.large | 25.00% | 20.16% | 41.13% | 37.10% |
m4.large | 27.52% | 22.33% | 36.90% | 32.48% |
c5.large | 23.36% | 17.76% | 41.12% | 37.38% |
c4.large | 23.02% | 17.46% | 33.33% | 28.57% |
r5.large | 32.24% | 27.63% | 41.45% | 36.84% |
r4.large | 32.38% | 27.56% | 41.19% | 37.00% |
t3.large | 26.65% | 21.42% | 41.18% | 37.04% |
t2.large | 27.55% | 22.29% | 36.92% | 32.40% |
3年 での比較(利用料)
Linux/Unix (Shared) Tokyo Region 3years |
Compute SP | EC2 Instance SP | |||
Type | OnDemand | AllUpfront | NoUpfront | AllUpfront | NoUpfront |
m5.large | $0.1240 | $0.0650 | $0.0720 | $0.0470 | $0.0540 |
m4.large | $0.1290 | $0.0665 | $0.0733 | $0.0554 | $0.0637 |
c5.large | $0.1070 | $0.0570 | $0.0630 | $0.0400 | $0.0460 |
c4.large | $0.1260 | $0.0720 | $0.0790 | $0.0600 | $0.0690 |
r5.large | $0.1520 | $0.0720 | $0.0790 | $0.0570 | $0.0660 |
r4.large | $0.1600 | $0.0721 | $0.0795 | $0.0602 | $0.0691 |
t3.large | $0.1088 | $0.0561 | $0.0618 | $0.0409 | $0.0470 |
t2.large | $0.1216 | $0.0626 | $0.0690 | $0.0523 | $0.0601 |
3年 での比較(割引率)
Linux/Unix (Shared) Tokyo Region 3years |
Compute SP | EC2 Instance SP | ||
Type | AllUpfront | NoUpfront | AllUpfront | NoUpfront |
m5.large | 47.58% | 41.94% | 62.10% | 56.45% |
m4.large | 48.45% | 43.18% | 57.05% | 50.62% |
c5.large | 46.73% | 41.12% | 62.62% | 57.01% |
c4.large | 42.86% | 37.30% | 52.38% | 45.24% |
r5.large | 52.63% | 48.03% | 62.50% | 56.58% |
r4.large | 54.94% | 50.31% | 62.38% | 56.81% |
t3.large | 48.44% | 43.20% | 62.41% | 56.80% |
t2.large | 48.52% | 43.26% | 56.99% | 50.58% |
やはり、最大の割引率を誇る EC2 Instance Savings Plan × 3年 × 全額前払い は非常に高い割引率です。今回の割引率の増額により新しい Instance Family では、全て62%を超えています。
どのオプションが最も良いと言えるか?
結論として、どの組み合わせ・オプションが最も良いと言えるのでしょうか?弊社の運用知見からまず、おおよそ以下のワークフローで組み合わせが決定可能です。
上記フローの結果、「① / ② × A / B / C / D」 の8つのパターンに帰着します。ですが、実際過去お客様が選ばれたのは以下のパターンでした。
- ① × D = Compute Savings Plan × 3年 × 全額前払い
- ① × C = Compute Savings Plan × 3年 × 前払いなし
- ② × B = EC2 Instance Savings Plan × 1年 × 全額前払い
この3つが多い状況です。以下理由となります。
パターン1 Compute Savings Plan × 3年 × 全額前払い
これは3年後もAWSを使っていると確信があるお客様において、全リージョン全Instance Familyにおいて確実にディスカウントを最大効率で受けたい、というユーザ様が選択されます。また「コミットするだけで良い」というCompute Savings Planのその柔軟性も大きなメリットがあります。3年×全額前払いを選択されるお客様は、予算編成の点も柔軟です。来期以降のAWS利用料を先払いとなるこの3年×全額前払いは、多くのお客様でハードルが高いオプションですが、その調整を乗り越えてでもディスカウントを強く受けたいと考えられるユーザ様に本組み合わせが採用されています。
パターン2 Compute Savings Plan × 3年 × 前払いなし
3年後もAWSを使っていると確信があるお客様において、全リージョン全Instance Familyにおいて確実にディスカウントを受けたい、というユーザ様が選択されます。ただし、先に記載しました通り来期以降のAWS利用料を先払いとなるこの3年×全額前払いは、予算の都合により「支払いが難しい」というポイントがあります。よって、「前払いなし」の本組み合わせで購入されるお客様が多い実情があります。
パターン3 EC2 Instance Savings Plan × 1年 × 全額前払い
EC2 Instance Savings Plan は柔軟性が低いものの、利用するRegionとFamilyがコントロールできる場合はCompute Savings Planよりも割引率が高いというオプションです。EC2は新しいInstanceほどスペックもよく安くなってきているのが実情ですが、Instance Typeの変更メリットよりも「既存のInstance Typeのままで安定性を優先したい」というエンドユーザ様もいらっしゃいます。その場合は「間違いなく今のInstance Familyで1年間は行く」となりますため、そのようなユーザ様に採用されています。ただし、「3年後もサービスを提供し続けているのか」はやはり判断がつかないことも多く、そのために期間は1年とされることが多い状況です。また弊社からも「現在の技術革新のスピードを考えると、3年間同じFamilyで固定するのは推奨が難しい」ともお伝えすることがあります。また、割引率は今もなおパターン1,2より劣ります。
なお、この組み合わせを選択されるお客様はこれ単体を運用されるのではなく、パターン1 or 2と掛け合わせて利用されているケースが多いと思われます(その背景まで記載すると、長くなりますので割愛いたします)。
一覧表の比較から判明したこと
上記のパターンを踏まえて、今回最も注目する点は、【パターン2 Compute Savings Plan × 3年 × 前払いなし】 と【 パターン3 EC2 Instance Savings Plan × 1年 × 全額前払い】の割引率の比較です。以下、切り出して並べてみました。
Linux/Unix (Shared) | Compute SP Tokyo Region 3years | EC2 Instance SP Tokyo Region 1year | |
Type | AllUpfront パターン1 |
NoUpfront パターン2 |
AllUpfront パターン3 |
m5.large | 47.58% | 41.94% | 41.13% |
m4.large | 48.45% | 43.18% | 36.90% |
c5.large | 46.73% | 41.12% | 41.12% |
c4.large | 42.86% | 37.30% | 33.33% |
r5.large | 52.63% | 48.03% | 41.45% |
r4.large | 54.94% | 50.31% | 41.19% |
t3.large | 48.44% | 43.20% | 41.18% |
t2.large | 48.52% | 43.26% | 36.92% |
※元々 r5/r4 Familyの割引率は非常に高く設定されていました。パターン2の r5/r4 Familyの割引率が高く、パターン3との差が大きいのはそのためです
再検討結果
比較すると、パターン3とパターン2で、差が非常に小さくなっていることがわかりました。特に c5.large では割引率が同等です。これにより「パターン3もより捨てがたい選択肢」になってきたと感じます。ですが、最初に「結論」に記載しました通り、Compute Savings Plan のその強い柔軟性、特にFargateやLambdaにまでリーチできる機能は捨てがたく、パターン1 or パターン2を選択されるのがお客様にとって最も良いのではと考えております。
現実的に EC2 Instance Savings Plan を採用されたい場合のシナリオとしましては、全体最適として Compute Savings Plan を3年でコミットしつつ、部分最適として 【パターン4 EC2 Instance Savings Plan × 3年 × 全額前払い】 の組み合わせを、例えば「基幹業務システム」などで運用されるのが良いでしょう。このシナリオは複数のSavings Planを運用するという手間を考えると、運用が煩雑化するため(割引率が高いとしても)メリットが大きくないと感じていましたが、今回の割引率の増加によって再度検討に値する可能性が出てきたと感じています。
まとめ
AWSのUpdateにより、スタンダード Reserved Instance と EC2 Instance Savings Plan の割引率が特定のファミリーで増加しました。
この増額の影響が現在のSavings Planの運用戦略にどのような影響を与えるか再検討しました。再検討にあたっては、弊社の運用知見を持って注目すべきポイントにフォーカスしました。
【パターン2 Compute Savings Plan × 3年 × 前払いなし】 と【 パターン3 EC2 Instance Savings Plan × 1年 × 全額前払い】の割引率の比較結果により、 パターン3がパターン2に近い割引率に迫っていることが判明しました。また全体最適として Compute Savings Plan を利用しながら 【パターン4 EC2 Instance Savings Plan × 3年 × 全額前払い】 の組み合わせを併用する可能性についても言及させて頂きました。
最後に、パターン4を入れ込んだ比較表を記載して終わりにさせて頂きます。 ※パターン4が最も割引率が高いため、割引率の順序になるよう一番左に入れています
Linux/Unix (Shared) | EC2 Instance SP Tokyo 3years | Compute SP Tokyo 3years | EC2 Instance SP Tokyo 1year | |
Type | AllUpfront パターン4 |
AllUpfront パターン1 |
NoUpfront パターン2 |
AllUpfront パターン3 |
m5.large | 62.10% | 47.58% | 41.94% | 41.13% |
m4.large | 57.05% | 48.45% | 43.18% | 36.90% |
c5.large | 62.62% | 46.73% | 41.12% | 41.12% |
c4.large | 52.38% | 42.86% | 37.30% | 33.33% |
r5.large | 62.50% | 52.63% | 48.03% | 41.45% |
r4.large | 62.38% | 54.94% | 50.31% | 41.19% |
t3.large | 62.41% | 48.44% | 43.20% | 41.18% |
t2.large | 56.99% | 48.52% | 43.26% | 36.92% |
ここまでお読みいただきありがとうございました。
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023-2024 Japan AWS Top Engineers/2020-2024 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。