みなさんこんにちは。マネージドサービス課の塩野です。
「Claude に毎回同じ背景情報を説明するのが面倒だ」と感じたことはないでしょうか。たとえば、自社のサービス仕様を何度も入力し直したり、チームの用語集をその都度貼り付けたり。そんな手間を解消してくれるのが、Claude の Projects(プロジェクト) 機能です。
Projects は、特定のテーマや業務に特化したワークスペースを Claude 上に作れる機能です。ドキュメントをアップロードしてナレッジベースを構築したり、Claude への指示をプロジェクト単位でカスタマイズしたりできます。Team や Enterprise プランであれば、プロジェクトをチームメンバーと共有することも可能で、チーム専用の AI アシスタントとして活用できます。
この記事では、Projects の基本的な概念から作成手順、チームで活用するためのベストプラクティスまでを紹介します。「Claude をもっと業務に馴染ませたい」と思っている方にとって、参考になれば嬉しいです。
Projects とは何か
基本的な概念
Projects は、チャット履歴・ナレッジベース・カスタムインストラクションをまとめた「自己完結型のワークスペース」です。通常の Claude との会話はセッションをまたいで文脈が引き継がれませんが、Projects ではアップロードしたドキュメントや設定した指示が、プロジェクト内のすべてのチャットに自動的に適用されます。
主な構成要素は3つあります。
ナレッジベースは、Claude が参照するドキュメント置き場です。仕様書・マニュアル・コードスニペットなどをアップロードしておくと、Claude がプロジェクト内のチャットでその内容を踏まえて回答してくれます。
カスタムインストラクションは、Claude への振る舞いの指示です。「回答は常に日本語で」「顧客サポート担当者として回答して」といった指示を設定しておくと、毎回プロンプトに書かなくてもその通りに振る舞ってくれます。
チャット履歴は、プロジェクト内の会話履歴です。ただし、チャット間でコンテキストは共有されません。複数の会話をまたいで情報を共有したい場合は、ナレッジベースに情報を追加する形になります。
利用可能なプラン
Projects はすべてのユーザーが利用できます(無料プランを含む)。ただし、無料プランでは作成できるプロジェクト数が最大5つに制限されています。
ナレッジベースの容量については、有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)では RAG(Retrieval Augmented Generation)が自動的に有効になり、より多くのコンテンツを格納できます。無料プランの場合はコンテキストウィンドウの範囲内でのみ利用可能です。
チームでの共有機能については、後述しますが Team・Enterprise プランのみ対応しています。
Skills 機能との違い
Projects に似た機能として、最近リリースされた Skills(スキル) があります。どちらも「Claude の振る舞いをカスタマイズする」という点は共通していますが、役割が異なります。
一言でいうと、Projects は「何を知っているか(知識)」を定義するもので、Skills は「どうやるか(手順・ワークフロー)」を定義するものです。
| Projects | Skills | |
|---|---|---|
| 主な用途 | ドキュメントやナレッジの蓄積 | 特定タスクの手順・ワークフローの定義 |
| 適用範囲 | そのプロジェクト内のチャットのみ | Claude 全体(プロジェクトの内外を問わずどこでも動作する) |
| 読み込みタイミング | チャット開始時に常に読み込まれる | 関連するタスクが発生したときに動的に読み込まれる |
| 向いているケース | 仕様書・FAQ・マニュアルの参照 | ドキュメント生成・データ分析などの定型作業 |
ナレッジベースを整備して「社内情報を Claude に覚えさせたい」なら Projects、「特定の業務フローを Claude に繰り返し実行させたい」なら Skills、という使い分けがわかりやすいでしょう。もちろん両方を組み合わせることも可能です。
プロジェクトの作成手順
作成フロー
プロジェクトの作成はとても簡単です。画面左側のメニュー内にあるプロジェクトをクリックします。プロジェクト作成画面で「新規プロジェクト」より、プロジェクト名と説明を入力すれば作成完了です。

Team・Enterprise プランの場合は、作成時に公開範囲も設定できます。「自分だけ」「組織全体」のいずれかを選択できるので、用途に応じて使い分けるといいでしょう。

カスタムインストラクションの設定
プロジェクトを作成したら、まずカスタムインストラクションを設定してみましょう。プロジェクトのメイン画面から「手順」をクリックし、指示を入力して保存するだけです。

どんな指示が効果的かというと、たとえば次のようなものが使いやすいです。
# 役割 あなたは弊社(株式会社〇〇)のカスタマーサポート担当アシスタントです。 # 回答のルール - 回答は必ず日本語で行う - 専門用語を使う場合は、カッコ内に簡単な説明を添える - 不確かな情報については、推測である旨を明示する - 回答は300字以内を目安に簡潔にまとめる
このように、役割・回答ルール・トーンをセットで定義しておくと、毎回プロンプトに書かなくても Claude が一貫した振る舞いをしてくれます。
ドキュメントのアップロードと活用
対応ファイル形式とアップロード方法
プロジェクトのメイン画面右側にナレッジベースのエリアがあり、「+」ボタンをクリックしてドキュメントを追加できます。アップロードしたコンテンツは、プロジェクト内のすべてのチャットで使われます。
テキストファイル・PDF・コードスニペットなどを登録できます。社内のマニュアル、FAQ 集、製品仕様書、コードのドキュメントなど、Claude に参照させたい情報は積極的にアップロードしておくと便利です。
テキスト情報については、ファイルとしてアップロードする方法と、テキストを直接貼り付ける方法があります。短いテキストやすぐに更新する可能性があるものは直接貼り付けが楽で、複数ページにわたる仕様書などはファイルアップロードが向いています。
RAG(検索拡張生成)の仕組み
少し技術的な話になりますが、Projects のナレッジベースは一定量を超えると RAG モードが自動的に有効になります。
RAG が有効になると、Claude はプロジェクト内のすべてのコンテンツを一度に読み込む代わりに、質問に対して最も関連性の高い情報だけを検索・取得して回答します。これにより、コンテキストウィンドウの上限に縛られることなく、より多くのドキュメントを格納できるようになります。公式情報によれば、通常の約10倍のコンテンツを保存できるとされています。
体感としては、RAG が有効になっていても通常の利用との差はほとんど感じません。Claude が「プロジェクトナレッジを検索中」という動作をすることがある程度で、回答の精度は維持されます。
アップロード時のコツ
ファイル名は Claude が内容を正しく理解・検索できるよう、わかりやすい名前をつけるといいでしょう。また、関連するドキュメントは同じプロジェクトにまとめることで、Claude が複数のソースをまたいで情報をつなぎ合わせやすくなります。
チーム利用時のベストプラクティス
プロジェクトのシェア設定
Team・Enterprise プランでは、プロジェクトをメンバーに共有できます。権限は「Can use(閲覧・チャットのみ)」と「Can edit(インストラクションやナレッジの編集も可能)」の2段階に分かれています。
たとえば、プロジェクトの運用担当者だけ「Can edit」にして、一般メンバーは「Can use」にしておくと、誰かが誤ってインストラクションを変更してしまうリスクを減らせます。
プロジェクトの設計パターン
実務での活用を考えると、プロジェクトは用途ごとに分けるのが効果的です。ひとつのプロジェクトに何でも詰め込むよりも、目的を絞って設計したほうが Claude の回答精度が上がります。たとえば次のような分け方が考えられます。
| プロジェクト名 | ナレッジベースの内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
| カスタマーサポート | FAQ、製品仕様、対応ガイドライン | 問い合わせ対応の補助 |
| 技術ドキュメント | API 仕様、設計書、コード規約 | 開発チームの調査・実装支援 |
| 採用・オンボーディング | 会社概要、評価基準、業務マニュアル | 新メンバーの質問対応 |
チームで Projects を導入する際は、まず1つの用途に絞ってパイロット運用し、効果を確認してから広げていくのが無難です。
注意点
いくつか気をつけておきたい点があります。
まずコンテキスト消費量について。RAG が有効でない状態では、ナレッジベースの内容はチャットのたびにコンテキストウィンドウを消費します。ドキュメントが多いほど1回の会話で使えるトークン数が減るので、定期的に不要なドキュメントを整理するといいでしょう。
次にチャット間のコンテキスト非共有について。プロジェクト内のチャット間でコンテキストは共有されません。あるチャットでの会話内容を別のチャットでも参照させたい場合は、その情報をナレッジベースに追加する必要があります。
まとめ
Claude の Projects 機能は、「毎回 Claude に同じ説明をしなければならない」という地味に面倒な問題を解消してくれます。ナレッジベースにドキュメントを蓄積し、カスタムインストラクションで振る舞いを定義しておくことで、Claude がチームの業務文脈をしっかり理解したアシスタントとして機能してくれます。
最初の設定に少し手間はかかりますが、一度整備してしまえばチームメンバーが同じ品質で Claude を使える環境が整います。特に Team・Enterprise プランでは共有機能も使えるので、チーム全体の生産性向上につながるでしょう。
ぜひ Projects を使って、Claude をチームの頼れるナレッジベースとして育ててみてください。
この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。
参考情報源 - What are projects? | Claude Help Center - Examples of projects you can create | Claude Help Center