
こんにちは、サーバーワークスで生成AIの活用推進を担当している針生です。
サーバーワークスでは Slack・Box・GitHub・Google Calendar・Gmail・Jira・Confluence を日常的に使っています。会議の予定、チャットでのやりとり、コミット、ドキュメント編集など、業務の記録はこれらのツールに散らばっています。 「月曜日の朝、先週何を進めていたか・何が残っているか思い出せない」「あのプロジェクトの方針って、いつ何をきっかけに決まったんだっけ?」となったとき、各ツールを開いて確認するのは大変です。
この問題を、2つの仕組みを組み合わせて解決しました。
- Claude Code のデスクトップアプリで日報を毎日自動生成する
- 生成した日報を Andrej Karpathy が提案する「LLM Wiki」に自動で蓄積する
設定して運用してみたところ、業務記録の書き起こしが手間にならないだけでなく、残タスクの確認やプロジェクトページの自動成長といった、当初想定していなかった効果が見えてきました。この記事では、その仕組みと実際に役立った使い方を紹介します。
LLM Wiki とは
OpenAI の共同設立者であり「バイブコーディング」の名付け親としても知られる Andrej Karpathy が提案している、LLM が継続的にメンテナンスする Markdown ベースの知識ベースです。ベクトル DB は使わず、Markdown だけで動きます。詳細は以下の gist を参照してください。
Andrej Karpathy - LLM Wiki gist
全体の仕組み

LLM Wiki のセットアップ
まずは Wiki の入れ物となるディレクトリと、Wiki の挙動を決める CLAUDE.md を用意します。
ディレクトリ構成
mkdir -p ~/daily-wiki/sources ~/daily-wiki/wiki/pages touch ~/daily-wiki/wiki/index.md ~/daily-wiki/wiki/log.md
~/daily-wiki/
├── CLAUDE.md # Wiki メンテナーへの指示書
├── sources/ # 日報を置く場所(Routines が書き込む)
└── wiki/
├── index.md # 目次(ingest のたびに自動更新)
├── log.md # 活動ログ(追記のみ)
└── pages/ # Wiki ページ群
Wiki メンテナーの指示書 (CLAUDE.md)
CLAUDE.md は LLM Wiki 全体の振る舞いを定義するファイルです。Claude Code はこのファイルを自動で読み込み、Wiki メンテナーとして動きます。
以下の内容を ~/daily-wiki/CLAUDE.md として保存してください。
# 日報 LLM Wiki スキーマ あなたはこのリポジトリの Wiki メンテナーです。 自動生成された日報を蓄積し、業務活動と個人の成長を記録する知識ベースを育ててください。 ## ディレクトリ構造 - `sources/` — 元の日報ファイル(不変)。絶対に編集しない。 - `wiki/` — あなたが作成・更新する Markdown ファイル群。 - `wiki/index.md` — Wikiページの目次(カテゴリ別に整理) - `wiki/log.md` — 活動ログ(追記のみ) - `wiki/pages/` — 個別のエンティティ/概念ページ ## 3つの操作 ### ingest(取り込み) ユーザーが `sources/` に日報を追加し、「取り込んで」と指示したら: 1. ファイルを読み込む 2. 要点をユーザーに簡潔に報告する 3. `wiki/pages/<日付>.md` に日報の要約ページを作成する 4. 関連する既存ページ(プロジェクト、技術、人物、課題など)を更新または新規作成する 5. `wiki/index.md` を更新する 6. `wiki/log.md` に1行追記する ### query(問い合わせ) ユーザーが質問したら: 1. `wiki/index.md` を読んで関連ページを特定する 2. 関連ページを読み込んで回答を生成する 3. 回答の出典となったページをリンクで明示する 4. ユーザーが価値を認めた分析はそのまま `wiki/pages/` 配下に新規ページとして保存する ### lint(メンテナンス) ユーザーが「lintして」と指示したら: 1. ページ間の矛盾を検出する 2. 孤立ページ(他からリンクされていないページ)を列挙する 3. 言及はされているが独立したページが無い概念を指摘する 4. 改善提案をユーザーに報告する(自動的に修正はしない) ## ページの書き方の規約 - すべて Markdown 形式 - ページ間のリンクは `[[ページ名]]` 形式を使う(Obsidian 互換) - ページ冒頭に簡潔な定義文を1〜2行書く - 引用元の日報を `## 出典` セクションで明示する - 日本語で記述する ## log.md のフォーマット ``` ## [YYYY-MM-DD] <operation> | <タイトル> - 影響ページ: [[ページ1]], [[ページ2]] - メモ: (任意の補足) ``` `operation` は `ingest` / `query` / `lint` のいずれか。 ## index.md のフォーマット ``` ## プロジェクト - [[ページ名]] — 1行の要約 ## 技術 - [[ページ名]] — 1行の要約 ## 日報 - [[ページ名]] — 1行の要約 ``` ## 原則 - `sources/` は絶対に編集しない - 更新の前に何をするかユーザーに簡潔に伝え、確認を得てから実行する - 1回の ingest で複数ページを同時に更新することを躊躇しない
Claude Code デスクトップアプリの「Routines」で全自動化する
LLM Wiki の準備ができたら、日報の生成から ingest まで自動で動かす設定をします。

Claude Code デスクトップアプリで Routines を作成し、以下のように設定します(設定画面の手順は実機で確認してください)。
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| Name | daily-wiki-report |
| Description | 日報を生成してLLM Wikiに取り込む |
| Prompt | 後述のプロンプト全文 |
| Frequency | Weekdays / 18:00 |
| Working folder | ~/daily-wiki/ |
| Permission mode | Auto |
プロンプト全文
Routines に設定するプロンプトです。日報の生成と ingest を1つにまとめています。
あなたは日報作成アシスタントです。毎日の業務活動を収集し、日報を作成してください。
作成した日報は `~/daily-wiki/sources/{今日の日付}.md`(例: `2026-04-22.md`)として保存してください。
## タイムゾーン
すべての日時は日本時間(JST / Asia/Tokyo / UTC+9)で扱ってください。「今日」「翌営業日」の判定もJST基準です。
## 収集手順
1. Slack: 今日、自分が投稿したメッセージをチャンネル別に取得してください。DMは除外してください。
2. Box: 今日、自分がアップロード・更新・共有したファイルを取得してください。
3. GitHub: 今日の自分の活動を取得してください。
- コミット: 今日プッシュしたもの(リポジトリ・ブランチ・メッセージ)
- PR: 今日作成・マージ・レビューしたもの(リポジトリ・タイトル・状態)
- Issue: 今日作成・コメントしたもの(リポジトリ・タイトル)
4. Google Calendar: 今日の予定をすべて取得してください。Google Meetのリンクが含まれる予定は会議として扱ってください。
5. Gmail: 今日、自分が送信したメールを取得してください。受信メールは対応・返信したものに限定してください。
6. Atlassian: 今日、自分の Jira・Confluence での活動を取得してください。
- Jira: 作成・更新・コメントした Issue
- Confluence: 作成・編集したページ
## 出力フォーマット
以下の形式で日報を作成してください。該当がないセクションは「なし」と記載してください。
---
# 日報 {今日の日付}({曜日})
## 会議
- HH:MM-HH:MM 会議名(参加者がわかれば記載)
## 作業内容
- 収集した全ツールの情報をもとに、何の作業をしていたかをプロジェクトやトピック別に要約してください
- 単なるメッセージの羅列ではなく、業務内容として意味のある形にまとめてください
## GitHub 活動
- コミット: リポジトリ名 - コミットメッセージ(ブランチ名)
- PR: #番号 リポジトリ名 - タイトル(作成/マージ/レビュー)
## ファイル操作
- Box: ファイル名 - 操作内容(アップロード/更新/共有)
## Atlassian 活動
- Jira: #番号 プロジェクト - Issue タイトル(作成/更新/コメント)
- Confluence: ページタイトル(作成/編集)
## コミュニケーション概要
- Slack: チャンネル名 - 主要なやりとりの要約(1-2行)
- Gmail: 件名 - 相手先・内容の要約(送信・返信したもののみ)
## 明日の予定
- Google Calendarから翌営業日の予定を取得して記載してください
---
## LLM Wiki への取り込み
日報の保存が完了したら、以下の手順で LLM Wiki に取り込んでください。
1. `~/daily-wiki/` ディレクトリの CLAUDE.md を読み込む
2. CLAUDE.md の ingest 手順に従って Wiki を更新する
コネクタの追加
Routines を保存したら、Claude Code デスクトップアプリの設定から各ツールのコネクタ(MCP サーバー)を追加しておきます。Slack・Box・GitHub・Google Calendar・Gmail・Jira・Confluence など必要なコネクタを有効にしてください。コネクタが入っていないと情報を取得できません。

初回の権限承認
保存後すぐに「今すぐ実行」で試し実行します。各コネクタに対してアクセス権限を求められるので、基本的には読み取り専用ツール(リスト・取得・検索系)のみを「常に許可」にしておきます。書き込み系(メッセージ送信・ファイルアップロード・Issue 作成など)は「承認が必要」にしておくと、想定外の操作をしてしまうのを防げます。読み取り系を一度許可すれば、以降の実行では止まらずに動きます。
これで設定は完了です。毎日18:00になると、日報の生成から Wiki の更新まで完結します。
生成される日報のサンプル
実際にタスクが動くと、以下のような構造の日報が sources/ に保存されます(具体的な内容はその日の活動次第)。
# 日報 YYYY-MM-DD(曜日) ## 会議 - HH:MM-HH:MM 会議名(参加者) ## 作業内容 ### プロジェクトX - 収集データから抽出した作業内容の要約 ## GitHub 活動 - コミット / PR / Issue ## ファイル操作 - Box ## Atlassian 活動 - Jira / Confluence ## コミュニケーション概要 - Slack チャンネル別の要約 - Gmail ## 明日の予定 - 翌営業日のカレンダー
この日報が保存されると、続けて ingest が実行されます。wiki/pages/ に日報の要約ページが作られ、言及されたプロジェクト・技術・人物のページも自動で更新されます。
運用して見えてきた使い方
運用してはじめて見えてきた、役に立つ使い方を紹介します。
1. 残タスクを確認できる
週末を挟むと、先週何を進めていたか・何が残っているかを忘れがちです。月曜日の朝に ~/daily-wiki/ を Working folder として Claude Code を開き、こう問い合わせます。
先週の進捗をまとめて、今週やるべき残タスクを整理してください。
すると Wiki が、これまでに蓄積された日報や関連ページの記録をもとに、先週の作業内容と残タスクを整理して返してくれます。Slack や Confluence を遡らなくても、月曜の朝の数分で「今週何をすべきか」が見えるので、週をスムーズに始められます。
2. プロジェクトページが日々厚みを増す
毎日 ingest を続けていると、特定のプロジェクトに関するページが自動で育っていきます。たとえば社内タスクフォースのページが、4/22→4/23→4/27 の3日分の議論経緯(方針の方向修正、決定事項、メンバー追加、次のアクション)を1ページに保持してくれます。
タスクフォース X について、これまでの議論経緯を整理してください。
と問い合わせれば、Slack のチャンネルログを遡らなくても「いつ、誰と、どういう経緯で、何が決まったか」を時系列で確認できます。これが3か月、半年と続いたときの効果は大きそうです。
3. 月次振り返り・1on1準備・スキル棚卸しにも
カレンダーと Slack の実データが元になっているため、「今月の主なプロジェクト」「会議参加実績」「自分の技術領域」のような問いにも答えられます。日報が積み上がっているので、月末の集計や1on1のたたき台作成が楽になります。
運用して気づいたこと
1. エンティティページは事前設計しなくていい
ingest 開始前は「プロジェクト」「技術」「人物」のような分類体系を自分で用意する必要があるかと身構えていましたが、不要でした。CLAUDE.md に大まかな指針さえ書いておけば、Claude が日報の中身を見て必要なページを判断して作ってくれます。
2. カレンダーに無い作業は Slack にメモを残す
カレンダーに入れていない作業は記録に残りにくくなります。集中して進めた個人タスクや突発的な調査は日報に現れないため、要点だけでも Slack(自分の times チャンネルなど)にメモを残す習慣をつけると Wiki の精度が上がります。
3. 週報は Wiki に取り込まなくていい
週報も同じ仕組みで自動生成できますが、日報を ingest していれば週の情報は Wiki にすでに入っています。週報は Slack への共有など「人間が読む成果物」として別途生成し、Wiki への ingest は日報だけにするほうがシンプルです。
4. Google Meet の録画からミーティング内容も記録される
オンラインミーティングは Google Meet を利用しています。Google カレンダーに録画データが紐づいていれば、その情報をもとにミーティングの内容も日報・Wiki に記録されます。議事録を別途とらなくても、参加した会議の論点や決定事項が後から検索できる状態になります。
Obsidian で閲覧・編集する
~/daily-wiki/wiki/ は素の Markdown ファイル群なので、そのまま Obsidian のボールトとして開けます。[[ページ名]] のリンク記法がグラフビューやバックリンクとして可視化され、エンティティページ同士のつながりを一覧できます。Karpathy の LLM Wiki を Obsidian と組み合わせて「AI セカンドブレイン」として運用する事例も2026年に入ってから多く紹介されており、Claude Code に書かせた Wiki を人間側が読み・編集する UI として Obsidian を使うのは相性のよい組み合わせです。
まとめ
日報の自動生成と LLM Wiki を組み合わせることで、業務記録が手を動かさなくても積み上がり、後から質問できる状態になりました。ぜひ皆さんも試してみてください。
針生 泰有(執筆記事の一覧)
サーバーワークスで生成AIの活用推進を担当