- はじめに
- AWS MCP サーバーの進化の流れ
- GA で追加された新機能
- 従来の Documentation MCP Server との比較
- セットアップ方法
- 実際に使ってみた
- IAM によるアクセス制御
- 料金
- まとめ
- 参考リンク
- 余談
アプリケーションサービス部の山本です。
はじめに
2026年5月6日、AWS MCP Server が一般提供開始(GA)になりました。
これまで AWS × MCP といえば、awslabs/mcp リポジトリで公開されている ローカル実行型の OSS サーバー群 を個別にインストールして使うスタイルでした。今回 GA になった AWS MCP Server は、それらを統合した AWS がホストするマネージドリモート MCP サーバー です。
本記事では以下を解説します。
- AWS の MCP サーバーがどう進化してきたか(時系列)
- GA で何が変わったのか
- 従来の OSS サーバー群と AWS MCP Server の違い
- セットアップ方法(Kiro / Claude Code 向け)
- 実際に使ってみた様子(スクリーンショット付き)
AWS MCP サーバーの進化の流れ
Phase 1: OSS ローカルサーバー群(2025年前半〜)
AWS は awslabs/mcp リポジトリで、用途別の MCP サーバーを OSS として公開してきました。
| サーバー名 | 用途 |
|---|---|
aws-documentation-mcp-server |
AWS ドキュメント検索 |
aws-serverless-mcp-server |
Lambda / API Gateway のベストプラクティス |
aws-cloud-control-api-mcp-server |
CloudFormation リソースの CRUD |
aws-cdk-mcp-server |
CDK プロジェクトの構築支援 |
aws-cost-analysis-mcp-server |
コスト分析 |
| その他多数 | EKS, ECS, DynamoDB, etc. |
これらは ローカルで uvx や npx で起動 するスタイルです。ドキュメント検索だけなら認証不要、API 操作系はローカルの AWS 認証情報を直接使います。
メリット:
- 必要なものだけ選んでインストールできる
- 認証がシンプル(ローカルの credentials をそのまま使う)
課題:
- サーバーごとにインストール・更新が必要
- ツール数が多くなるとエージェントのコンテキストを圧迫
- 監査やアクセス制御の仕組みがない
- サーバー間の連携ができない
Phase 2: AWS MCP Server プレビュー(2025年12月 re:Invent)
re:Invent 2025 で AWS MCP Server のプレビューが発表されました。
コンセプトは「1つのリモートサーバーで、ドキュメント検索も AWS API 実行もまとめて提供する」というもの。ローカルには軽量プロキシ(mcp-proxy-for-aws)だけを置き、実際の処理は AWS 側で行います。
Phase 3: GA(2026年5月)← 今ここ
プレビューから以下が追加・改善されて GA になりました。
GA で追加された新機能
① run_script ツール — 複数の処理をまとめて安全に実行
The
run_scripttool lets the agent write a short Python script that runs server-side in a sandboxed environment. The sandbox inherits your IAM permissions but has no network access — AWS News Blog
従来、エージェントが「EC2 インスタンスの一覧を取得して、タグの付いていないものだけ抽出する」といった処理をする場合、API を1つずつ呼んでは結果を確認し、また次の API を呼ぶ…という往復が必要でした。
run_script は、こうした一連の処理を AWS 側の隔離された実行環境で一括実行 できる機能です。
- ユーザーの IAM 権限の範囲内でのみ動作
- 外部ネットワークへの通信は遮断
- ローカル PC のファイルやシェルには一切アクセスしない
「必要な権限だけ持った、外部と隔離された作業スペース」で処理が完結するため、セキュリティを担保しつつ作業効率を大幅に向上できます。
② Skills — AWS サービスチーム公式のベストプラクティス
Skills provide curated guidance and best practices for the tasks where agents most commonly make mistakes. Skills are contributed and maintained by AWS service teams. — AWS News Blog
AI エージェントは汎用的な知識を持っていますが、「このサービスはこう使うのが正解」という AWS 固有のノウハウは、モデルの学習時期によっては古い場合があります。
Skills は、AWS の各サービスチームが作成・メンテナンスしている タスク別のガイダンス です。エージェントは作業の文脈に応じて必要な Skill を自動的に参照し、最新のベストプラクティスに沿った提案を行います。
提供される Skill の例:
- サービス選定ガイド(DynamoDB vs Aurora vs DSQL の判断基準)
- 構築手順(S3 Tables の作成、Glue ETL パイプラインの設計)
- トラブルシューティング(CloudFormation デプロイ失敗の診断フロー)
- SDK 利用ガイド(言語別のよくあるミスと正しいパターン)
以前は「Agent SOPs」という名称でしたが、より体系化されて Skills として再設計されました。
参考: Skills - Agent Toolkit for AWS
③ IAM コンテキストキー — 既存の権限管理の仕組みにそのまま統合
The AWS MCP Server now supports IAM context keys, so you no longer need a separate IAM permission to use the server and can express fine-grained access in a standard IAM policy. — AWS News Blog
プレビュー時は、AWS MCP Server を利用するために専用の IAM アクション(aws-mcp:InvokeMcp 等)を許可する必要がありました。
GA では、この専用権限が撤廃されました。代わりに、MCP Server 経由のリクエストには自動的にコンテキストキー(aws:ViaAWSMCPService)が付与されます。これにより、既存の IAM ポリシーに条件を追加するだけで「エージェント経由の操作は読み取りのみ許可」「特定リソースの削除は禁止」といった制御が可能です。具体的なポリシーの書き方は後述の「IAM によるアクセス制御」で紹介します。
新たな権限設計を一から行う必要がなく、既存のガバナンス体制にそのまま組み込めます。
参考: Setting up the AWS MCP Server - Step 4: Understand IAM authorization
④ ドキュメント検索の認証不要化
Documentation retrieval no longer requires authentication. — AWS News Blog
ドキュメント検索機能に限り、AWS の認証情報なしで利用できるようになりました。「まず触ってみる」段階での導入ハードルが下がり、チーム内での検証がしやすくなっています。
補足: 認証なしで使えるか試してみた
「ドキュメント検索だけなら認証不要」とのことなので、AWS_PROFILE を外して接続を試みました。
結果:
envからAWS_PROFILEを削除 → ローカルのデフォルト認証情報(~/.aws配下)が使われ、全ツールが動作してしまった- 存在しないプロファイルや空のクレデンシャルを指定 → プロキシ自体が起動しなかった
mcp-proxy-for-aws は起動時に SigV4 署名用の認証情報を解決しようとするため、有効な認証情報がないとプロキシが立ち上がりません。つまり現時点では 「ドキュメント検索だけ認証なしで使う」という構成は、プロキシ経由では実現できません。
サーバー側の仕様としては認証不要ですが、クライアント(プロキシ)側の制約で、何らかの有効な AWS 認証情報は必要です。今後プロキシ側が対応すれば変わるかもしれません。
⑤ トークン効率の改善
We have also reduced the number of tokens required per interaction, which matters for complex, multi-step workflows. — AWS News Blog
1回のやり取りで消費するトークン数(AI が処理するデータ量)が削減されました。複雑なマルチステップの作業において、処理速度の向上と AI 利用コストの削減が期待できます。
⑥ CloudWatch メトリクス / CloudTrail 対応 — 運用の可視化と監査
Amazon CloudWatch metrics published under the
AWS-MCPnamespace let you observe MCP server calls separately from direct human calls. Amazon CloudTrail captures all API calls for a complete record. — AWS News Blog
- CloudWatch メトリクス:
AWS-MCP名前空間で、エージェント経由の呼び出し回数・エラー率を監視できます。人間による直接操作とは別に集計されるため、エージェントの利用状況を定量的に把握できます。 - CloudTrail: MCP Server 経由の全 API 呼び出しが記録されます。「いつ、誰の認証情報で、どの API が呼ばれたか」を追跡でき、社内のコンプライアンス要件や監査対応に活用できます。
参考: AWS MCP Server CloudWatch metrics
従来の Documentation MCP Server との比較
私がこれまで使っていた awslabs.aws-documentation-mcp-server と、新しい AWS MCP Server を比較します。
| 観点 | aws-documentation-mcp-server(従来) | AWS MCP Server(GA) |
|---|---|---|
| 実行場所 | ローカル(uvx で起動) |
AWS ホスト(リモート) |
| ローカルに必要なもの | Python + サーバー本体 | mcp-proxy-for-aws(軽量プロキシ)のみ |
| 提供ツール | ドキュメント検索のみ(3ツール) | ドキュメント検索 + AWS API 実行 + スクリプト実行 + Skills(11ツール) |
| 認証 | 不要 | IAM 認証(SigV4)。ドキュメント検索のみなら不要だが、プロファイルは必要。 |
| AWS API 操作 | ❌ できない | ✅ 15,000+ の API を実行可能 |
| サンドボックス実行 | ❌ | ✅ run_script で Python 実行 |
| ベストプラクティス | ❌ | ✅ Skills で提供 |
| 監査 | ❌ | ✅ CloudTrail / CloudWatch |
| アクセス制御 | ❌ | ✅ IAM コンテキストキーで制御 |
| 更新 | uvx で最新版を取得 |
AWS 側で自動更新 |
| コスト | 無料 | MCP Server 自体は無料(作成したリソースのみ課金) |
提供ツール一覧
AWS MCP Server が提供するツールは以下の通りです(公式ドキュメントより)。
Knowledge Tools(ドキュメント・ナレッジ系):
| ツール名 | 説明 |
|---|---|
search_documentation |
AWS ドキュメントを検索(認証不要) |
read_documentation |
AWS ドキュメントページを取得(認証不要) |
recommend |
ドキュメントページの関連コンテンツを推薦 |
retrieve_skill |
AWS サービスチームが管理するキュレーション済みガイダンス(Skills)を取得 |
list_regions |
全 AWS リージョン一覧を取得 |
get_regional_availability |
リージョン別のサービス利用可否を確認 |
API Tools(AWS 操作系):
| ツール名 | 説明 |
|---|---|
call_aws |
AWS CLI コマンドを実行(15,000+ API 対応、新 API は数日以内にサポート) |
suggest_aws_commands |
自然言語から AWS CLI コマンドを提案 |
run_script |
サンドボックス環境で Python スクリプトをサーバーサイド実行 |
get_presigned_url |
S3 のアップロード/ダウンロード用署名付き URL を生成 |
get_tasks |
長時間実行タスクのステータスをポーリング |
従来の Documentation MCP Server が提供していた search_documentation、read_documentation、recommend は すべて AWS MCP Server に含まれています。つまり完全な上位互換です。
セットアップ方法
前提条件
uvがインストール済み(uvxコマンドが使える)- AWS 認証情報が設定済み(
aws sso loginやaws login)
Step 1: 既存の Documentation MCP Server を無効化
AWS MCP Server と併用するとツールが重複してエージェントが混乱するため、従来のサーバーを無効化します。
Step 2: MCP 設定に AWS MCP Server を追加
Kiro の場合(~/.kiro/settings/mcp.json):
{ "mcpServers": { "aws-mcp": { "command": "uvx", "args": [ "mcp-proxy-for-aws@latest", "https://aws-mcp.us-east-1.api.aws/mcp", "--metadata", "AWS_REGION=ap-northeast-1" ], "env": { "AWS_PROFILE": "your-profile-name" }, "disabled": false, "autoApprove": [] } } }
Claude Code の場合:
claude mcp add-json aws-mcp --scope user \
'{"command":"uvx","args":["mcp-proxy-for-aws@latest","https://aws-mcp.us-east-1.api.aws/mcp","--metadata","AWS_REGION=ap-northeast-1"]}'
設定のポイント
| パラメータ | 説明 |
|---|---|
mcp-proxy-for-aws@latest |
ローカルで動くプロキシ。SigV4 署名を処理して AWS MCP Server に転送する |
https://aws-mcp.us-east-1.api.aws/mcp |
AWS MCP Server のエンドポイント。us-east-1 か eu-central-1 を選択 |
--metadata AWS_REGION=ap-northeast-1 |
AWS API 操作のデフォルトリージョン。エンドポイントのリージョンとは別 |
AWS_PROFILE |
使用する AWS プロファイル |
エンドポイントのリージョン ≠ 操作対象リージョン という点に注意してください。エンドポイントは MCP サーバー自体の場所、AWS_REGION は call_aws で操作する先のリージョンです。
Step 3: 接続テスト
Kiro を再起動して、以下のように聞いてみます。
「S3 バケットの一覧を教えて」
エージェントが call_aws ツールを使って S3 の ListBuckets を呼び出せれば成功です。
実際に使ってみた
上記のセットアップを行った後、Kiro で各ツールを試してみました。
MCP Servers 一覧
設定後、Kiro の MCP Servers パネルに aws-mcp が表示されます。

call_aws ツール(要認証)
自然言語で AWS リソースの状態を確認できます。
S3 バケットの一覧を教えて

EC2 インスタンスの状態を確認して

search_documentation / read_documentation ツール(認証不要)
ドキュメント検索は認証なしでも動作します。
AWS ドキュメントから AWS MCP Server の仕様を教えて


run_script ツール(要認証)
複数の API 呼び出しを組み合わせた処理を、AWS 側のサンドボックスで一括実行します。
全リージョンの S3 バケット数を集計して

retrieve_skill
エージェントが Skill を参照して、ベストプラクティスに沿った回答を生成します。


IAM によるアクセス制御
AWS MCP Server 経由のリクエストには、以下の IAM コンテキストキーが自動付与されます。
aws:ViaAWSMCPService—true(AWS マネージド MCP サーバー経由であることを示す)aws:CalledViaAWSMCP—aws-mcp.amazonaws.com
これを使って「エージェントには読み取りだけ許可、削除は禁止」といった制御ができます。
{ "Effect": "Deny", "Action": ["s3:DeleteBucket", "s3:DeleteObject", "ec2:TerminateInstances"], "Resource": "*", "Condition": { "StringEquals": { "aws:CalledViaAWSMCP": "aws-mcp.amazonaws.com" } } }
料金
- AWS MCP Server 自体: 無料
- 課金されるのは
call_awsやrun_scriptで作成した AWS リソースとデータ転送のみ
従来の Documentation MCP Server も無料だったので、コスト面でのデメリットはありません。
まとめ
| 従来(OSS ローカル群) | AWS MCP Server(GA) | |
|---|---|---|
| 管理 | サーバーごとに個別管理 | 1つのエンドポイントに統合 |
| できること | サーバーごとに限定的 | ドキュメント + API + スクリプト + Skills |
| セキュリティ | ローカル credentials を直接使用 | IAM コンテキストキーで人間/エージェントを分離 |
| 監査 | なし | CloudTrail + CloudWatch |
| 更新 | 手動 | AWS 側で自動 |
AWS MCP Server は、これまでバラバラだった OSS サーバー群の機能を 1つのマネージドサービスに統合 し、エンタープライズ向けのガバナンス機能を追加したものです。
ドキュメント検索だけ使っていた人も、AWS API 操作やベストプラクティスの Skills が追加コストなしで使えるようになるので、乗り換えを検討する価値は十分あります。
ただし、現時点ではエンドポイントが us-east-1 と eu-central-1 のみです。東京リージョンのエンドポイントが追加されるまでは、レイテンシが気になる場面があるかもしれません(操作対象リージョンは東京を指定できるので、実用上は問題ないはずです)。
参考リンク
- AWS News Blog: The AWS MCP Server is now generally available
- AWS MCP Server ドキュメント
- セットアップガイド
- ツール一覧
- Skills について
- MCP Proxy for AWS(GitHub)
- awslabs/mcp(OSS サーバー群)
余談
富士山は桜が綺麗でした。
