
セキュリティサービス部 佐竹です。
先日、AWS と Google Cloud を閉域接続する AWS Interconnect - multicloud (Preview) が発表された件について解説しました。この発表と同時に「AWS Interconnect - last mile」 という、もう一つの Interconnect ファミリーも発表されていますので、今回はこちらについて記載します。
- Last Mile とは一体何か
- AWS Interconnect - last mile は Gated Preview で提供開始
- News 等の AWS 公式の情報源
- 最初のローンチパートナーは「Lumen」
- 技術的な特徴とメリット
- 現状のステータスと利用条件
- まとめ
Last Mile とは一体何か
「AWS Interconnect - last mile」は、その名の通り、オンプレミス(データセンターやオフィス)から AWS への物理的な接続(ラストマイル) を、AWS コンソール上の数クリックだけで完了させることを目指した新サービスです*1。
曰く「お客様がわずか数クリックで支店、データセンター、リモート拠点を AWS に接続できるようになる」フルマネージド接続サービスであると説明されています。これにより、顧客はパートナー探しの煩わしさやネットワーク設定の複雑さから解放されるとしています。
先にご紹介した AWS Interconnect - multicloud のブログでも述べましたが、専用線の敷設は苦労を伴います。AWS Direct Connect の導入プロセスを思い出してみてください。
- APN パートナー(通信事業者)を選定し、問い合わせる
- 物理的な回線の敷設工事や引き込みの調整を行う
- LOA-CFA などの書類をやり取りする
- VLAN ID の決定や BGP の設定、ASN の調整など、ネットワークエンジニアによる詳細設計と設定を行う
これには、場合によっては数週間から数ヶ月のリードタイムが必要でした。
今回の「AWS Interconnect - last mile」は、これらのプロセスを AWS 側が「フルマネージド接続サービス」として提供することで、複雑さが排除され、「プロバイダーの選定」から「ネットワーク設定」までの手間をなくすものとなります。
・・・ん?なんかどこかで聞いたような言い分ですね?
そう、これは AWS Interconnect - multicloud で述べられていたのと同じメリットなのです。「multicloud」では CSP 間の閉域回線敷設における煩雑さを回避する目的で実装され、「last mile」では物理拠点との閉域回線敷設における煩雑さを回避する目的で実装されます。「AWS Interconnect」ファミリー同士、向かっている方向性は同じということです。
AWS Interconnect - last mile は Gated Preview で提供開始
こちらは現在 Gated Preview(申請が必要なプレビュー) というステータスであり、かつ米国限定での提供開始となっています。
現時点では公開されている情報は非常に少ないのですが、AWS 公式の製品ページと What's New の情報を元に、現時点で判明している内容を速報としてまとめたいと思います。
News 等の AWS 公式の情報源
AWS announces gated preview of AWS Interconnect - last mile
AWS Interconnect – last mile (Gated Preview)
これは余談ですが、AWS User Guide の「What is AWS Interconnect?」は、何故か「AWS Interconnect - multicloud」についてのみ記載がされているように読めます。この状況から推察するに、「AWS Interconnect - multicloud」はもともと「AWS Interconnect」であり、その後から「AWS Interconnect - last mile」が付け足されたのではないかと思われる状況です。
このため「AWS Interconnect - last mile」については User Guide が12月2日の 16:00 時点で存在しないため、詳細を確認することが現状は難しい状況です。余談でした。
最初のローンチパートナーは「Lumen」

本機能の重要なポイントは、通信事業者との連携です。
今回の Gated Preview におけるローンチパートナーとして、米国の通信大手 Lumen との戦略的コラボレーションが発表されています。
以下は「AWS announces gated preview of AWS Interconnect - last mile」にある一文です。
As a milestone collaboration between AWS and Lumen, AWS Interconnect - last mile combines AWS cloud innovation with Lumen’s extensive network footprint to redefine how businesses connect to the cloud.
---日本語訳---
AWS と Lumen の画期的なコラボレーションである AWS Interconnect - last mile は、AWS クラウドのイノベーションと Lumen の広範なネットワークフットプリントを組み合わせ、企業がクラウドに接続する方法を再定義します。
AWS のクラウドイノベーションと、Lumen の広範な物理ネットワークの網羅性を組み合わせることで、クラウドジャーニーへの「ラストマイル」を実現するとのことです。
前回の記事で紹介した「multicloud」版が Google Cloud との協業であったのと同様に、この「last mile」版も通信キャリアとの深いレベルでのシステム連携が行われていると推測されます。
なお、Lumen 側に何らかの情報がないかと思い、テックブログを探しに行ったのですが「Announcing the launch of Lumen Defender℠ Managed Rules for AWS Network Firewall」しか確認できませんでした。News も同様(Lumen Extends Black Lotus Labs Threat Intelligence to AWS Network Firewall, Delivering Proactive Protection)で本機能に直接言及する記事は見当たりませんでした*2。
技術的な特徴とメリット
公開情報から読み取れる技術的なメリットは以下の通りです。
1. ネットワーク設定の自動化
AWS Interconnect のメリットといえば、先にも記載した通りフルマネージドによる手間の削減でしょう。
What's New には 「automating complex network configuration including BGP peering, VLAN configuration, and ASN assignment」 と記載があります。
つまりは、これまで手動で設計&投入していた BGP ピアリング、VLAN 設定、ASN の割り当てが自動化されます。加えて、通常であればデータセンター事業者への発注や調整が必要な「構内配線(Cross Connects)」の手配といった物理的な作業までもが抽象化され、AWS のベストプラクティスに基づいた設定が強制されるため、人的な設定ミスのリスクを大幅に低減できるとしています。
また、住所を入力することで提供可能なパートナーを自動検出する機能も備わっているようです。作業としてはコンソールで「ロケーション」「帯域」「リージョン」を選ぶだけで、裏側の設定が完了するとのことで、ネットワークに関わる部分の工数が大幅に削減されそうです。
2. 帯域幅の柔軟性とスケーリング
帯域幅は 1 Gbps から 100 Gbps まで対応しています。具体的には 1, 2, 5, 10, 25, 50, 100 Gbps という刻みで提供されます。
また、AWS コンソールを通じて帯域幅を動的にスケーリング(dynamically scale bandwidth)できるとも記載されており、ビジネスニーズに合わせて柔軟に回線速度を変更できるとのこと。帯域幅の変更においては、サポートケースを起票したり、接続を再作成したりすることなく、コンソール上から即座にスケールアップ・ダウンが可能とのことです。
3. セキュリティ(MACsec デフォルト有効)
「AWS Interconnect - multicloud」と同様に、本サービスでも MACsec 暗号化がデフォルトで有効 になります。
これにより、オンプレミスと AWS Direct Connect ロケーション間の物理層に近いレベルで通信が保護されます。金融機関や公共機関など、コンプライアンス要件が厳しい環境でも導入しやすくなるでしょう。
4. 可用性とメンテナンス
SLA(サービス品質保証)に裏打ちされた高可用性アーキテクチャが採用されています。「AWS Direct Connect の回復性に関する推奨事項」の通りであれば、「最大限の回復性」を担保するためには「4重」の専用線を用いた冗長化が推奨されるため、こちらも Quad-redundancy の構成になっているか、オプションでそれが可能となると考えられます。
また、zero down-time maintenance(ダウンタイムゼロのメンテナンス) の恩恵を受けられるとも記載があり、運用の負担軽減も期待できます。AWS Direct Connect は定期的なメンテナンスのタイミングで BGP が瞬断するなどするため、これが事実なら運用保守の観点でも嬉しいですね。
現状のステータスと利用条件
本記事執筆時点(2025年12月2日)での利用条件は以下の通りです。
- ステータス: Gated Preview(申請制プレビュー)
- 対象エリア: 米国(US)のみ
- パートナー: Lumen
- 申請方法: 専用フォームからのリクエストが必要
現時点では日本のリージョンや日本の通信キャリアについての言及はありません。しかし、今後パートナーエコシステムが拡大し、日本国内の主要キャリアがどこか1つでも対応することになれば、日本の専用線接続の常識が大きく変わる可能性があります。
まとめ

本ブログでは、「AWS Interconnect - multicloud」に続き、Gated Preview である「AWS Interconnect - last mile」についても速報としてお伝えしました。
- AWS Interconnect - multicloud: AWS と他社のクラウドサービス間の閉域接続をフルマネージド化(初回パートナーは Google Cloud)
- AWS Interconnect - last mile: AWS とオンプレミス間の閉域接続をフルマネージド化(初回パートナーは Lumen)
この2つの発表から、AWS が「ネットワーク接続の複雑さ(Do-it-yourself)」を徹底的に排除し、マネージドサービスとして提供しようとする強い意志を感じ取れます。これは古くより AWS が述べている「Undifferentiated Heavy Lifting (差別化につながらない重労働)」を AWS が肩代わりしてくれるということの一環でしょう。
「回線を引く」という少々泥臭い作業が、コンソール上の API コールだけで完結する未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません*3。
まだ Gated Preview 段階であり気が早いのは承知のうえですが、日本での提供開始や、国内キャリアとの提携発表を心待ちにしたいと思います。
では、またお会いしましょう。
*1:ラストワンマイルは通信業界や物流業界で、「業者側の最終拠点から顧客にサービスやモノが届くまでの最終区間」を指す用語となっています
*2:残念です。Google Cloud とは同時にリリースでしたが
*3:データセンターに行く楽しみがなくなりますが、仕方ないですね。入館だけ取っても、調整が手間ですし…
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
セキュリティサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを業務利用してきています。主な表彰歴 2021-2022 AWS Ambassadors/2020-2025 Japan AWS Top Engineers/2020-2025 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減やマルチアカウント管理と運用を得意としています。