こんにちは。DS4課の池上です。
昨今、Bedrockの中でも特にアップデートが多く、次世代の主力となりつつあるAmazon Bedrock Mantle(マントル)エンドポイント(以下Mantle) について、「そもそも何者なの?」という基本的な疑問にお答えする形でまとめてみました。
- Mantleの特徴
- Mantleとは何か
- 既存のOpenAI SDKコードを流用しやすい
- Mantleで使えるAPI
- 利用可能なモデル(2026年3月時点)
- 利用可能なモデル
- ZOA(Zero Operator Access)設計
- UIの違いについて
- Projects APIによる管理単位の分離
- 実際に触ってみて分かったこと
- 注意点:Mantleは“完全に同じBedrock”として扱わない方がよい
- bedrock-runtime との違いまとめ
- まとめ
- 参考リンク
Mantleの特徴
- MantleはAmazon BedrockのOpenAI/Anthropic互換API向け推論レイヤー
- 対応モデル・対応APIであれば、既存のOpenAI SDKコードを流用しやすい
- OpenAI/Anthropic互換API向けに整理された新しいUIを利用できる
- ZOA(Zero Operator Access)設計により、AWSオペレーターやモデルプロバイダーが顧客データへアクセスできない設計になっている
- 今後のBedrockアプリケーション開発において、重要な選択肢になりつつある
Mantleとは何か

Mantleは、Amazon Bedrockのバックエンドで動く分散推論エンジンです。2025年12月にResponsesAPIのサポートとともに登場し、2026年に入ってから機能拡充が続いています。
一言で表すなら「BedrockをOpenAI互換、Claude互換で使えるようにする推論レイヤー」です。
Mantleは単なるAPIラッパーではなく、AWSがBedrock向けに構築した分散推論基盤として捉えることもできます。 「モデルをどのように外部アプリケーションへ提供するか」を担う推論レイヤーとして見ると理解しやすいです。
エンドポイントは従来の bedrock-runtime.{リージョン}.amazonaws.com とは別に、bedrock-mantle.{リージョン}.api.aws という形で提供されます。
既存のOpenAI SDKコードを流用しやすい
Mantleの大きな魅力は、OpenAI SDKやOpenAI互換APIを前提にした既存コードを、Amazon Bedrockへ移行しやすい点です。
# 変更前(OpenAI) from openai import OpenAI client = OpenAI(api_key="sk-...") # 変更後(Bedrock Mantle) from openai import OpenAI client = OpenAI( base_url="https://bedrock-mantle.us-east-1.api.aws/v1", api_key="..." # Amazon Bedrock API key )
ベースURLとAPIキーを差し替えるだけで、既存のOpenAI向けコードがBedrock上で動きます。OpenAIから移行したいケースや、既存ツールをそのまま活用したいケースで効果的です。
Mantleで使えるAPI
Mantleは主に3種類のAPIを提供しています。
Chat Completions API(従来型)
OpenAIのChat Completions API互換のステートレスなAPIです。毎回 messages に会話履歴をすべて送る方式で、Mantle上の全モデルで利用可能です。
Responses API(新型・ステートフル)
サーバー側で会話状態を保持できる新しいAPIです。previous_response_id を渡すことで前回の文脈を引き継げるため、長い会話でも毎回すべての履歴を送る必要がありません。レスポンスはデフォルトで30日間保持されます(store=false で無効化も可能)。
Anthropic Messages API
Mantleでは、https://bedrock-mantle.{region}.api.aws/anthropic/v1/messages に POST することで、Anthropic Messages API形式でClaude系モデルを呼び出せます。
利用可能なモデル(2026年3月時点)
Mantle上では以下のオープンモデルが利用可能です。
| カテゴリ | モデル |
|---|---|
| DeepSeek | V3.1 / V3.2 |
| Qwen | 3(32B、235B)、Coder 480B など |
| Mistral | Large 3(675B)/ Ministral 3(3B〜14B) |
| Gemma 3(4B〜27B) | |
| その他 | NVIDIA Nemotron Nano、Kimi K2、MiniMax M2 など |
利用可能なモデル
Mantleで利用できるモデルは、リージョンや時期によって変わります。
そのため、固定の一覧を覚えるよりも、次の2段階で確認するのが安全です。
- 公式の Amazon Bedrock Endpoint availability で、利用したいモデルが
bedrock-mantleに対応しているか確認する - 実際の環境で Models API を実行し、利用可能なモデルIDを確認する
たとえば東京リージョンで確認する場合は、以下のように実行できます。
export AWS_REGION=ap-northeast-1
export BEDROCK_API_KEY="実際のBedrock API keyを入れる"
if [ -z "$BEDROCK_API_KEY" ] || [ "$BEDROCK_API_KEY" = "実際のBedrock API keyを入れる" ]; then
echo "ERROR: BEDROCK_API_KEY に実際の Bedrock API key を設定してください"
else
curl -sS "https://bedrock-mantle.${AWS_REGION}.api.aws/v1/models" \
-H "x-api-key: ${BEDROCK_API_KEY}" \
| jq -r 'if .data then .data[].id else "ERROR: " + (.error.message // .message // tostring) end'
fi
注意点:ClaudeはBedrockネイティブのRuntime経由での提供が基本で、Mantle経由では Anthropic Messages API のみ対応しています。
ZOA(Zero Operator Access)設計
Mantleの重要な特長がセキュリティ設計です。
ユーザーのプロンプト(顧客データ)は送信時点からTLSで暗号化され、Mantleサービスまで安全に届きます。そしてAWSのオペレーター・顧客・モデルプロバイダーを含め、誰もデータにアクセスする手段を持ちません。
これが意味するのは、DeepSeekやQwenのような中国製モデルも、Bedrock Mantle経由であれば情報漏洩リスクを抑えて業務利用できるということです(ただしモデル自体の出力品質・安全性はZOAのスコープ外なので、Bedrock Guardrailsの併用は別途検討が必要です)。
UIの違いについて
Bedrockのコンソール

Mantleのコンソール

Bedrock Mantleでは、OpenAI/Anthropic互換APIを前提にした新しいコンソールUIを利用できます。
従来のBedrockコンソールが「AWSサービスとしてモデルや機能を管理する画面」という印象だったのに対し、MantleのUIは「複数モデルを試す・比較する・Project単位で整理する」ことに寄せられているように感じました。
実際に触ってみると、使用しているモデルやProjectの単位が分かりやすく、モデル間の比較もしやすくなっています。APIだけでなく、コンソール体験も含めて、Mantleが新しいBedrockアプリ開発の入口として設計されていることが分かります。
Projects APIによる管理単位の分離
2026年3月に追加された Projects API により、アプリケーション・チーム・環境ごとにMantleのワークロードを分離管理できるようになりました。

- アプリケーション単位の分離とアクセスコントロール
- コスト追跡用タグ付け
- CloudWatchによるオブザーバビリティ(namespace:
AWS/BedrockMantle)
たとえば「本番環境」「開発環境」「チームAのアプリ」「チームBのアプリ」をProject単位で分けることで、コストの見える化やアクセス制御が整理しやすくなります。
実際に触ってみて分かったこと
今回、CloudShellから bedrock-runtime と bedrock-mantle の両方を実際に呼び出してみました。そこで分かったのは、MantleはOpenAI互換APIを提供しているものの、すべてのモデルがすべてのAPI形式に対応しているわけではないという点です。(どちらも東京リージョンで検証)
たとえば、まず Bedrock Runtime 側では Claude Sonnet 4.6 を試しました。単純に anthropic.claude-sonnet-4-6 を指定するとオンデマンド直指定がサポートされていないというエラーになったため、jp.anthropic.claude-sonnet-4-6 という Inference Profile ID を指定し、最終的に Converse API で呼び出すことで成功しました。
一方、Mantle 側では同じ jp.anthropic.claude-sonnet-4-6 を指定しても、Mantleのモデル一覧には存在せず利用できませんでした。そこで GET /v1/models でMantle上の利用可能モデルを確認したところ、今回の環境では anthropic.claude-haiku-4-5 が表示されました。
ただし、このモデルも /v1/chat/completions と /v1/responses では呼び出せず、最終的には /anthropic/v1/messages を使うことで成功しました。
つまり、Mantleを利用する場合は、単に「モデルがあるか」だけでなく、そのモデルがどのAPI形式に対応しているかまで確認する必要があります。
注意点:Mantleは“完全に同じBedrock”として扱わない方がよい

MantleはAmazon Bedrockの一部として提供されていますが、実運用上は bedrock-runtime とは別の推論入口として考えた方が分かりやすいです。
今回の検証では、bedrock-runtime 側では jp.anthropic.claude-sonnet-4-6 を Inference Profile ID として指定し、Converse API で Claude Sonnet 4.6 の呼び出しに成功しました。一方、Mantle 側では同じIDを指定してもモデルが存在しないというエラーになりました。
また、Mantle の GET /v1/models で表示された anthropic.claude-haiku-4-5 についても、/v1/chat/completions と /v1/responses では呼び出せず、/anthropic/v1/messages でのみ成功しました。
このことから、Mantleを使う際には次の3点を事前に確認するのが重要です。
そのモデルが Mantle endpoint で利用可能か そのモデルが Responses API / Chat Completions API / Anthropic Messages API のどれに対応しているか CloudWatchの監視先が AWS/Bedrock ではなく AWS/BedrockMantle になること
特にCloudWatchでは、bedrock-runtime 経由のメトリクスは AWS/Bedrock、Mantle経由のメトリクスは AWS/BedrockMantle に出力されます。同じBedrockという名前でも、ダッシュボードやアラームは別々に確認・設定する必要があります。
bedrock-runtime との違いまとめ
| 項目 | bedrock-runtime | bedrock-mantle |
|---|---|---|
| エンドポイント | bedrock-runtime.{region}.amazonaws.com |
bedrock-mantle.{region}.api.aws |
| 位置づけ | Bedrockネイティブの推論API | OpenAI/Anthropic互換API層 |
| 主なAPI | InvokeModel / Converse | Chat Completions / Responses / Anthropic Messages |
| ステート管理 | クライアント側で管理 | Responses APIでサーバー側保持が可能 |
| CloudWatch | AWS/Bedrock |
AWS/BedrockMantle |
| 向いている場面 | Bedrockネイティブ機能を使いたい場合 | OpenAI SDKからの移行、既存ツールの流用 |
まとめ
MantleはAWSが「モデルに中立なプラットフォーム」へと舵を切った象徴的な動きです。
OpenAI互換APIを入り口にすることで、DeepSeek・Qwen・Mistralといったオープンモデルを統一APIで扱えます。ZOA設計によるセキュリティ保証を活かしつつ、Claude(高品質)・DeepSeek(低コスト)・Qwen Coder(コーディング特化)のようなマルチモデル構成をBedrock上で一元管理する、というアプローチも現実的になってきました。
AWS公式も新規のBedrockアプリにはMantleを推奨しており、今後の新機能もMantleを中心に展開される見込みです。新しいAIアプリケーションを設計する、新規でBedrock利用する際は、まずMantleを第一候補に置いてみることをおすすめします。