
はじめに
サーバーワークスの池田です。
2026年6月9日、Anthropic が Claude Fable 5 をリリースしました。Fable 5 は、これまで一般公開されず審査済みパートナーにのみ提供されていた Mythos クラスのモデルを、一般向けに安全に利用できる形に調整したものです。
Anthropic は「これまで一般公開したいかなるモデルをも上回る性能」と述べており、SWE-bench Pro(ソフトウェアエンジニアリングのエージェント評価)で 80.3% を記録しています。Claude Code での利用も即日から可能です。
本記事では、公式発表をもとに Fable 5 が「何者か」を整理し、Opus 4.8 からどれだけ変わったのか、Claude Code での使い方と費用感はどうかを解説します。
この記事で分かること
- Claude Fable 5 が「Mythos クラスのモデルを一般向けに調整したもの」である理由と仕組み
- Opus 4.8・GPT-5.5・Gemini 3.1 Pro と比較した全15ベンチマークの数値と、星印付きスコアの読み方
- 「危険なクエリは Opus 4.8 にフォールバック」するセーフガードの詳細と発動率
- 2026年6月22日まで追加費用なしで使える条件と、6月23日以降の価格・将来の方針
- Claude Code の
/model fableで切り替える手順と、v2.1.170 以降が必要な理由
主要ポイント一覧
| 項目 | 内容 | 参照 |
|---|---|---|
| リリース日 | 2026年6月9日 | Anthropic 公式発表 |
| API モデル ID | claude-fable-5 |
Claude Fable 公式ページ |
| コーディング性能 | SWE-Bench Pro 80.3%(Opus 4.8 比 +11.1pt) | Anthropic 公式発表 |
| FrontierCode Diamond | 29.3%(Opus 4.8 比 +15.9pt、GPT-5.5 比 +23.6pt) | Anthropic 公式発表 |
| 価格(API) | 入力 $10 / 出力 $50 per Mトークン(Opus 4.8 の2倍) | Claude Fable 公式ページ |
| 6/22 まで | Pro / Max / Team / Enterprise(シート単位)は追加費用なし | Anthropic 公式発表 |
| セーフガード | サイバーセキュリティ・生物学関連は Opus 4.8 にフォールバック | Model configuration |
| Claude Code 要件 | v2.1.170 以降で /model fable 選択可能 |
Model configuration |
ベンチマークで見る Fable 5 の実力
ほぼ全ベンチマークで首位
Anthropic の公式発表では、Fable 5 / Mythos 5 を Mythos Preview・Opus 4.8・GPT-5.5・Gemini 3.1 Pro と比較したベンチマーク表が公開されています。全項目を抜き出すと以下の通りです。
| 分野 | ベンチマーク | Fable 5 / Mythos 5 | Mythos Preview | Opus 4.8 | GPT-5.5 | Gemini 3.1 Pro |
|---|---|---|---|---|---|---|
| コーディング | SWE-Bench Pro | 80.3% | 77.8% | 69.2% | 58.6% | 54.2% |
| コーディング | FrontierCode(Diamond) | 29.3% | — | 13.4% | 5.7% | — |
| ナレッジワーク | GDPval-AA | 1932 | — | 1890 | 1769 | 1314 |
| ナレッジワーク(視覚) | GDP.pdf | 29.8% | — | 22.5% | 24.9% | 16.7% |
| 空間推論 | Blueprint-Bench 2 | 38.6% | — | 14.5% | 36.2% | 26.5% |
| ツール利用 | AutomationBench | 17.4% | — | 15.5% | 12.9% | 9.6% |
| コンピュータ操作 | OSWorld-Verified | 85.0% | 85.4% | 83.4% | 78.7% | 76.2% |
| 法務 | Legal Agent Benchmark | 13.3% | — | 10.4% | 2.1% | 0.0% |
| 多分野推論 | Humanity's Last Exam(ツールなし) | 59.0% | 56.8% | 49.8% | 41.4% | 44.4% |
| 多分野推論 | Humanity's Last Exam(ツールあり)* | 64.5%* | 64.7% | 57.9% | 52.2% | 51.4% |
| 生物学 | BioMysteryBench(hard)* | 46.1%* | 29.6% | 40.0% | — | — |
| 生物学 | BioMysteryBench(human solved)* | 83.9%* | 82.6% | 80.4% | — | — |
| ターミナルコーディング | Terminal-Bench 2.1* | 88.0%* | — | 82.7% | 83.4% | 70.7% |
| サイバーセキュリティ | ExploitBench(Cap%)* | 78.0%* | 69.0% | 40.0% | 34.0% | — |
| ヘルスケア | HealthBench Professional* | 66.0%* | 64.7% | 56.9% | 51.8% | — |
出典: Claude Fable 5 and Mythos 5(Anthropic 公式発表)
コーディングの中核指標である SWE-Bench Pro では Opus 4.8(69.2%)から 11pt 超の改善があり、GPT-5.5(58.6%)には 21.7pt の差をつけています。
難易度が高いほど差が広がる
公式発表で特に強調されているのが、タスクの難易度が上がるほど他モデルとの差が拡大するという特性です。
FrontierCode Diamond という、SWE-bench より難しい評価セットでは Fable 5 が 29.3% を記録しています。Opus 4.8 の 13.4% の2倍以上で、GPT-5.5(5.7%)と比べると 5倍以上の差があります。
長く複雑なタスクを流すほど有利になる設計は、Claude Code の長時間エージェント作業と相性がよいと考えられます。
星印(*)付きベンチマークの読み方に注意
公式表には方法論の注記があります。表の数値は Fable 5 と Mythos 5 の高い方を載せており、両者の差は通常 1〜3pt 以内です。
ただし星印(*)が付いた項目は、サイバーセキュリティ・生物学に隣接する問題を含むため両者の差が大きくなっています。
Starred (*) benchmarks show a larger difference due to our blocking safeguards for cybersecurity and biology-adjacent questions. For these benchmarks, Claude Fable 5 performs closer to Claude Opus 4.8 due to fallbacks. — Claude Fable 5 and Mythos 5(Anthropic 公式発表)
つまり ExploitBench(78.0%*)や Terminal-Bench 2.1(88.0%*)などの星印付きスコアは、実際に Fable 5 を使うとセーフガードによるフォールバックが働き、Opus 4.8 に近い結果になります。星印のない SWE-Bench Pro や FrontierCode などは、Fable 5 でそのまま発揮される性能と考えられます。
「Mythos クラス」とは何か、セーフガードの仕組み
Mythos 5 との違い
Fable 5 と Mythos 5 は同じ基盤モデルから派生していますが、対象と制約が異なります。
| 項目 | Claude Fable 5 | Claude Mythos 5 |
|---|---|---|
| 対象 | 一般ユーザー・企業 | Project Glasswing 参加組織のみ |
| セーフガード | サイバーセキュリティ・生物学で有効 | サイバーセキュリティ制限を解除 |
| 提供開始 | 2026年6月9日 | 限定パートナー向けに提供中 |
| 価格 | 同一($10 / $50 per Mトークン) | 同一 |
Mythos は、これまで公開されず限定パートナー向けに提供されてきたモデルです。脆弱性発見能力が極めて高く、Firefox で 271 件の脆弱性を発見した(うち3件が公式 advisory で CVE 採番)という事例が報道されています。
その性能をそのまま一般公開するとサイバー攻撃への悪用リスクが高まるため、Fable 5 では安全対策を適用した形でリリースされています。Mythos 5 は、ローンチ時点で防御的セキュリティに取り組む審査済みパートナー組織に限定提供されています。
サイバーセキュリティと生物学でフォールバックする仕組み
Fable 5 はサイバーセキュリティと生物学に関するクエリを安全性分類器が検知すると、そのリクエストを自動で Claude Opus 4.8 で再実行します(Claude Platform on AWS では Opus 4.7)。
| 分野 | 例 |
|---|---|
| サイバーセキュリティ | エクスプロイト・マルウェア・攻撃ツールの作成 |
| 生物学・生命科学 | 実験手法・分子メカニズムに関する質問 |
フォールバックが発生すると、どのモデルが回答したかがトランスクリプトに表示されます。追加費用は発生しません。元の Fable 5 に戻すには /model fable を実行します。
フォールバック発動率は 5% 未満
セッション全体の 95% 以上でフォールバックは発生しないと Anthropic は述べています。外部の red team(バグバウンティ)での 1000時間超のテストで、汎用的なジェイルブレークは0件だったとも公表されています。
通常のコーディング・文書作成・調査作業では Fable 5 がそのまま動作するケースがほとんどです。
Claude Code での Fable 5 の使い方
v2.1.170 以降が必要
Fable 5 は Claude Code v2.1.170 以降で利用できます。それより古いバージョンでは /model の選択メニューに Fable 5 が表示されず、選択できません。
まず次のコマンドで最新版に更新します。
claude update
バージョンは claude --version で確認できます。
/model fable で切り替える
Fable 5 はデフォルトモデルではありません。利用するには /model fable を実行して明示的に選択します。引数なしの /model でピッカーを開いて選ぶこともできます。
/model fable
v2.1.170 で /model を開くと、ピッカーに「Fable 5 ✓ — Most capable for your hardest and longest-running tasks · $10/$50 per Mtok」が並びます。上部には「Fable 5 is here!」のバナーも表示されます
/model での選択はユーザー設定にデフォルトとして保存され、次回以降のセッションも Fable 5 で起動します。元に戻すときは /model opus などで切り替えます。
Fable 5 を活かすコツ
公式ドキュメントは、Fable 5 を使う際のポイントとして次を挙げています。
- 手順ではなく成果を伝える: やり方を細かく指示せず、欲しい結果を渡して計画は任せる。
- 曖昧で大きい問題を渡す: 根本原因の調査・障害デバッグ・アーキテクチャ判断など、調査と検証が効く場面に向く。
- 検証の念押しは不要: 少ない指示で自分の作業を検証するため、テストや確認のリマインドは基本的に不要。
- 大きめのタスクを任せる: 通常なら分割する作業も、長いセッションで筋を見失わずに進められる。
なお、Fable 5 は思考(extended thinking)をオフにできません。effort レベルは low 〜 max の5段階で、デフォルトは high です。
価格と移行の判断
Opus 4.8 の2倍の価格
Fable 5 の API 価格は入力 $10 / 出力 $50 per Mトークンで、Opus 4.8(入力 $5 / 出力 $25)の2倍です。プロンプトキャッシングを使うと入力トークンが最大 90% 割引になります。
| モデル | 入力(per Mトークン) | 出力(per Mトークン) |
|---|---|---|
| Claude Fable 5 | $10.00 | $50.00 |
| Claude Opus 4.8 | $5.00 | $25.00 |
| Claude Sonnet 4.6 | $3.00 | $15.00 |
出典: Claude Fable・Claude API Pricing(Anthropic 公式)
コーディングや長時間エージェント作業など、タスクの複雑さが高い用途では FrontierCode Diamond の差(Fable 5: 29.3% vs Opus 4.8: 13.4%)を考えると、コストに見合う性能向上が期待できます。一方、定型的な文書作成や軽い調査タスクには Opus 4.8 のままのほうがコスト効率がよい場面もあります。
6月22日まで追加費用なしで使える
2026年6月9日〜22日の期間は、次のプランで Fable 5 が追加費用なしで利用できます。
- Claude Pro
- Claude Max
- Claude Team
- Claude Enterprise(シート単位のプラン)
この扱いは Claude Code の /model 画面でも案内されており、「Included in your plan limits until Jun 22, then switch to usage credits to continue.(6月22日までプラン枠内に含まれ、以降は使用クレジットに切り替わる)」と表示されます。6月23日以降は使用クレジットが必要になるため、試してみるならこの期間を活用するのがよいでしょう。
将来的にはサブスク標準への復帰を目指す
クレジット制への移行は恒久的なものではない、と Anthropic は説明しています。公式発表では、6月23日以降について次のように述べられています。
After this point—when sufficient capacity allows us to do so—we aim to restore Fable 5 as a standard part of subscription plans. We intend to do this as quickly as we can. — Claude Fable 5 and Mythos 5(Anthropic 公式発表)
つまり、十分な計算リソースが確保でき次第、Fable 5 をサブスクリプションプランの標準コンテンツとして戻すことを目指す、としています。当面はクレジットが必要ですが、将来的には追加費用なしで使える形に戻る可能性があります。
まとめ
Claude Fable 5 は、Anthropic が長らく限定提供していた Mythos クラスのモデルを、一般向けに安全に利用できる形にして公開したものです。SWE-bench Pro での 80.3%(Opus 4.8 比 +11pt)という数値は、特に難易度の高いコーディングタスクで効いてきます。
セーフガードによる Opus 4.8 へのフォールバックは通常の作業ではほぼ発生しない(95% 以上はそのまま Fable 5 で動作)と Anthropic は説明しています。価格は Opus 4.8 の2倍ですが、6月22日まではサブスクリプションプランに含まれる形での提供です。
Claude Code では v2.1.170 以降で利用でき、/model fable で切り替えられます。長時間・複雑なエージェント作業への活用を検討する際の参考にしてください。