Opus 4.7 vs GPT-5.5 どこが強くてどこが弱い?ベンチマーク比較

はじめに
サーバーワークスの池田です。
2026 年 4 月 16 日にリリースされた Anthropic の Claude Opus 4.7 と、同 4 月 23 日にリリースされた OpenAI の GPT-5.5。1 週間の差で双方の主力モデルが更新されたため、どちらをどの用途で使うべきか判断に迷う場面が増えています。本記事では、両社の公式発表を一次ソースとして、直接比較可能な 10 個のベンチマークに絞って両モデルのスコアを整理し、タスク領域別の使い分けの軸を提示します。
この記事で分かること
- コーディング・エージェント・長文脈・推論・実務業務・セキュリティの各領域で、両モデルのどちらが優位なのか
- 特に差が大きいベンチマーク(長文脈処理・抽象推論・MCP 連携)と、その差が実務にどう効いてくるか
- 用途別の推奨モデル(「巨大リポジトリを読む」「MCP を活用する」「研究用途」など)
- ベンチマークだけでは見えない要素と、比較を読むときの注意点
全体スコア比較
先に結論を示します。大きな傾向として、GPT-5.5 は「広く浅く強い」、Opus 4.7 は「深い実装タスクとツール連携で強い」 という構図です。
| カテゴリ | ベンチマーク | Opus 4.7 | GPT-5.5 | 優位 |
|---|---|---|---|---|
| コーディング | SWE-Bench Pro | 64.3% | 58.6% | Opus |
| ツール連携 | MCP-Atlas | 77.3% | 75.3% | Opus |
| エージェント | BrowseComp | 79.3% | 84.4% | GPT |
| エージェント | OSWorld-Verified | 78.0% | 78.7% | 同等 |
| 長文脈 | OpenAI MRCR 512K–1M | 32.2% | 74.0% | GPT |
| 推論(学術) | GPQA Diamond | 94.2% | 93.6% | 同等 |
| 推論(学術) | HLE(ツールなし) | 46.9% | 41.4% | Opus |
| 推論(数学) | FrontierMath Tier 4 | 22.9% | 35.4% | GPT |
| 推論(抽象) | ARC-AGI-2 | 75.83% | 85.0% | GPT |
| 実務 | Finance Agent | 64.4% | 60.0% | Opus |
| セキュリティ | CyberGym | ≈74% | 81.8% | GPT |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7 各ベンチ)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5 各ベンチ)
Opus 4.7 が優位なのは SWE-Bench Pro・MCP-Atlas・HLE・Finance Agent の 4 領域、GPT-5.5 は 長文脈・数学・抽象推論・ブラウジング・セキュリティで優位です。
ベンチマーク比較の前提
本記事の数値は、Claude Opus 4.7 System Card(2026 年 4 月 16 日)と、OpenAI "Introducing GPT-5.5"(2026 年 4 月 23 日)を一次ソースとしています。Anthropic 側の System Card は GPT-5.5 リリース前の公開のため、Anthropic が直接 GPT-5.5 と比較してはいない点に注意してください。
なお、ビジョン(MMMU Pro)・ターミナル自動化(Terminal-Bench 2.0)・実務ドキュメント(GDPval/OfficeQA Pro)の 3 領域は、ハーネスや採点方式が両社で揃わず直接比較できないため、本記事からは除外しています。判断が必要な場合は自社ワークフローでの A/B 検証を推奨します。
1. コーディング能力
SWE-Bench Pro:実プロジェクトのバグ修正・機能実装
GitHub の実在 OSS リポジトリから抽出した Pull Request を再現できるかを評価するベンチマーク(Scale AI)です。SWE-Bench Verified よりも難しく、マルチファイル修正を含む複雑なタスクが中心です。
| モデル | スコア |
|---|---|
| Claude Opus 4.7 | 64.3% |
| GPT-5.5 | 58.6% |
| GPT-5.4 | 57.7% |
| Gemini 3.1 Pro | 54.2% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7/GPT-5.4/Gemini 3.1 Pro)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
Opus 4.7 が +5.7pt リード。実プロジェクトで Claude Code に PR を書かせる用途では Opus 4.7 が有力です。参考までに、よりシンプルな SWE-Bench Verified でも Opus 4.7 は 87.6% を記録しています(出典: Anthropic Opus 4.7 System Card)。
2. エージェント・ツール使用
MCP-Atlas:MCP ツール連携能力
Scale AI が運営するベンチマークで、Model Context Protocol(MCP)経由で提供されるツール群を使ってタスクを完遂する能力を評価します。
| モデル | スコア |
|---|---|
| Claude Opus 4.7 | 77.3% |
| Gemini 3.1 Pro | 73.9% |
| GPT-5.5 | 75.3% |
| GPT-5.4 | 68.1% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7/GPT-5.4/Gemini 3.1 Pro)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
Opus 4.7 がリード。MCP は Anthropic 発の仕様であるため、Claude Code + MCP サーバーの組み合わせで運用する場合は Opus 4.7 に分があります。
BrowseComp:Web ブラウジング能力
Web ページを辿って情報を収集し、質問に答える能力を評価します。
| モデル | スコア |
|---|---|
| GPT-5.5 | 84.4% |
| Claude Opus 4.7 | 79.3% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
Web リサーチ系エージェント用途では GPT-5.5 が優位です。
OSWorld-Verified:コンピュータユース
Ubuntu VM 上でマウス・キーボード操作を通じて実タスクを遂行する能力を評価します。
| モデル | スコア |
|---|---|
| GPT-5.5 | 78.7% |
| Claude Opus 4.7 | 78.0% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
わずか +0.7pt 差で事実上の引き分け。GUI 自動化用途では、どちらを選んでも大きな差は出にくいです。
3. 長文脈処理
OpenAI MRCR v2:コンテキスト長別の劣化率
長文中に埋め込まれた類似情報を特定する能力を、4K から 1M までのコンテキスト長で測定します。
| コンテキスト長 | GPT-5.5 | Claude Opus 4.7 |
|---|---|---|
| 128K–256K | 87.5% | 59.2% |
| 512K–1M | 74.0% | 32.2% |
出典: OpenAI "Introducing GPT-5.5"(Opus 4.7 スコアも OpenAI 側評価ハーネスでの値)
512K–1M 範囲で +41.8pt の大差。GPT-5.5 は 1M コンテキスト窓で実用的な性能劣化を抑え込んだのに対し、Opus 4.7 は長文脈で半減以下に落ち込みます。
巨大モノレポ全体の読み込み・長時間のチャット履歴保持・大量ドキュメントを 1 コンテキストで処理といった用途では GPT-5.5 が圧倒的に優位で、Opus 4.7 を使う場合はコンテキスト圧縮・分割戦略が必須です。
4. 推論能力
推論領域は学術知識・数学・抽象推論で勝敗が分かれます。
4-1. 学術知識:GPQA Diamond と HLE
GPQA Diamond は博士レベルの科学問題、Humanity's Last Exam(HLE) はさらに難度を上げた最難問集です。
| ベンチマーク | Opus 4.7 | GPT-5.5 |
|---|---|---|
| GPQA Diamond | 94.2% | 93.6% |
| HLE(ツールなし) | 46.9% | 41.4% |
| HLE(ツール使用) | 54.7% | 52.2% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
HLE で Opus 4.7 が +5.5pt リード(ツールなし)。研究論文の読解・科学的推論では Opus 4.7 が適しています。
4-2. 数学:FrontierMath
プロの数学研究者が設計した問題集。Tier 4 は最難関です。
| Tier | Opus 4.7 | GPT-5.5 |
|---|---|---|
| Tier 1–3 | 43.8% | 51.7% |
| Tier 4 | 22.9% | 35.4% |
出典: OpenAI "Introducing GPT-5.5"(Anthropic System Card 未収録のため、Opus 4.7 スコアも OpenAI 側評価)
GPT-5.5 は Tier 4 で +12.5pt の大差。数学的な定理証明・数値解析アルゴリズムの設計では GPT-5.5 が明確に強いです。
4-3. 抽象推論:ARC-AGI-2
入出力グリッドペアから隠れた規則を推論する、流動性知能ベンチマークです。
| モデル | ARC-AGI-2 |
|---|---|
| GPT-5.5 | 85.0% |
| Claude Opus 4.7 | 75.83% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7、Max effort)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
GPT-5.5 が +9.2pt リード。未知パターンの発見・新規アルゴリズム設計では GPT-5.5 がより適しています。
5. 実務業務
Finance Agent:金融分析
SEC filings に基づく企業財務リサーチのベンチマーク(Vals AI)です。
| モデル | スコア |
|---|---|
| Claude Opus 4.7 | 64.4% |
| GPT-5.4 Pro | 61.5% |
| GPT-5.5 | 60.0% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7/GPT-5.4 Pro)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5)
Anthropic は Opus 4.7 が「Vals AI のリーダーボードで現行モデル全中トップ」と述べています。決算分析・モデリング・金融レポート用途では Opus 4.7 を選ぶ価値があります。
6. サイバーセキュリティ
CyberGym
オープンソースプロジェクトの既知脆弱性を AI エージェントが再現できるかを測るベンチマークです。
| モデル | スコア |
|---|---|
| GPT-5.5 | 81.8% |
| GPT-5.4 | 79.0% |
| Claude Opus 4.7 | ≈74% |
出典: Anthropic Opus 4.7 System Card(Opus 4.7 は narrative で「Opus 4.6 とほぼ同等」と記載)/OpenAI "Introducing GPT-5.5"(GPT-5.5/GPT-5.4)
セキュリティ診断・脆弱性探索用途では GPT-5.5 が優位ですが、OpenAI は GPT-5.5 のサイバー能力を Preparedness Framework で「High」に分類し、防御者向けの Trusted Access for Cyber プログラム拡張もあわせて発表しています。運用時はリスク管理を前提に取り扱う必要があります。
用途別:こんな仕事ならどっち?
| 用途 | 推奨モデル | 根拠ベンチマーク |
|---|---|---|
| OSS リポジトリへの PR 作成・バグ修正 | Opus 4.7 | SWE-Bench Pro |
| Claude Code で MCP サーバー経由のツール連携 | Opus 4.7 | MCP-Atlas |
| Web リサーチエージェント | GPT-5.5 | BrowseComp |
| GUI 自動化(RPA 的用途) | どちらでも | OSWorld-Verified |
| 巨大モノレポ全体の読み込み・長時間セッション | GPT-5.5 | OpenAI MRCR |
| 研究論文の読解・科学的推論 | Opus 4.7 | HLE |
| 数学的な定理証明・数値解析 | GPT-5.5 | FrontierMath |
| 未知パターンの発見・新規アルゴリズム設計 | GPT-5.5 | ARC-AGI-2 |
| 金融分析・決算モデリング | Opus 4.7 | Finance Agent |
| セキュリティ診断・脆弱性探索 | GPT-5.5 | CyberGym |
ベンチマーク比較の限界
本記事のスコア比較には、以下の点が含まれていません。
- 日本語性能:本記事で扱ったベンチマークはほぼ英語ベースのため、日本語特化の評価は別途必要です。
- 実運用コスト・レイテンシ:トークン単価、長文脈使用時の実コスト、応答速度は含まれていません。
- ハルシネーション傾向:事実誤認率はベンチマーク上位スコアに必ずしも反映されません。
- 測定条件による揺らぎ:effort level・ツール使用・採点方式などが変わるとスコアが動きます。最終判断は自社タスクでの A/B 検証が最も確実です。
まとめ
Opus 4.7 と GPT-5.5 は、1 週間の差でリリースされた主力モデル同士ですが、強みの方向性は明確に異なります。
- Opus 4.7 は、深い実装タスク(SWE-Bench Pro)・MCP 連携・最難学術問題(HLE)・金融分析で優位
- GPT-5.5 は、長文脈処理・数学・抽象推論・Web ブラウジングで優位
特に 1M トークン規模の長文脈処理での差は圧倒的で、巨大リポジトリを読み込ませたいケースでは GPT-5.5 を検討する価値があります。一方で、Claude Code + MCP の組み合わせでプロトコル適合とコード品質を最大化したいなら、Opus 4.7 を使い続ける理由は十分にあります。
Claude Code ユーザーは /model でのモデルピン留めを活用しつつ、GPT-5.5 が光る長文脈やリサーチ用途には Codex を併用する、というハイブリッド運用が現状の実用解と言えます。