Amazon WorkSpacesに新しい「バリューバンドル」が追加されましたね。
スタンダードよりもさらに低性能低価格ですが、
それにあわせてスタンダードバンドルのスペックが底上げされました。
また、スタンダードバンドルを利用している既存のWorkSpacesは、2014年末までにすべて
1vCPUから2vCPUに、メモリが3.75GBから4GBにアップグレードされます。
さらに「Office2013」も選択可能となったのですが、
2014年11月9日現在、これらはまだ東京リージョンには姿を現していません。
- はじめに
- 月額利用料の基本
- WorkSpacesの利用初月の日割り計算とは?
- 【Case1】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成した場合
- 【Case2】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中に破棄した場合
- 【Case3】11月10日にワークスペースをパフォーマンスで1台作成し、20日にスタンダードで再作成した場合
- 【Case4】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中にスタンダードで再作成した場合
- 【Case5】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、30日に破棄。12月10日に再度スタンダードを構築した場合
- 【Case6】11月30日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中に破棄した場合
- まとめ
改めまして皆様こんにちは、がんもことプロジェクトマネージメントチーム佐竹です。
ところでこの「がんも」というあだ名にはいまだに違和感を覚えますが(;´∀`)
Amazon WorkSpacesの利用料金にも少々の違和感を覚える私です。
というのも、WorkSpacesは今までのAWSの利用料(従量課金)とは考え方が事なり、「月額課金」なのです。
今回は、この月額課金がどのように課金されるのか、ケースごとに見て行きましょう。
はじめに
本記事の中では、サービスであるAmazon WorkSpacesを「WorkSpaces」と省略して記載しています。
そして、端末(インスタンス)1台を指す「WorkSpace」を「ワークスペース」とカタカナで記載しています。
よろしくお願いします。
では、まずはWorkSpacesの公式の利用料ページのご案内です。
http://aws.amazon.com/jp/workspaces/pricing/
ここでよくある間違いとしては「アジアパシフィック(東京)」を選択しましょう、ということですね。
デフォルトだと、米国東部(バージニア北部)になっています。
本国アメリカだと日本よりも30%以上安い(つまり日本の方が高い)ため、
アメリカの利用料金で「安いかも」と思い利用し始めると危険です。
月額利用料の基本
東京リージョンの場合、以下のコストが月単位でかかります(2014年11月9日現在)。
バンドル | 月額料金 |
---|---|
スタンダード | 47 USD |
スタンダードプラス | 62 USD |
パフォーマンス | 78 USD |
パフォーマンスプラス | 93 USD |
※バリューバンドルについては現状価格が設定されていないため未記載としています
単純に月額利用料金として設定されているので、一ヵ月間利用するとこれだけかかるというものです。
※英語だと「subscription」とされているため、この利用料金は日本語で言う「予約金」にあたります
WorkSpacesのメリットは、フルマネージドというところで、コストもコミコミ価格にされ
解りやすくなっています。基本的にはこの額しかかかりません。
ですが例外もあります。
以下、もう少し細かくコストを見ていきましょう。
WorkSpacesを利用すると無料で提供されるもの
WorkSpacesの利用料金には、クライアント⇔ワークスペース間の通信料が含まれています。
そのため、基本的にクライアント⇔ワークスペース間の通信料金は考えなくても問題ありません。
また、WorkSpacesはDドライブ(作業領域)のバックアップが12時間おきに自動的に取得され
かつ問題発生時に自動的に復旧されますが、これらのバックアップも無料です。
もちろん、Dドライブ(実体はEBSボリュームでしょう)自体の利用料金も無料です。
さらに、WorkSpacesにはAWS Directory Serviceとの併用が必須となりますが、
WorkSpacesを利用するユーザーが1名でも存在する限りDirectory Serviceの利用は無料です。
参考:https://aws.amazon.com/jp/directoryservice/pricing/
Directory Serviceには自動及び任意で取得できるSnapshotの機能がありますが、
これらのSnapshotの利用料金は自動も手動取得も全て無料で提供されています。
ちなみに、WorkSpacesクライアントはS3からダウンロードするのですが、この通信料も無料です。
そして、WorkSpace Image(俗にいうゴールデンイメージ)の作成は無料であり、同様に、Bundleの作成も無料となっています(2014年11月13日追記)。
WorkSpacesを利用しても無料で提供されないもの
上に、クライアント⇔ワークスペース間の通信料が含まれていますと記載しましたが、
これ以外の通信料が発生します。
例えば、ワークスペース内からインターネットに出ると通信料が発生します。
これらの通信料は全てEC2のデータ転送料金と同額のため、以下のページを確認してください。
http://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/#データ転送
ただ全てが有料というわけではなく、VPC内かつ同Availability Zone内での通信は無料のため、
例えばワークスペースからローカルIPでVPC内の同Availability Zoneに起動されているインスタンスに
接続した場合は無料です。
また、通信料は通常の利用ではかなり安くなりますので、
特別な事情が無い限り、WorkSpaces導入時の懸念材料にならないと考えています。
WorkSpacesの利用初月の日割り計算とは?
一番ややこしいのがこの日割り計算です。ここに焦点を当てたいと思います。
計算方法については、FAQページに記載があります。
これをご確認いただいた後、以下のケースごとに利用料がどうなるのか見て行きましょう。
【Case1】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成した場合
まずは単純に、上のFAQにある計算式を当てはめて計算するケースです。
この場合の11月の利用金額を求めてみましょう。
11月は30日までなので、「30日 - 10日 = 20日」分の月額利用料が加算されます。
よって、
(30-10)/30 * 47 USD = 31.33 USD
がWorkSpacesの利用料となります。
ちなみに、この場合に11月30日に利用を終了せず、このまま12月1日になったとしましょう。
この場合の12月の利用料はいくらでしょうか?
この場合に、はじめて月額利用料がフルで請求されます。
ですので、47 USDが回答となります。
【Case2】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中に破棄した場合
試しに作成してみて、すぐに削除したケースです。
この場合でも、月末までの利用予約金として月額利用料が発生しますので、
同じく「30日 - 10日 = 20日」分の月額利用料が加算されます。
よって、
(30-10)/30 * 47 USD = 31.33 USD
がWorkSpacesの利用料となります。
【Case3】11月10日にワークスペースをパフォーマンスで1台作成し、20日にスタンダードで再作成した場合
これは「パフォーマンスで使ってみたがスペック過多だったのでスタンダードに落とした」というケースです。
もう少し詳細にケースを記載しますと、11月10日にパフォーマンスで作成後、
11月20日にパフォーマンスのワークスペースを破棄し、11月20日にスタンダードで作成し直した場合の11月の利用料です。
まずは今までと同様に、パフォーマンスを作成していますので、それが破棄されようとも
「30日 - 10日 = 20日」分の月額利用料が加算されます。
そして、スタンダードの利用料も「30日 - 20日 = 10日」分の月額利用料が加算されます。
よって、
(30-10)/30 * 78 USD + (30-20)/30 * 47 USD = 67.67 USD
がWorkSpacesの利用料となります。
実際の利用した日数は20日でも、請求される日数は30日分(パフォーマンスで20日、スタンダードで10日)になる点に注意してください。
もしバンドルを変更されたい場合は、月末に一旦破棄した後、月初に改めて作成しなおした方が良いでしょう。
【Case4】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中にスタンダードで再作成した場合
これは
「ゴールデンマスターを作ろうと構築していたが色々失敗したので最初からやり直した」
というケースです。11月の利用料金はいくらになるでしょうか?
この場合は簡単ですね、
(30-10)/30 * 47 USD *2 = 62.67 USD
と、Case1の倍額がWorkSpacesの利用料となります。
同じユーザ、同じバンドルの組み合わせであってもLaunchを2回やると、
単純に倍の料金が請求されますので、ゴールデンマスター構築時は気を付けてください。
後述しますが、ゴールデンマスター構築は月末付近がおすすめです。
【Case5】11月10日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、30日に破棄。12月10日に再度スタンダードを構築した場合
月をイレギュラーに跨いでみました。
11月と12月の利用料はそれぞれどうなるでしょうか?
11月分は、Case1と同じなので、
(30-10)/30 * 47 USD = 31.33 USD
になります。では12月分は?
この場合、12月分も残り日数で計算されますので、
(31-10)/30 * 47 USD = 32.9 USD
になります。12月は31日まであるので、日数が31になる点にご注意ください。
よって、
31.33 USD + 32.9 USD = 64.23 USD
がWorkSpacesの利用料となります。
【Case6】11月30日にワークスペースをスタンダードで1台作成し、その日中に破棄した場合
この場合を、Case1の式をそのまま流用して考えてみましょう。
30日の日数がある11月の30日に構築する、つまり
(30-30)/30 * 47 USD = 0 USD
・・・0 USD !?
そう、無料なのです。
月末最終日にワークスペースを作成するとその月の月額は無料になるため、即日破棄すれば翌月の利用料もかからずWorkSpacesを無料で体験して頂けます。
⇒現在この設定は「月の残り時間で完全に日割りされる」仕様になっています。よって、月の最終日に構築した場合は、月末までその残り時間分は請求対象になる点、訂正させて頂きます。
具体的には、月末19:00(JST)に WorkSpaces の構築が完了したとすると、これをUTCになおすと10:00 UTCです。つまり月末まで残り14時間ということになります。その月が30日の場合 「14/720=0.0194(1.94%)」だけ利用されたという日割り(残時間割)になります。
また、最終日でなくとも、月末に近づくほど利用料は安くなります。
※ただしアクティブなユーザが0になるとDirectory Serviceの利用料金がかかる点には注意してください
そのため、ゴールデンマスターのメンテナンスなどは、月末付近に実施されることを推奨します。
関連してですが、ゴールデンマスターのデプロイ(展開)についてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
今回の記事をまとめると以下の通りになります。
- WorkSpacesでは基本的に、ほぼ全ての利用料金が月額料金に含まれているためややこしい計算が不要
- 従量課金ではない分一度にまとまったコストが発生するが、構築時に月末を狙うことでコスト削減が可能
近日、バリューバンドルやMS Office 2013のバンドルが東京リージョンに来る予定ですが、
そうなると益々WorkSpacesの利用が進むのではないでしょうか?
検証期間を設ける際に不要なコストがかかるのを防ぐため、記載致しました点には十分にご注意ください。
今回は文字ばかりになりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
佐竹 陽一 (Yoichi Satake) エンジニアブログの記事一覧はコチラ
マネージドサービス部所属。AWS資格全冠。2010年1月からAWSを利用してきています。2021-2022 AWS Ambassadors/2023 Japan AWS Top Engineers/2020-2023 All Certifications Engineers。AWSのコスト削減、最適化を得意としています。